【書評/要約】総理にされた男(中山 七里 著)(★4) 怒涛の展開に息を吞む!熱くて、面白くて、ためになる、政治エンタテイメント小説
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しばらくの間でいい。総理の替え玉をやってくれませんか

加納慎策は、内閣総理大臣・真垣統一郎に瓜二つの容姿とそ精緻なものまね芸をもつ、売れない舞台役者。それが、いきなり連れられて行った先で官房長官に告げられたのが、意識不明に陥った総理の替え玉の密命。はじめは短い時間の替え玉のつもりが、日本画直面する、政治・経済・官僚・国民の声などの最前線に立たざるを得なくなっていく。

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怒涛の展開に息を呑む 政治エンタテイメント。私は、ストーリーに弾きこまれ、一気読み!政治・経済・外交が苦手な方にも、いろいろな学びがある、とてもよい小説です。

今回は、中山七里さんの小説「総理にされた男」のあらすじと感想・学びを紹介します。



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総理にされた男:あらすじ

【書評/要約】総理にされた男(中山 七里 著):あらすじ

人気作家・中山七里が描く
ポリティカル・エンターテインメント小説!

売れない舞台役者・加納慎策は、内閣総理大臣・真垣統一郎に瓜二つの容姿とそ精緻なものまね芸で、ファンの間やネット上で密かに話題を集めていた。

ある日、官房長官・樽見正純から秘密裏に呼び出された慎策は「国家の大事」を告げられ、 総理の“替え玉”の密命を受ける 。慎策は得意のものまね芸で欺きつつ、 役者の才能を発揮して演説で周囲を圧倒・魅了する 。

だが、直面する現実は、政治や経済の重要課題とは別次元で繰り広げられる派閥抗争や野党との駆け引き、官僚との軋轢ばかり。政治に無関心だった慎策も、 国民の切実な願いを置き去りにした不条理な状況にショックを受ける。

義憤に駆られた慎策はその純粋で実直な思いを形にするため、国民の声を代弁すべく、演説で政治家たちの心を動かそうと挑み始める。そして襲いかる最悪の未曽有の事態に、慎策の声は皆の心に響くのか――。

予測不能な圧巻の展開と、読後の爽快感がたまらない、魅力満載の一冊。
―――― Amazon解説

短時間の替え玉総理だったはずが、総理は死んでしまう。しかし、現職総理の急死の報道は大パニックと引き起こすので、発表はできない。結果、慎策はどんどん、日本が直面する様々な課題に最前線で直面することに…

そして、❶閣僚、❷野党、❸官僚、❹テロ、❺国民を相手に、「一国の一大事」と言える難題に対処せざるをえなくなります。発刊が2015年の本であるので、少し内容が古い部分もありますが、それはそれで、過去どうだったかを顧み、そして現状はどうあるかを考えてみることができて勉強になります。

総理にされた男:感想

【書評/要約】総理にされた男(中山 七里 著):感想

小説「総理にされた男」はストーリーにテンポがあり、読者はどんどん、話に引き込まれます。政治嫌い・無関心の方でも読んでいて、ためになり、政治・経済に興味を持つきっかけにもなります。
以下、面白い、ためになると思ったことを、いくつかピックアップして紹介します。

現政治とも被る内容が面白い

本ストーリーでは、与党が国民党。民政党から政権を奪還してからまだ日が浅い与党です。しかも、民生党の三年間の運営があまりに 酷かったことへの、いわば反対票で政権復帰を果たしています。

そして、選挙に大敗した政党がやることと言えば、ここぞとばかりに、野党勢力を結集させ、国会審議は空転させること。山積する重要法案は停滞を余儀なくされ、景気回復や震災復興などの国内問題がその分後手に回る。さらに、首脳会議が迫る中、国内情勢不安と見た各国が、それにつけ込んで何を主張してくる…

