【書評/感想】二十四の瞳(壺井栄 著)(★4) 戦争の不幸と悲劇を淡々と描く 戦争文学

8月15日は「終戦の日」
先の大戦において亡くなられた戦没者を追悼し平和を祈念する日です。

1941年、日本軍がハワイ真珠湾の米軍の施設を襲撃。その後、戦局は悪化し、日本本土も戦場に。1945年8月6日、8月9日には広島・長崎に原爆投下。8月10日 日本は米英中3国によるポツダム宣言受諾を申し入れ、8月15日には無条件降伏し、第二次世界大戦が終結しています。

2023年の今年は戦後78年目。リアルで対戦を知る方の高齢化も進み、戦争が縁遠くなったように感じられるも、世界を見渡せば、世界では今現在も戦争により多くの方が命を落としています。唯一の被爆国として、戦争を遠い存在にはしてはいけません。

そう思って、今回詠んだのが、壺井栄の「二十四の瞳」です。テレビ・映画化なども多い作品ですが、私は、これまで一度も触れたことがありませんでした。

今回は、壺井栄の小説「二十四の瞳」の読書感想です。

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二十四の瞳:あらすじ

昭和のはじめ、瀬戸内海べりの一寒村の小学校に赴任したばかりの大石先生と、個性豊かな12人の教え子たちによる、人情味あふれる物語。文教場でのふれあいを通じて絆を深めていった新米教師と子どもたちだったが、戦争の渦に巻き込まれながら、彼らの運命は大きく変えられてしまう……。
戦争がもたらす不幸と悲劇、そして貧しい者がいつも虐げられることに対する厳しい怒りを訴えた不朽の名作。
―Amazon解説

二十四の瞳のあらすじは、ネット検索すれば、たくさん見つかります。

映画化・テレビ化も多数。上記Youtubeの映画は、監督木下惠介、主演 高峰秀子で1954年に公開された映画で、日本中が涙した、時代を超越する永遠の名作として、知られています。ラストシーン、少女が歌う歌を聞いているだけで、なんだか、ほろりと涙がでてきます。😭

二十四の瞳:感想

戦争で変わりゆく暮らしを淡々と描く

新米のい女の先生「大石先生」が、小学校(分教場)に赴任したのは、昭和3年4月。昭和3年と言えば、1928年。終戦が1945年ですから、17年も前のことです。

赴任初日、月賦で買った自転車に乗って、洋服姿で片道8キロの分校に通う大石先生は、島の生徒・親から見るとモダンガール。「おなごのくせに、自転車に乗ったりして…」と、大騒ぎです。

当時の女性としては快活に映る先生。新しいものを遠ざけようとする、古い生活習慣・価値観を持つ大人とは異なり、子どもたちは比較的すんなりと先生を受け入れ、なじんでいきます。物語の最初は、貧しいながらも子供たちとの伸びやかな学校生活がつづられますが、子どもたちが大きくなるにつれ、満州事変、上海事変が勃発。子どもたちが6年生になるころには、学校にも「赤狩り」の手が及ぶようになります。そして、戦争が、貧しき者たちを真っ先に虐げていく様子が描かれていきます。

そして、さらに成長した彼らは、男性は兵士として戦場に駆り出され、女性も、貧しさから借金で芸者になったり、病気になってしまったりと、生活が激変していきます。

小説では、このような戦争が変えていく日常が、ひたすら淡々と描かれます。

ラストシーンは、戦後

小説のラストシーンは、戦後。戦争を生き延びた生徒たちが開いた大石先生の歓迎会。分教場の教壇に初めて立ってから18年の歳月は、12人を大きく変えてしまいました。

わたしたちの組はふしあわせものが多いですね、先生。五人の男子のうち三人も戦死なんて、あるでしょうか

小学生の時に撮影した写真に写る12人はもはや揃うことはありません。最後の最後まで、小説は淡々と描かれ、思いでの歌と共に、ラストを迎えます。

本小説には、戦慄するような戦場は一切出てきません。家族を失った者たちの戦争に対する煮えたぎるような憎しみなども全く描かれていません。

描かれるのは、戦争に巻き込まれながらも、淡々と生きた人たちの日常です。多くの人にとっては、それが、戦争のリアルなのではないか…そう思って本書を読み終えました。

「二十四の瞳」と言えば、小豆島が有名ですが…

「二十四の瞳」と言えば、その舞台として「小豆島」が有名ですが、小説には「小豆島」と、具体的な地名の記載はありません。「瀬戸内海べりの一寒村」と記載されています。ただ、その先にある、寒村に関する説明を見ると、確かに、舞台は小豆島なのかもなぁ…と思ったりもします。

小豆島は魅力的な島ですね。いつかは、行ってみたいです。
小豆島観光:アクセス、観光スポット

最後に

今回は、壺井栄の戦争文学「二十四の瞳」の感想を紹介しました。
年に1冊でいい。戦争を考える本を、多くの人が読んでくれたらと思います。

以下は、本書で取り上げた、戦争に関する書籍の書評です。