【書評/要約】プロ投資家の先の先を読む思考法(藤野英人 著)(★4) いかに先の先を読むか。投資のプロの思考を学ぶ

短期予測は難しいが、中長期の先であれば、未来を予測することはできる。

「先の先」を読むことができれば、かなりの成功が約束されます。ここでいう「先の先」とは、目先ではなく、3年、5年先の未来です。

今回紹介する本「プロ投資家の先の先を読む思考法」の著者は、「ひふみ投信」の藤野英人さん。独自の成長企業に投資する「ひふみ投信」の預かり資産1兆円越えは、藤野さんの未来を見る目の確かさを証明しています。

今回は、本書に、いかに先の先を読むか、「先の先」を読む思考力をつけるために必要な習慣・考え方・見方を学びます。

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「先の先」を読むために「今」を知る

【書評/要約】プロ投資家の先の先を読む思考法(藤野英人 著)

「短期」の株価を読むことは困難です。しかし、藤野さんは、3年後の株価なら、クリアではなくとも、ある程度予想だと言います。
その理由は、「株価」と「1株当たりの純利益 EPS」の関係にあります。

株価と予想EPSは連動EPS

株価は以下の式で表せます。

株価とEPS

【計算式】株価(時価)=PER(株価収益率)✕ EPS(1株当たりの純利益)

PERは、株価収益率です。金利や為替、市況などの外部要因やその銘柄の人気によって大きく変わります。一方、EPSは、1株当たりの純利益です。企業の工夫・頑張りによって決定づけられる数値です。

上の式で大事なことは、株価は短期的には外部要因や人気などに左右されるものの、中長期で見ればEPSにほとんど連動するという点です。上野チャートは「日経平均株価と予想EPSの推移」ですが、概ね連動していることがわかります。

株価は企業業績にコミット

これは、株式市場は、冷徹なまでに「企業業績にコミット」することを物語っています。個別銘柄においては、「株価は、その企業が未来に対してどのように付加価値を提示できているのか」 で決まるということです。、ユーザからの高く評価され、結果として利益を伸ばすであろう考えられる会社は、短期では市場の影響を強く受けても、中長期では利益に応じて株価が上昇することになります。

これが、中長期ならば株価は予想できる所以です。株価の「先の先を読む」方法は非常にシンプルなのです。

なぜ、株式投資で勝てないのか

株価の「先の先を読む」方法は非常にシンプルなはずなのに、多くの人は投資で勝てません。それは、「安く買って、高く売る」ができないからです。

当たり前のことができなのは、人は、株価が安い時はまだ下がるのではないかと怯えて買えず、市場が活況になり皆が勝っていると、高値に関わらず欲しくて買ってしまうからです。

だから、株式投資で成功したければ、人間の心理を逆手にとって投資しなければならないのです。

「思考」を広げて先の先を読む

【書評/要約】プロ投資家の先の先を読む思考法(藤野英人 著):「思考」を広げて先の先を読む

「先を読む力」=「先を読む情報を集める力」✕「思考を広げる力」です。

先を読む力を高めたければ、「今、起きている変化」を上手に集め、また、同時に、「5年後、 10 年後の世界がどうなっているか考える思考」を高めていく必要があります。

では、どのようにしたら、思考を広げられるのか?以下は、その方法の例です。

方法方法例・詳細
他者の視点を取り入れる・ツイートの定点観測で
 「世の中の人が全般的にどう思っているのか」を知る
・深夜のレストランで生活者の本音を拾う
・1日の5%は他人になったつもりで考える
偏らず、フラットでいる・努力しなければ、情報や考え方は偏る(正確に世の中が見えなくなる)
・他者の視点を取り入れ、ものの見方の偏りを修正
・物事を俯瞰して見る(着ぐるみトレーニング)
好き嫌いを大事にする・利益を伸ばす企業とは、ユーザの「好き」を集めている会社
・好きなことをやってる集団の方が勝ちやすい
⇒・「損得」ではなく「好き嫌い」で投資先を選ぶ
若い感性を取り込む・若い人は、中高年には見えないものを見、感じている
⇒年下と上手に付き合い、思考をアップデート
読書をする・興味の赴くままに本を読むことが、結果的に思わぬところで役立つ
⇒一見、関係なさそうな知識が、或る時、つながる。この気づきが見方を広げる

先の先を読むための「材料」の集め方

【書評/要約】プロ投資家の先の先を読む思考法(藤野英人 著):先の先を読むための「材料」の集め方

限られた時間の中で、より多くの材料を集めるためには、工夫が必要です。

情報を成熟させ、気づきにつなげる

本書には、藤野さんの情報の集め方が様々紹介されています。これを私なりにまとめると、「様々な情報を同時並行で集め、一度じっくり考えたら、解き放って、情報を熟成させて力にする」ことです。

❶まずは、多彩な方法で情報収集

・人との会話、趣味など、日常の様々なことを通じて、関心事を増やす
・運動しながら読書するなど、同時並行で情報収集する
・初めて学ぶことは、集中的に学び、成長カーブを立ち上げる

❷情報を成熟させる

・一度じっくり真剣に考える
・その考えをそのまま脳の奥に眠らせる(意識下で多くのことを同時に考え続ける)
・会話、様々な体験・趣味などをトリガーに、意識下の情報をつなげ、価値ある情報にしていく

「アイデアが下りてくる」という表現がありますが、アイデアはそのもととなる情報のストックがなければ下りてきません。同じように「深い気づき」も情報のストックがあってこそ、下りてきます。

