【書評/要約】新世紀より(貴志祐介 著)(★5) 1000年後のディストピア、作家の想像力に感服!日本SF大賞受賞作
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新世界より」は、作家 貴志祐介さんのSF小説。3冊からなる1000ページ越え(1138ページ)の超大作です。2008年、第29回日本SF大賞受賞作であり、アニメ化もされています。

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ストーリーは最初は牧歌的な雰囲気から始めるも、謎めいてきた途端、世界観が変わり、重苦しい空気の中に引き込まれる…

なんといっても、貴志祐介さんの作家としての想像力に感服させられます。ディストピアのなれの果ての一つを知ることは、「人類の未来」を考える上でも非常に参考になります。

本作はアニメ化されていることもあり、ググるとたくさんのあらすじが見つかります。そこで、当記事ではちょっと異なる視点から、本作を読んでの気づき・面白いと思ったことを「人類の進化・退化・遺伝子」をテーマにまとめます。

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新世紀より:あらすじ

【書評/要約】新世紀より(貴志祐介 著):あらすじ

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。
周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。
「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。
念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……
隠された先史文明の一端を知るまでは。
―――― Amazon解説

一見、町民は、平和そうな町に暮していますが、町の周囲には注連縄(しめなわ)が張られている。しかし、子どもはそれがなぜなのか、本当のことを教えられていない。どう考えても、何かを警戒しているしている町…

主人公渡辺早季とその同級生は、町の外に出ることで、その秘密を知ってしまう…
1000年に人類の人口が激減してしまう「悪鬼と人類」の戦いが発生したこと、そして、その時代の文明がことごとく葬り去られてしまったことを….

あらすじは検索するといくらでも出てくるので、この程度にしておきます。

新世紀より:気づき・洞察(進化について)

【書評/要約】新世紀より(貴志祐介 著):進化

1000年後の人類が手にした「呪力」

ストーリの中で、1000年後の人類は手に入れたのは「呪力」と呼ばれる超能力を手に入れています。

ただし、この「呪力」が暴走しないために、以下のような仕組みが遺伝子等にに組み込まれています

攻撃抑制:呪力を持った人間同士が戦わないための抑制力
愧死機構:同種である人間を攻撃すると作用
     最初にめまい、動悸等の症状が発症。さらに、攻撃を続けると死に至る

生物の進化には途方もない時間がかかる

進化論・生物学的に、生物は種を繋いでいくために、その生存戦略として、その身に必要な機能を進化させていきますしかし、通常、生命の進化は遅い!

現代人はダイエットに苦しんでいますが、それは、現代人の人間の心と体は、今だ、狩猟採集民の環境でうまく働くように設計されたまま、現代に至っているからです。いつ食べられるかわからず、食べるために1日中動き回る生活で最も効果的に心身がワークするままなのです。

人類が誕生した旧石器時代は、およそ260万年前~1万年前。この間、人類は約10万世代にわたって狩猟採集生活を行い、農耕・牧畜が始まったのはやっと1万年前。さらに、現在のように加工食品を食べるようになったのはわずか100年前。つまり、自然の力だけでは、人間は1000年でそんなに進化しないんですよね。

科学の力で急速に進化する人類

しかし、人間は、ここ100年ぐらいの間で、科学の力(医療の進化)で、驚くべき勢いで寿命を延命させています。とは言っても、2022年時点においては、人間の寿命は遺伝子をいじらない限り「115歳・120歳」が寿命の壁です。

さらに、人間はさらに、寿命を延ばそうとする科学研究も進んでいる。遺伝子操作、さらには、脳より先に滅ぶ肉体を捨て、さらには、脳すら、データ化によって移植して永遠に生き続ける…これを「一つの個(生物)」と言えるのかすら??ですが、そんな科学技術による進化は進んでいます。

このように、科学技術と共にあれば、比較的短い時間で「呪力」を手に入れることだって、ありなのか??と想像してみたりします。

バケネズミの祖先 ハダカデバネズミ

ストーリーの中の重要登場生物「バケネズミ」ですが、この祖先は「ハダカデバネズミ」。漢字で書くと「裸出歯鼠」。まさにネーミングそのもののへんてこな生物なのですが、この生物、人間にすると1000歳ぐらいまで生きる、まさに、バケネズミ!