日本のいつぞに重なります。このように、現代の日本政権に重なる部分があるので、興味深く、面白く読めます。

総理の器

議員の中にもいろんな人がいます。しかし、誰もが総理になれる器を持っているわけではありません。

総理の椅子に座るには政治的手腕以外に必要な資質が山ほど必要です。決めるときのプロセスは緻密でわずかな疎漏もせず、しかし、国民に見せる時には、単純明快に提示する力が必要です。ある意味、総理は「役者」でないと務まりません。答弁会場の場の雰囲気を読み、それに合わせて、場の感情を誘導しながら、ロジカル、そして、時には感情を揺さぶる演説が必要です。

そして、「強運」が必要です。元安倍首相は第二次政権時代、「たまたま米国の経済上昇期」と政権スタートが一致し、経済浮上期に政治運営が実現した「強運」の持ち主であったことで長期政権を維持することができました。しかし、銃弾に倒れたことを思うと…いろいろ考えさせられますね…

政治・経済が学べる

さて、質問です。

・「党三役」とは何かわかりますか?
・日銀・金融緩和、インフレターゲットの弊害、流動性の罠 が何かわかりますか?
・マクロ経済とミクロ経済の違いが判りますか?
・デフレ真っ只中で事業仕分けを断行したのが失策だった理由を説明できますか?

わからなければ、本書を読んでみましょう。興味を持つきっかけになるはずです。

どうすれば景気は良くなるか

2022年現在、日本は、円安とロシア・ウクライナ戦争を主な原因とするコストプッシュインフレで家計がひっ迫。日本の家計が過去の総中流社会から、中間層が沈み込み、総下流社会へと向かいつつあります。

「総理にされた男」の中でも、日本はデフレにあえぎ、その対策として、消費税増税+成長戦略で労働生産性を2%アップさせ、賃金の伸びを物価上昇率以上にしたいと、目論んでいます。

しかし、総理影武者の慎策は、一国民として「(消費税UPで)庶民の生活が苦しくなってもいずれは景気が回復するという奇天烈な理屈だ。消費税が上がれば、自分のように所得の低い者はますますモノが買えなくなる。そんな状態が続いた延長にいきなり展望が開けてくるなど、ペテン師の戯言のようにしか思えない。」という思いがぬぐえません。

それに対する官房長官の答えを搔い摘んで、短文化して、示したのが、以下の引用です。

有効な景気対策というのは大抵、庶民には不人気なのですよ。
景気の良し悪しというのは詰まるところ、カネの循環がいかに大きくいかに速くかということなんです。そうだな、生き物に喩えれば血のようなものです。動物が活発に動くためには血液が多く、そして速く身体に行き渡らないといけない。それと一緒です。
景気を回復させるには、どこかで眠っているカネを動かす必要があります。たとえば、日本の個人金融資産は千四百兆円という試算がありますが、この金融資産の持ち主は、言わずと知れた富裕層ならびに高齢者です。そういう人たちがカネを遣ってくれないと経済は活発化しない。だから過去の景気政策というのは大方、金持ちにカネを遣いやすくするための方策なんですよ。一般庶民は蚊帳の外って訳です。
 
ひどい言い方になるが、貧乏な人は余分なカネが入ってきても、すぐ遣わずに貯めようとするでしょう。そうすると結局、カネの流れは止まってしまう。消費税が安定財源だというのは、どんなに生活を倹しくしても削れないからです。
一律に徴収し、一律に分配したのでは意味がない。そこには当然、費用対効果と優先順位が発生する。一例を挙げれば、同じ一億の予算を投入するにしても、成長産業に費消すべきか、それとも減反農家の補償費用に充てるべきか。答えは自ずと明らかでしょう。そういう優先順位に則って対策を行えば、早く恩恵に 与る者とそうでない者に分かれるのも自明の理。景気がいい、というのは国民全員が等しく潤うことではなく、あくまでも全体の平均値が上がることなんです

悔しいかな、感情面で納得できないところはあっても、説明は明快で腑に落ちます。

資本主義においては資金は偏在する。平等はない

上記、「景気がいい、というのは国民全員が等しく潤うことではない」という官房長官の発言は、資本主義経済とはなにかの本質を言い当てた重要な言葉だと考えます。

資本主義においては「平等はない」。富むべきものは益々富むといった具合に、資金が偏在することが資本主義の特性です。好景気も、単にモノとカネの流れが活発であるという事実に過ぎず、一個人のお財布が潤うかとは関係ありません。  

