【書評】すいません、ほぼ日の経営。(川島蓉子、糸井重里 著)(★5)
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「ほぼ日」という上場会社をご存知でしょうか?

ほぼ日は、コピーライターとして知られる糸井重里さんが社長を務める会社。

コピーライターという仕事は、自由に束縛されることなくクリエイティビティを追求することが求められる仕事。糸井さん自身、もともとフリーのコピーライターであり、組織に身を置いたことはほとんどありません。それなのに活動の枠を広げる過程で事務所を立ち上げ、100人以上が勤める企業を作り上げました。

なぜ、市場の原理に組み込まれるような株式上場を果たしたのか?

この疑問を明らかするのが本書すみません。「ほぼ日」の経営

本書を読むと、糸井さんが、まっとうに経営者としての道を探り、歩みを進めようとしていた。急ぎすぎず、のんびりしすぎず、会社と社員が成長することを考えていることが強く伝わってきます。

事業、人、組織、上場、社長 ——。
企業の根幹を支える部分について、何を考えどのように考え、向き合っているのかを知ると、事業拡大・効率化ばかりを目指す現在の資本主義至上主義の経営者ではない、まっとうだけれど新しい経営者の姿が見えてきます。

おすすめの良書です。

社会的インパクト投資【ネクストシフトファンド】

株主利益優先・成長戦略を追求する資本主義に対する挑戦

上場すると、どうしても、企業が株主から利益の拡大を先頭とした成長戦略を求められ、経営者は、短期的な利益の確保を優先しがちになります。しかし、糸井さんは上場を選びながらも、クリエイティブを大事にし、おもしろいことを大事にする。

生き生き働くとか、楽しそうに仕事をしているとか、そういうところで勝負する会社にして、幸福を基準とした資本主義のようなことができないか?
「働くとは」「会社とは」、ひいては「生きるとは」と言う問いに対する本質的な答えを模索しながら、糸井さんは事業運営を行っているのです。

「ほぼ日」の大事にする働き方

「社畜」「働き方改革」という言葉をよく耳にしますが、会社に身を売ってその代わりの対価として給料があると考えている人は多い。

しかし、稼ぎの源泉は、「面白くて、考えれば考えるほど面白くなって、みんなの喜ぶものになっていくことで生み出されたもの」。それが価値を生むと糸井さんは考えます。

ものすごく稼いでいる人が働かなくても生きてけるのに何のために稼ぐのかを考えてみれば、それは一種のゲームのようにビジネスが楽しいから。眉間にしわを寄せて働くより、イキイキと働いていたら業績が上がって、自分の安心や安定が生まれて、そのことを考えれる余裕ができるというのがよいのです。

「ほぼ日」と人

「あいつも呼ぼう」の「あいつ」がほぼ日が欲しい人。

誠実がひとりひとりの社員の中にあれば会社は本来うまくいくはずで、誠実であればおのずと信頼が生まれます。

何かの仕事を頼んで一緒に手をつないでいるときにその人が手を離さないこと。逃げないと思える人と仕事ができると思うんです。つまり誠実と信頼がセットになっていると糸井さんは考えます。

事業に必要なお金も、信頼があるから貸してもらえるのです。

大事!
長期的に見ればテクニックで信頼は得られないし、得られたとしてもそういう信頼があてにならない。信頼を得るには農業のような地道な努力が必要です。頭を使うだけではダメで、汗水たらして地道な努力を何年も繰り返して初めて信頼が手に入るものなんです。

だから、当たり前のことを日々続けていくことが大事。最近は田畑を耕すようなことを皆が評価しなさすぎる。手入れの行き届いた田んぼは何を植えてもきちんと育ちます。そして手をかけて田んぼを耕して続けると、最後に人がとって育つのです。

効率化至上主義って?

多くの企業は、仕事を合理化したり効率化したりして生産性を上げる施策に余念がありません。

しかし、ほほ日の考え方は違います。質の良いアイデアを生み出すにはもっとアイデアがあるのではないかと問い続けることが大事。この地道な努力を消して集中力だけが生み出すものでは無いと考えるのです。

「ほほ日」と組織

多くの企業には、理念やビジョン、行動写真といったものがあります。しかし、身に染み込み、日々の仕事に行かされてるかというとそうでもない。

糸井さんはそんな危険を理解した上で、「やさしく、つよく、おもしろく」という行動指針を開け、同期、実行、集合と言うクリエイティブの3つの話を頭に置いて仕事をすることを実践しています。

あくまでも「優しく」が先で、「優しく」を実現するには「強く」なければいけない。そして「飯の種になるのは「面白く」なんです。人が集まってくれる理由も面白いからなのです。

「ほほ日」と上場

資本主義社会では、とかく競争を強いられます。一方で、糸井さんは単にスペックを争ったり、社員に無理なノルマを課して会社を大きくするような経営は望んでいません。

ではなぜ、上場に踏み切ったのか?

理由は、生き生き働くとか、楽しそうに仕事をしているとか、そういうところで勝負する会社にして「幸福」を基準とした資本主義のようなことができないかと考えたから。

上場すると、自分たちの仕事が本当に社会に受け入れられているかどうか、いつも試される場に置かれていると言うことです。これも上場した目的の一つです。

まとめ

いかがでしょうか?
糸井さんが考える理想の会社像というものが理解できたでしょうか?

「すみません。ほぼ日の経営。」を読み終えて、こんな会社なら応援したい。そして、これまでの競争市場主義の資本主義のひずみが至る所にある現代の資本主義が軌道を修正し、糸井さんが考える(時間はかかるが)「信頼関係をベースとした、社会を面白くする資本主義」が、もっと評価されてほしいと思わずにはいられませんでした。

是非、本書を多くの人が手に取り、読んでくれると嬉しいです。