長寿のカギを握るこの生物の生態はむちゃくちゃ生態が面白い!以下の本、読んで損なしです。

新世紀より:気づき・洞察(退化について)

【書評/要約】新世紀より(貴志祐介 著):退化

今度は、「進化」と対極にある「退化」について。

図書館の抹殺による全史抹殺

主人公 渡辺早季とその同級生は、禁止とされているしめなわの外に出て、先史文明が遺した図書館の自走型端末「ミノシロモドキ」に出会います。そして、彼らは、1000年前の文明が崩壊した理由と、現在に至るまでの歴史を知ることになります。

さて、ここで興味深いのが、「早季が生きる1000年後の世界では、先史文明の図書館、書物が一掃されてしまっている」点です。

※本以外に、この時代には、現在では当たり前の、スマホといった通信手段、自動車・電車といった移動手段が存在しない世の中になっています。

過去の歴史・知識・知恵の抹殺としての「焚書」

過去の歴史を抹殺しようとするときに、リナ瑠奈歴史でも行われてきたのが「焚書(ふんしょ)」です。時の権力者が、先史時代の文明を抹殺して、現権力者に従わせるための思想の統制、文明・歴史の抹殺を行います。秦の始皇帝の「焚書坑儒」は歴史で習いましたね。

ジョージ・オーウェルの「一九八四年」はディストピアを描いた最高傑作ともよばれる名著ですが、ここでも〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が、国民を知識も知恵もないバカに仕立てて思い通りに従わせるために、知恵の宝庫である書物を焼き払います。

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こういう本を読むと、改めて、読書は大事だと痛感させられます。本嫌いでなくてよかった、本好きでよかったと、心から思います。

新世紀より:気づき・洞察(遺伝子)

【書評/要約】新世紀より(貴志祐介 著):遺伝子

最終場面でのキーワードは「遺伝子」

小説の最終版は、血みどろな重々しい話が展開します。人間に従わない外来種バケネズミの登頂、そして、「バケネズミ」VS「人間」の血みどろの殺し合い。そして、バケネズミの最終兵器である「悪鬼(の子)」の登場…

そして、実は、最終兵器である「悪鬼(の子)」は、本物の悪鬼ではなく、人間の子。

さらに、バケネズミの正体も、ネズミが進化した生物ではなく、「呪力を持たなかった人間が変えられた存在」という事実…

キーワードは、「遺伝子」。特に、ストーリーの中で、呪力が暴走しないように呪力と一緒に備わった、「攻撃抑制」「愧死機構」の存在が、本ストーリーのキーとなります。

遺伝子を学ぶと、幸せに生きられる!

最近、遺伝子、生物学に関する本をいろいろ読んでいますが、「人間とはどういう生き物なのか」を知ることが、自分の幸せにつながる(無理せず、ストレスなく、楽しく生きる方法がわかる)と、本を1冊読み終える度に感じます。

一昔前まで、遺伝子・生物学に関する本は「サイエンス本」と思っていましたが、「人類が楽しく幸せに生きるための本」と考えが変わりました。この手の本を読んだことがない方は、是非、読んでみることをおすすめします。「自分は随分無駄な抵抗して苦しんでいたのだなぁ」と、いろいろ気づかされます。

最後に

今回は、貴志祐介さんのSF小説「新世紀より」の感想を、「人類の進化・退化・遺伝子」をテーマにまとめました。

未来を描いた作品は、自分たちが生きる時代の未来を想像する(自分の頭で思い描ける範囲を広げる)のに非常に役立ちます。「未来は、こんなことがあるかも、あんなこともあるかも」という想像が、今の時代をどう生きるか考え行動するきっかけになります。

ちなみに、ウェルズの「タイムマイン」も非常にいろんなことを考えさせられる学びのある小説でした。この小説も、タイムマシンに乗って向かった先の未来は、いわゆる、スタートレックのような超ハイテクな未来ではありません。そこに、ある種の怖さを感じました…