「金融商品の9割は自分の家族に勧められない」

著者の高橋 忠寛さんは銀行マンから転身したファイナンシャルプランナー。銀行と個人の情報格差はとても多く、無知に付け込んで商売をしていえるとしか思えないような商品や販売手法をたくさん見てきたと言います。

本書「銀行員が家族に勧める資産運用術」は、銀行マン時代の経験をふまえて、

❶銀行側の客の扱い方(思惑)
❷❶をふまえた上での銀行との付き合い方
❸本当に利用すべき投資用金融商品

などを非常にわかりやすくまとめた良書。

なぜ、金融マンに言われるままに商品を購入してはいけないのか、そして、当の本人らが実際に利用している金融商品はどのようなものなのかが、非常にわかりやすくまとめられています。

最近は利便性の高いネット銀行も多く、通常使いなら銀行マンと付き合う必要もなくなりましたが、マイホームを買いたい、個人事業でビジネスをしたいなど、大きなお金が必要となる場合、銀行との付き合いは欠かせません。

今回は本書から、銀行・銀行マンとの付き合い方・利用の仕方の要点・ポイントをまとめます。

金融リテラシー、3つのステージ

金融リテラシー、3つのステージ

銀行マンとして、たくさんのお客とお金について話た経験を持つ高橋さん。彼はその経験から、金融リテラシーの程度には3つのステージがあるといいます。

あなたのステージはどこか?

金融リテラシー、3つのステージ

  1. 食わず嫌いの段階
    何もわからない。よくわからないし、何もしない。怖い。
  2. 興味関心が高まる段階
    勉強すれば勝てるかもしれないと考える。手数料や効率性は気にしない。
    個別株投資やFX、アクティブファンドを活用。保険商品を使っての資産運用もあり。
  3. 達観した段階
    時間と労力をかけて勉強し、情報収集して資産運用に取り組んでも報われるとは限らないと悟る。
    結局は相場全体の動き次第。資産運用自体は人生を楽しむための手段であって、それが目的ではない。趣味として投資を楽しむことができれば、インデックスファンドなどを利用した省エネでローコストの資産運用で十分だと思う。

日本人の多くの方は1。投資をしていても多くは2のステージにいるといいます。

一方、高橋さんは、著者も数年かけてこのステージに上がってきたと語ります。金融商品に関する様々な知識を身につけ、金融資産のカラクリを知るに従って、変化していったと述べています。

私の場合

私も著者と同様の「道」を得て、現在に至ります。
2の段階では、短期売買が主流。しかも、逆張りがメイン

何時間もチャートとにらめっこしてみたり、
勝つための聖杯探しをしてみたり、
様々なインジケーターを探してみたり、
一切損切りをしなかったり…など、失敗はキリがありません。相当に損をしました。
 
今も、3の達観レベルにしっかり到達したとは言えず、投資でいろんな失敗をしていますが、「トレンドフォロー&長期投資(レバレッジをかけた取引はスイングトレード)」となり、時間を当時てチャートを見続けることはなくなりました。

銀行員の勧めで投信を2年ごとに乗り換えるとコストはいくらかかる?

金融商品のコスト

私たちは、日常生活ではより安いものを探して買うのに、金融商品についてはどのぐらいコストがかかっているかに、金融商品に関しては無関心であるケースが非常に多いのが現実です。

10年間で5回、アクティブ投信を乗り換えた場合の買付費用

統計データを見ると、日本の投資信託の平均保有年数は2年程度!

すべてが、銀行員のアドバイスで乗り換えたものとは限りませんが、この中の一部は、銀行員のアドバイスによる「投資信託の入れ替え」です。

仮に、運用期間10年の間に、購入手数料が2%かかる投資信託を2年ごとに解約して、新しい投資信託に乗り換えた場合、購入手数料の合計は5回分で約10%。運用資産が300万円なら、購入手数料だけで30万円😳になってしまうのです。

投資家の費用は銀行の儲け:利益は相反する

投資家の費用(コスト)は、銀行の儲けです。

これが、金融機関が、次々に新しい金融商品への乗り換えを薦める理由です。コストの安いネット証券を利用せず、銀行員や証券マンにアドバイスを求めてくるような人は、彼らにとってはまさにカモ🦆なのです。

銀行の利益と、顧客の利益が完全に相反しているのです。故、金融マンがいうことを信じて、金融商品を購入してはいけないのです。

銀行員が舌を巻くほど資産形成に成功している人の習慣

さて、銀行にはいろんなお客さんがいますが、いつもは金融商品をご紹介しても無反応、しかし、リーマンショックのような大暴落が起きた際など、時間分散をしながら大胆に商品を購入する人たちがいます。

彼らは、ここぞとというときしか動かない人たち。
彼らのような人は、「大底」と「天井」で、普通の人とは違う動き(売買)ができるので、本当にお金持ちになれるのです。

彼らは、いつも「冷静で平常心」
相場の動きに一喜一憂することはなく、きちんとした分散の組み合わせ(ポートフォリオ)を組み、定期的なリバランスを行っています。

銀行員が顧客には薦めないけど家族に勧める資産運用術

では、銀行マンはどのようにして資産形成を実現させているのか?

キーワードは「長期」「資産分散」「時間分散」「低コスト」シンプルでコストの安い商品です。

長期・資産分散・時間分散・低コストな、シンプルでコストの安い商品とは

長期・資産分散・時間分散・低コストを実現する「シンプルでコストの安い商品」とは次のような商品です。

シンプルでコストの安い商品

  • 投資信託なら、インデックス運用を中心にしてポートフォリオを構築
  • 組み入れる資産クラスは、単純に国内株式、海外株式、国内債券、外国債券の伝統的4資産でも構わない。興味があるのであれば、これにREITやコモディティを組み合わせる。
    ・国内債券は投資信託でなく、個人向け国債でもOK
  • 保険商品は資産形成に使わない。保障と運用は分けて考える。
  • 毎月分配型など、分配型投資信託は利用しない
  • 頻繁な売買はせず、長期に徹する
  • ポートフォリオは、年1回程度のリバランスを行う
  • タイミングを計るのは難しいので、毎月積立投資する
  • ライフプランを考えて出口戦略も用意しておく

どんなに手間をかけても、その分、確実にお金を殖やせるわけではありません。
騙されたり、おかしな商品をつかまされたりしないように、最低限のリテラシーだけ身につけていれば、資産運用はできると著者は本書をまとめています。

まず始めるなら、税制優遇のある積立投資

まず、上記のような長期・資産分散・時間分散・低コストな、シンプルでコストの安い商品で投資を始めるなら、税制優遇のある「iDeCo」「つみたてNISA」を利用した積立投資です。
どちらの方が節税効果が高いかをはじめ、これら投資の始め方については、以下にてまとめているので、是非、ご確認ください。

最後に

今回は、高橋忠寛さんの「銀行員が家族に勧める資産運用術」を紹介しました。

本書は投資初心者はもちろん、とにかくどうやったら勝てるか聖杯探しをしている人に、是非とも手にとり読んでほしい良書です。

もと金融マンの経験をもとに書かれているので、非常に説得力があり、自分がどのように資産形成すべきなのかがわかります。正直、「どんなに手間をかけても、その分、確実にお金を殖やせるわけではありません。」という言葉は、私にはきつい一言。しかし、その言葉の意味も非常によくわかります。多くの人に読んでいただきたいです。