先を読む情報を集める際に気をつけること 4つ

藤野さんは先を読む情報を集めるに当たって大事なことを、4点挙げています。

❶完璧主義にならない
❷自分をアップデートし続ける
❸快・不快への想像力を高める
❹積み重ねる一方で、「アンラーニング」を行う

以下、❸❹の補足です。

快・不快への想像力を高める

人も企業も、ウェルビーイング(well being)が大事です。心身共に「Well(よい)状態」をを目指すという考え方です。ウェルビーイングを目指す企業は、お客様にも支持されるはずです。

「アンラーニング」を行う

学び続けることは大事ですが、これまで身につけた思考の癖がさらなる学びを阻害することがあります。この状態を回避するのが、「アンラーニング」。思考のクセを直し、「新しく学べる状態」に自分を整えることが大事です。

今この時代に「伸びる会社」の共通点

【書評/要約】プロ投資家の先の先を読む思考法(藤野英人 著):今この時代に「伸びる会社」の共通点

ここからは、藤野さんが、投資する企業を見る際に、何を重視しているかを見ていきましょう。

成長する企業・経営者は「なぜ」を考え続ける

藤野さん曰く、成長する企業とは、「Why(なぜ)を考え続ける会社」 です。なぜやるのか、なぜ今なのか、なぜ私たちがやるのかといった「Why」を無限に問いかけ続けている会社は伸びます。
企業の持続性「サスティナブル」も、「否定し続け、アップデートし続ける」ことによってこそ、実現します。投資においても、投資先がWhyを問い続けている企業・経営者かを見極めることはとても大事です。

日本企業はWhyを考え続けることが苦手です。完璧主義的思考がWhyを問う邪魔をします。しかし、これでは企業は成長しません。日本が競争力を失った大きな原因もここにあります。

今後は、ウェルビーイングを追求する企業が成長する

これまで企業経営においては、「儲け」「効率」が重視されてきました。経済を発展させること、金銭的に豊かになることが大事でした。しかし、今後は、人・社会のウェルビーイングを追求する企業、人間の幸福度を高められる会社が成長するはずだと藤野さんは言います。

ウェルビーイングを考えるうえで大事なのが、PERMA(パーマ)の5要素です。

【P】Positive emotionワクワク・楽しいといった ポジティブな感情があること
【E】Engagement没頭するなど、 物事に積極的に関わっていること
【R】Relationship 他者とよい関係性を築いていること
【M】Meaning自分の人生に意味を感じられること
【A】Achievement達成感を持てること

読了後に「ひふみ投信」銘柄を考察してみよう

本書の考えを元に、「ひふみ投信」の考え方・投資を確認・考察すれば、あなたの投資の目も養われるのではないでしょうか。

ひふみ投信

先を読むことと同じぐらい大切なこと

【書評/要約】プロ投資家の先の先を読む思考法(藤野英人 著):先を読むことと同じぐらい大切なこと

先の先を読む力を高めても、行動が伴わなければ、未来を読む意味はありません。
「先の先」を読む思考力を身につけるだけでなく、「先の先」に向けて一歩踏み出す行動力も併せ持つ必要があります。

「失望最小化」で生きる人、「希望最大化」で生きる人

人の生き方には、大きく2種類あります。一方は、「失望最小化戦略」で生きる人。もう一方は、「希望最大化戦略」 で生きる人です。

失望最小化戦略失望を最小化したいと考え、「できるだけ失望しないこと」を優先する価値観を大切にする生き方
希望最大化戦略希望最大化したいと考え、「できるだけ希望増やすこと」を優先する価値観を大切にする生き方

残念ながら、 今の日本には「失望最小化戦略」を選ぶ人の方が多いです。これが日本の今の停滞を生む一つの要因になっています。「投資より貯金」と考える人が多いことも、それを物語っています。しかし、少なくとも金銭的に幸福になれるのは「中長期で先を読む投資」を選んだ人です。

どんな判断基準をもつか?
私は、マキシマイザー(最大化人間)」ではなく、サティスファイサー(満足人間)に思考を切り替えたことで、すごく、幸福度が増しました。

起きたことの意味は変えられる

失望最小化戦略では「負けることは悪」です。しかし、負けても、必ずそこには「未来の成功に一歩ずつ近づく学び」があります。何もやらないより多くが得られます。

社会に対して責任を果たし(responsible)、革新的であり続け(innovative)、それが本当なのか、答えを疑い(Question the answer)、なぜかを問い続ける(Why ask why)。

そうすれば、「負け」は大きな意味を持ちます。ミスすることは、あなたが新しいことや難しいことをしている証です。

人生とは、思い通りには進まないものです。起きた事実を変えることはできません。しかし、起きたことの意味づけは、将来の行動によって変えることができます。

最後に

今回は、藤野英人さんの本「「プロ投資家の先の先を読む思考法」から、「先の先」を読む思考力をつけるために必要な習慣・考え方・見方を学びました。

最終章で藤野さんが述べているように、未来予測して「どうするか」を決めるのは、自分自身。「未来予測」と「好き嫌い」は切っても切り離せません。未来予測をするには、「自分はどういう人間で、何が好きで、何が嫌いなのか」も予測とセットで考えることはとても重要ですね。

未来を予測する目を養うとともに、自分自身についても深く探求したいです。

なお、「未来を見る目を養う」に当たっては、佐藤航陽さんの本がとても深い気づきを与えてくれます。特に、GAFAMに見られるような天才たちがどうやって未来を予測するのか知りたい方は、是非、以下の本をお勧めします。