【書評/要約】Aではない君と(薬丸岳 著)(★4) ラストシーンに号泣。第37回 吉川英治文学新人賞受賞品
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同級生の殺人容疑で逮捕された14歳の息子。だが、弁護士に何も話さない。真相が明かされないまま、親子は少年審判の日を迎える。

薬丸岳さんの小説「Aではない君と」は、「少年犯罪」「加害者・加害者家族のの苦しみ」「被害者の悲しみ」「贖罪のあり方」など、重いテーマを取り扱った小説です。

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ラストシーンまで、なぜ、少年は友達を殺害してしまったのか、真実が明らかになることなくストーリーは展開していきます。真相が明らかになったとき、涙が溢れます。

今回は本書の感想をまとめます。

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Aではない君と:あらすじ

あの晩、あの電話に出ていたら。同級生の殺人容疑で十四歳の息子・翼が逮捕された。
親や弁護士の問いに口を閉ざす翼は事件の直前、父親に電話をかけていた。
真相は語られないまま、親子は少年審判の日を迎えるが。
少年犯罪に向き合ってきた著者の一つの到達点にして真摯な眼差しが胸を打つ吉川文学新人賞受賞作。
―――― 「BOOK」データベースより

本書のあらすじは、テレビ東京の特別テレに番組の番宣を見てもらうとおおよそわかります。

Aではない君と:感想

Aではない君と:感想

本書は、「少年犯罪」「加害者・加害者家族のの苦しみ」「被害者の悲しみ」「贖罪のあり方」など、重いテーマを取り扱った小説であるが故、読んでいる途中にもいろんなことを考えさせられます。

ここからはさらなるネタバレを含むので、本を読む前にストーリーを知りたくない方はお控えください。

最も心に残った言葉

最も涙があふれたシーンはラストシーンですが、それとは別に、非常に心に残る言葉がストーリの後半にありました。

顔から手を離すと、翼がうなだれていた。手の中の生暖かい息子の体温を感じ、切なさが込み上げてきた。息子が生きていることの実感をかみしめながら、視界がかすんでいく。

「いつかお父さんに訊いたよな。心とからだと、どちらを殺したほうが悪いの、って。今なら間違いなく答えられる。からだを殺すほうが悪い」  
翼が弾かれたように顔を上げた。吉永は手に持ったティッシュで自分の涙を拭い、翼を見つめた。

「もし、二度と翼の声を聞くこともできず、翼に触れることもできなくなってしまったらお父さんはどれほど辛いか……病気や事故で翼がいなくなったとしてもとても耐えられない。ましてや誰かに殺されたとしたら……お父さんは自分の命がなくなるまで、その人間を恨み続けるだろう」

心が死んでも、生きていたら語りかけ、抱きしめることもできる。
しかし、体が死んでしまったら、もう何もできない。
写真や想像で思い出すことはできても、体温を感じることはできない。

当たり前のことですが、改めて、殺人という罪の重さを考えさせられます。

一方で、親の強い愛も感じます。殺人を犯しても、息子は息子。今、辛い一生が待っている息子を何としても守りたい。痛みを分ち、少しでも息子の苦しみを何とかしてやりたいという、父親の感情です。

自分にできることは、愛おしい子に付き合うことしかできない。でも、世間の誰もが少年Aとして息子を憎んだとしても、自分だけは息子を愛し続ける。

そんな父親の気持ちが伝わってきます。

犯罪の理由は「いじめ」だが…

翼が犯罪が犯した理由は「いじめ」にありました。原因がいじめにあったことは、「少年審判」でも明らかにされ、そのうえで罪が問われますが、実際の真相は違いました。このことは、翼が刑期を終了し、アルバイトながら仕事について、普通に生活していた中で明らかになります。

翼が真実を語るきっかけとなったのは、父から促された「被害者家族への謝罪訪問」でした。少年は、少年院を出た後も、まだ、被害者家族宅に出向き、殺害してしまった友達 優斗の仏前に手を合わせてはいませんでした。

それは、被害者の父親に翼の贖罪訪問に関して、いくつか条件を求められていたからです。その一つが、「贖罪に来るなら、本当に更生した姿を見せられるようになったときに来い」というものでした。

被害者宅への贖罪訪問にて

被害者の父は、翼が贖罪に訪問した際、「君は自分が本当に更生したと思っているのか」と翼に尋ねます。しかし、その答えは 「いえ……」といったか細い声でした。そして、訪問の理由を「自分では何が更生かまだわからないからです。ただ、謝りたいと思いました」と告げます。

確かに、更生し、社会で働くようになったとしても、加害者にの父に何をもって更生したと示せるのかを考えるとそれはとても難しい。翼の返答は、本当の偽らざる気持ちなのでしょう。

はじめ被害者の父は、翼が仏前で手を合わせることを拒否します。そして、少し話をした後、棚の引き出しから1枚の写真を取り出し手渡します。それは、「翼と優斗が満面の笑みで笑う二人が写った写真」でした。

「優斗の机の引き出しに入っていた。わたしたち家族の写真は家に飾るのも嫌がっていたのに」 写真立てを見つめながら翼の顔が青ざめていく。 「君の顔は見たくない。だけど、うちにある写真の中で一番いい顔をしてるから捨てられない。君の部分を引き裂いてやりたいとも思ったが、そうすると優斗の顔が曇ってしまいそうでできない。わたしは死ぬまで君の顔を見続けなきゃならない。この気持ちがわかるかい

被害者家族がどのような辛い思いで過ごしてきたのか、を想像すると苦しくなります。しかも、この悲しみは、死ぬまで続きます。人を殺すことなどあってはならないのです。

十字架を背負って生きねばならぬ人生

どこで間違えてしまったんだろう。どうすればよかったんだろう。
それがわかったとして、もうどうにもならない。
(略)
この先、翼のことを本当にわかってくれる人とは出会えないのだ。
だが、その重い十字架を背負うことが、人の命を奪い、生きていくものの務めではないか

重い十字架を背負って生きる人生とはどのようなものか…
殺人という罪は、被害者に一生ついてまわり、一時的に安定した生活を手に入れたとしても、罪がばれることにおびえ、ばれたら仕事も失ってしまうということの連続なのでしょう。真っ当な暮らしをしたくても、それが叶わず、生きるために、悪の道に手を染めねばならぬかもしれません。そんな人生。辛すぎます。

最後に

今回は、薬丸岳さんの小説「Aではない君と」を紹介しました。さすが賞受賞作です。「少年犯罪」「加害者・加害者家族のの苦しみ」「被害者の悲しみ」「贖罪のあり方」、いろんなことを考えさせてくれます。

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人を不幸にする犯罪が、少しでも少なくなることを思ってやみません。是非、原書を読んで、そんなことを考えてほしいです。

少年犯罪については、以下の本を読んだ時もいろいろと考えさせられました。こちらも、お子さんがいるいないに関わらず、読んでおかれることをおすすめします。ベストセラーたる理由がわかる学びの多い書籍です。