【書評】世界史を変えた詐欺師たち(東谷 暁 著)

「一人殺せば犯罪者だが、百万人殺せば英雄だ」とは、チャップリンの名セリフ。

これになぞらえるなら、「一人騙せば詐欺師だが、百万人を騙せば経済政策だ」と語るのは「世界史を変えた詐欺師たち」の著者 東谷 暁さん。

バブルが発生するたびに、不況から脱出すべく、新しい金融政策が登場し、それらに呼応するように新しいビジネスや金融商品が生まれてくる。

しかし、これら金融政策、ビジネス、金融商品を立案する側に、全く詐欺的な要素はないと言えるのだろうか?

本書では、金融史にも名を遺す以下のような著名人の詐欺的側面に迫る一冊です。
・ジョン・ロー
・ケインズ
・シャハト
・グリーンスパン
・ロスチャイルド
・ソロス
・ナカモト・サトシ

バブル崩壊後の景気対策としての金融政策で得するモノはいないのか?

経済の歴史を眺めていると、いやでも目に入ってくるバブルとその崩壊

新しいビジネスや新しい政策が登場する度に、多くの人が新しい時代が来た!と錯覚。ブームが生まれ、バブルのピークを迎えてやがて破裂します。

この時、危機を救おうと、これまで多くの経済政策が打たれて、その対策の効果として経済が落ち着き救われたと考えられてきました。

しかし、経済政策の策定者とその取り巻き立ちが実施してきた策には注意が必要。たとえ成功したと思われる政策であっても、その結果、得をした人間がいて、多くの場合、得した人は既得権益を持つ人たちが多いからです。

ビットコインも詐欺なのか?

本書の最終章には詐欺の立役者としてナカモト・サトシが取り上げれています。

最終章【ナカモト・サトシ 新しい通貨の「神」か、金融詐欺の「悪魔」か】の中では、新しい通貨としてのビットコインの発明、及び、ナカモト・サトシについて記載がされていますが、その中で、著者は、ビットコインにも、ポンジ・スキームの疑いがあるのでは?と指摘しています。

ポンジ・スキームとは

では、ポンジ・スキームとは何なのか?

ポンジ・スキームとは、典型的な詐欺の手口で、多くの詐欺かこの手法を用ているのですが、その名の由来は、詐欺師チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi)の名に由来します。

具体的には、「あなたのお金を運用して増やし、増えた分を配当などでお支払いしますよ」などと謳って、お金(出資金)を集めるますが、実際にはそのお金は運用されることはなく、自転車操業的に集めてくる出資金を元手に配当を払い、さも、運用を行っているように見せかける手口。運用などせず、見せかけの配当を行うわけですから、出資者を集められなくなれば破綻する詐欺の手口です。

世界史を変えた詐欺師たち (文春新書)

ビットコインはポンジ・スキーム?

上述した通り、本書の著者は、ビットコインにもポンジスキームの疑いがあると指摘します。

ビットコインの生みの親、ナカモト・サトシはその存在すら不明であり、には最初から資産形成を狙っていたと言う証拠はなく、それを証明することも難しいですが、2013年には約100万BTCを所有しているという推定がなされています。

ビットコインが新しい通貨を謳い、世の中の人がそれを信じ、巨大バブルが起きたことは事実であり、新しいバブルのネタとして十分に機能したことには間違いないと指摘しています。

バブルにはストーリーが必要

ロバート・シラー教授は、バブルにはバブルを生徒化するストーリーが存在すると指摘します。

例えば、
①ITバブルは、インターネットは世界を根本的に変えてしまう技術だと言うストーリー、
②住宅バブルは、貧しい層の人間でも金融工学によって家が持てるような時代が来たと言うストーリー、
③ビットコインは将来の通貨になるのだから、今買った方がいいと言うストーリー、
です。

バブルは社会的疫病

上記のようなバブルに対し、シラー教授は、「バブルは社会的疫病」「ビットコインはインフルエンザ」と指摘します。

人々は価格急騰を見て、それがこれからも続くと思い込んでしまいます。2018年に崩壊を見せたビットコインも人々にこれは価格が上昇することが確実な資産だと思わせることに成功し、インフルエンザのごとく伝染して熱を出させて、そして消えました。

バブルの主役を演じるのは「人間の欲望」

どの時代においても、バブルの主演を演じるのは「人間の欲望」です。欲望が人々を煽り立て、非合理的な行為に駆り立てます。しかし、その仕掛けを作っている者たちが、実は経済政策策定者とその取り巻きたちです。

我々は、新しい金融の仕組みを振りかざした政治政策者には注意が必要なことを忘れてはいけないのです。

世界史を変えた詐欺師たち (文春新書)

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