【書評/要約】ふがいない僕は空を見た(窪美澄 著)(★4) 「性」と「生」。性描写が相当にリアルでエロい。 第8回R-18文学賞、山本周五郎賞 W受賞作

ふがいない僕は空を見た―。

タイトルがカッコイイ。そう思って手に取った本作。タイトルにふらふらと惹かれて、数ページ、読み始めて驚くことになる。その舞台設定と性描写に…

本作は5編の短編からなる小説です。1編目の「ミクマリ」は、第8回 女による女のためのR-18文学賞の受賞作品。その後、4編が加えられ「ふがいない僕は空を見た」の1冊となり、第24回 山本周五郎賞を受賞しています。2012年には監督タナダユキさん、キャスト永山絢斗さん・田畑智子さんで映画化もされています。

私は、賞受賞作であることも、映画化されていたことも知らずに読み始めたのですが、インパクトのある小説です。読み始めてまもなく、濃厚な性描写が描かれるので、健全な男女なら、そのまま物語に引き込まれていくと思います。

今回は、窪美澄さんの小説「ふがいない僕は空を見た」のあらすじ感想です。

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ふがいない僕は空を見た:あらすじ

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが――。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。
Amazons紹介文

上記紹介文や、映画のプロモーションを見ても、さほどのエロさを感じません。しかし、読み始めると…そのエロさ、何たるか。映画より、妄想(による映像化)の方が勝ります。一部の方はドン引きしてしまうかもしれません。

性描写はリアルです。いわゆる、キャラになり切るエッチプレイは別としても、異性とセックスをする際の気持ちの高まり、そして、その時に起こるの身体の反応は、現実のリアルに近いものがあると思います。

ただし、本作の凄さは、性描写だけではありません。短編5編で再構成することで、単なる官能小説の枠を超えた「性」と「生」を取り扱う作品に昇華されています。

不倫、不妊、夫婦問題・姑問題、若者の恋愛、痴呆、毒親、貧困、貧困、犯罪、人生の勝ち負け―

社会のあちらこちらに点在する「性と生(生き死に)」を取り扱う小説となり、小説に深みを与えています。

ふがいない僕は空を見た:感想

【書評/要約】ふがいない僕は空を見た(窪美澄 著):あらすじ、感想

ふがいない僕は空を見たで扱われる「性」と「生」。これを知るには、もう少しあらすじについて述べる必要があります。以下、1~5編のあらすじと感想をまとめて紹介します。

ふがいない僕は空を見た:収録5編

・マクミリ
・世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸
・2035年のオーガズム
・セイタカアワダチソウの空
・花粉・受粉

【性】マクミリ

短編にして、話が濃厚です。

プレイセックスで萌える人妻と高校・卓巳との不倫を描いたお話。ひょんなことで出会った二人は、コミケキャラでの台本に基づきセックスすることに明け暮れます。

卓巳の母は助産婦。そのため、卓也は小さなころから妊婦が身近な存在であり、母の依頼でお産を手伝ってきた経験があります。それゆえ、女性の妊娠・お産の苦しみ、そして、女性の体(性)についてもよく知っている。そして、人の生命の誕生「生」が身近にある環境で成長しています。この卓也の人物設定が次編以降も活きていきます。

【性と生】世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸

本編も、話が濃厚かつ、重たい内容を取り扱っています。

「不妊・妊活」、そして、不妊をトリガーに起こる「嫁姑問題」がテーマ。姑は自分の人生の楽しみのために、「孫が欲しい。お金はいくらでも出すから」と、妊活を強要します。しかも、妻は純粋な気持ちで夫と結婚したわけではありません。いわば、人生をラクに専業主婦として生きるために選んだ人生です。

好きでもない男と結婚し、子供ができないことを責められ、妊活を強要。さらには、その姑(実の母)の意見に何も反論しない夫….

妻にも問題はありますが、姑の恐ろしさはそれを上回ります。そして、卓巳との秘密の関係はさらに度を増し、さらなる問題へとつながっていきます。

【性】2035年のオーガズム

3編は話が一転。女子高生・松永が主人公。1編で登場する卓也との若者の恋愛がテーマです。。卓也に愛されて目くるめく恋・エッチがしたい 松永。しかし、その前に立ちはだかる不倫主婦。2編「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」と対比するような内容となっているところが、作者・窪美澄の構成力の凄さかと。

【生】セイタカアワダチソウの空

4編は全5編の中で、異質です。しかし、話は緩く連鎖しています。

主人公は、社会の底辺で生きることを余儀なくされる高校生・福田。卓也・松永と同じ高校生。しかし、福田は、毎日の生活苦に苦しむありさま。母親は、痴ほう症の母を出ていくような毒親。しかも、福田がアルバイトで貯めたお金までこっそり自宅に舞い戻って盗んでいきます。福田は友達に助けられながらも、バイトでなんとか生きているような状況です。

貧困・毒親・認知症、そして犯罪…. 
こちらは「いかに生存するか―。」という意味で、「生」を取り上げた作品ともいえると思います。

本編読みながら思い出したのは、中山七里さん作「護られなかった者たちへ」。こちらも社会の底辺を描いた問題作。涙なくして読めない小説です。

【性と生】花粉・受粉

ラストは、助産婦である卓也の母親のお話。男女のセックスで、受精卵と精子が出会い、赤ちゃんが誕生する。「性」が「生」に変わる現場をまとめた作品です。

5編を読了して

1編、1編は独立したお話です。しかし、登場人物、そして、「性」と「生」をテーマとして話が進んでいきます。

最初の1編「マクミリ」から 5編からなる「ふがいない僕は空を見た」へ―。読み終えて、窪美澄さんの作家としてのストーリー力、構成力などの凄さを感じました。

最後に

今回は、窪美澄さんの小説「ふがいない僕は空を見た」のあらすじ感想を紹介しました。

読み終えて、5編の主人公それぞれが「人生を憂いて空を見たくなる」、そして、読者も「空を眺めて、本作で取り扱われるテーマについて/自分の人生について考えたくなる」話だなぁと思いました。

エロ官能小説として、あるいは、「性と生(生き死に)」を考える小説として、是非、読んでみて頂けたらと思います。