【感想/あらすじ】夜に星を放つ(窪 美澄 著)(★4) 人間関係に傷ついた人たちの心の機微を描く。第167回 直木賞受賞作

人は、何度も人間関係に傷つく。しかし、再び誰かとつながり、誰かと心を通わせ、前に進む―

窪 美澄さんの小説『夜に星を放つ』は、死や別れなど、かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける5つの短編集。第167回直木賞を受賞しています。

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5つの短編の主人公は、年齢も性別も境遇も様々。しかし、共通するテーマは「喪失感」と「再生」生きづらさを感じている人の「心の揺れ・機微」が丹念に描かれています。「この気持ち、すごく(または、なんとなく)わかる」と共感できる作品に出会えるはずです。

夜に星を放つ:あらすじ

夜に星を放つ:あらすじ

かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。

コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。
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本作はコロナ禍で描かれた作品です。コロナ禍で、終わってしまった人間関係、変わってしまった人間関係をお持ちの人は多くいらっしゃるはずです。

本作では、年齢も性別も境遇も全く異なる5人の主人公が、人間関係に心を痛めながらも、気持ちを変化させていく様子が、丁寧に描かれています。

何か事件が起きたりするわけではない、「普通の人の普通の日常生活の心境の変化」がつづられたものであるが故、心の機微が伝わってきます。

短編タイトル主人公とテーマ
真夜中のアボカド30代OLの失恋
銀紙色のアンタレス16歳の青年のひと夏の淡い恋
真珠星スピカいじめに悩む女子高生の再起
湿りの海離婚で妻子と離れ離れになった男性の孤独
星の随に(まにまに)父の再婚相手との関係に悩む少年の物語

夜に星を放つ:感想

夜に星を放つ:感想

作家:窪美澄さん

私は、窪美澄さんの作品は『ふがいない僕は空を見た』についで、2作品目。この作品では、第8回R-18文学賞、山本周五郎賞をW受賞しています。

こちらの作品は、「性」と「生」がテーマ。性描写が相当にリアルでエロい。しかし、それだけにとどまらず、生き方について考えさせられます。

さて、この作品を紹介したかと言うと、この作品でも主人公は、自分を憂い「」を見上げます。昼間の空も、夜の空も、確かに、人は自分を想うとき・考えるとき、ふと、上を眺めてしまう生き物だなぁ、と思った次第。

今の自分に悶々とした気持ちを味わっているなら、一人静かに空を眺める時間を確保してみる。もしかしたら、前に進むヒントが見つかるかもしれません。

辛い時、支えとなるもの

精神的につらい時、あなたは、何に救いを求めますか?何が、心の支えとなってくれますか?

家族や親友などに気持ちを打ち明け、心を軽くする方は多いでしょう。

しかし、本作を読んでいると、つらいときに支えとなるのは、必ずしも、家族など一番身近な人ではなく、以外と、周囲でそっと寄り添ってくれる人たちかもしれないと気づかされます。

家族や親友へ話すことは、確かに心を軽くします。しかし、ある部分では、重たかったり、アドバイスがおせっかいだったり、頼ってしまったことに、自分自身が引け目を感じてしまうことがあります。

それに対し、もう少し周囲の人はどうか?必要以上に感情移入しないが故、アドバイスが的確だったり、ただ、「がんばれ」という言葉と共にもらった優しい笑顔や、ポンと肩を優しくたたいてくれるなど、些細のないことが、「励まし」となったりします。

或いは、自分を支えてくれるものは、人ですらないかもしれません。きれいな風景だったり、道端に咲く花だったり。私はベランダで、太陽の光・水・わずかな肥料だけで、きれいな花を次々に咲かせる「花たち」を見るたびに、「私も頑張らなくちゃな」と元気・勇気をもらっています。

私が好きな短編

5つの短編の中で、私が一番好きな作品は「星の随に(まにまに)」。

随に(まにまに)」とはどういう意味だか分かりますか?

調べてみると、「他人の意志や事態の成り行きに任せて行動するさま。ままに。」「 ある事柄が、他の事柄の進行とともに行われるさま。…につれて。」という意味です。

本作は、父の再婚相手との関係に悩む主人公の少年・想くんと、近所のおばあさんとの交流を描いた物語。両親が離婚し、新しい母との間には弟が誕生。最初は良好だった新しい母は、育児ノイローゼになり、想くんを家に入れないように鍵をロックするなど、辛く当たるようになります。

そんな折、通りすがったおばあさんが、家に入れない時間、ご自宅にかくまってくれることで交流が始まります。しかし、おばあさんは老人ホームに入所することに。想くんが虐待に合わずに済むよう、両親に働きかけてくれるというお話です。

想くんの心の痛み、生みの母を想う気持ち、そして、新しいお母さん、赤ちゃんのを想う気持ち。育児ノイローゼ・夜泣きで夜眠れない母を気づかう気づかいつつ、おばあちゃんにSOSする心の揺らぎが実にリアルで、心動かされます。

人の心を丁寧に描いた作品は、ちょっとした何気ない日常であっても、心を打つ。そう感じさせられたお話でした。

最後に

今回は、窪 美澄さんの小説『夜に星を放つ』のあらすじと感想を紹介しました。

大人になると人は、社会に合わせるために自分の気持ちを無視しがちです。また、「損得」ばかり考えて、相手の気持ちを軽んじたりすることもあります。

人は支え合って生きている。だからこそ、自分の気持ち・人の気持ちをもっと大切に生きなければならない、と読了後、考えさせられました。いい作品は、大事なことを気づかせてくれます。

是非、本作で「心の機微」に触れて頂けたらと思います。

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