でも、少し前まで市井の人であった慎策は、「政治というのは、弱者を救うものではないのか」という思いも捨てきれない。この気持ちはストーリーを通じて貫かれ、議員・国民の気持ちを変えていきます。

憲法九条と現状の乖離から逃げていないか

【書評/要約】総理にされた男(中山 七里 著):憲法九条と現状の乖離から逃げていないか

本小説では、海外で日本の大使館がテロの標的となり、人質が3時間後に殺されていくという話が展開されます。人が容赦なく3時間後に殺されていく映像を見て、日本政府は何ができるかが突きつけられるわけです。

日本は戦争大反対の国です。憲法9条にも「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と書かれており、自衛隊の武力行使が必要かもしれない場面では、国民を巻き込んで、喧々諤々となります。

しかし、慎策は、人命がかかった局面で、「海外大使館へ自衛隊を派遣し、テロを弾圧(武力を行使する)」ことを、総理大臣の命として下し、それを実行します。当然、国会のみならず、国民を巻き込んだ、総理への大追及が始まります。

その説明場面で、つい最近まで市井の人であった慎策は、議員、記者、国民に向けて、打算でもなければ懐柔でもない、自分は胸のうちを全て曝け出して話します。(かなり省略しての省略抜粋です)

わたしは逃げています。憲法九条を見直すこと、実際に起きてしまう危機に武力を行使する是非について語ることを恐れています。何故なら、この内閣と、そしてこの国が、国防を論じるまでに成熟していないと感じるからなのです。
 
歴代の内閣が散々議論してきた安全保障条約にしろ、集団的自衛権にしろ、こうして実際に邦人や自衛官たちの血が流れなければ、法律談義や戦争シミュレーションに終始するのが関の山でした。

それは我々国会議員を含めた多くの国民が、意図的に血生臭い話を避けてきたからです。海の向こうで起きている流血を、それこそ対岸の火事と片付けてきたからです。今回のことで自衛隊の存在意義、憲法九条と現状の乖離 が明確になったのなら、それは大きな前進です。

平和憲法はこの国が世界に誇るべき条文です。いつまでも守っていきたい。一方で、今後、その条文にある理想を堅持しながら、卑劣な独裁者や人を人とも思わない勢力と対峙していかなければならない現実から目を背けることも、したくありません。

もう逃げる時ではないというのは、皆さんもお分かりいただいたことでしょう。これから真垣内閣がどうなるかは神のみぞ知るところですが、ただ一点、わたしの思うところをお伝えしたい。自国民の安全を自国で護れない。そんな国が果たして独立国家と言えるのかどうか。

政治が人間の所業である限り、その基盤となっているのは理屈よりも感情のはずです。困っている者を救いたい、世の中の不公平を是正したい、悲劇をなくしたい。そういった感情を実現することこそが、政治の役目なのではないでしょうか。政治というのは正しいことの追求ではなく、窮地に陥った者と陥ろうとする者を救うことではないのでしょうか。

この後、慎策は思わぬ方法で、翌朝までを期限に国民に、自分の行った自衛隊派遣、そして、総理を信任できるか、問います。熱いストーリーは、是非、本書で読んでほしいです。

さて、上記意見についてですが、個人的には「憲法9条を大事にしながらも、道理があるようでない世界においては、自国を守る手段は大事であり、ただ戦争反対と言っていてはいけない」と思っています。

この件については、百田尚樹さんの小説「カエルの楽園」の書評でもまとめているので、合わせてご確認いただければと思います。なお、カエルの楽園も、日本の国防を考えるためにも読んでいただきたいと思います。

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最後に

今回は、中山七里さんの「総理にされた男」の感想を書評としてまとめました。
いろいろと学びがあり、また、考えさせられる本です。ストーリーとしても面白いので、 読んでみることをおすすめします。

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