【書評/要約】ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治 著)(★5) ~犯罪を犯しても、反省できないのには理由がある!内容に衝撃!
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なぜ、ケーキが3等分できないのか?

著書「ケーキの切れない非行少年たち」の表紙に描かれる、3等分のイラストを見て、「そんなバカな」と思われた方も多いと思いますが、一部の非行少年はこれを大真面目で描いています。

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これまで、私は、犯罪を犯しても反省もせずヘラヘラ笑っている子たちは、どうしようもない存在と思ってきました。しかし、一部の人は、子供のうちに救いの手を差し伸べてあげなくてはいけない知的弱者であることを知り、衝撃を受けました。彼らは、もの見る・話を聞くの段階で世界が歪んで見えており、「反省以前」の大問題を抱えているのです。しかし、見た目は健常者。彼らの機能に気づきません。

そして、誰にも問題を気づかれず成長してしまうことが、非行少年、さらには、犯罪者を生み、日本の国力までをも落としている。そして、次の世代にも不幸を連鎖させている…

その問題は深刻であり、私にとって大きな衝撃でした。多くの人に読んで知っていただきたい。

今回は本書「ケーキの切れない非行少年たち」からの気づき・学びを書評としてまとめます。



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少年刑務所などのお世話になる子たち

【書評/要約】ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治 著)(★5):少年刑務所などのお世話になる子たち

本書の著者である、宮口幸治さんは児童精神科医。少年院で多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」がたくさんいるという事実に気づいたと言います。

「厄介な子」と片づけられてしまう境界知能児

不幸なことですが、子どもの中には、発達障害、知的障害を持って生まれてくる子供たちがいます。見た目にも障害を持つと分かる子たちは、親や社会が目を配るなど、学校・社会生活で困らないように保護されます。

しかし、端からみて見た目では知的障害を持つとわからない子たちはどうでしょうか?

小学校では、たとえ、軽度知的障害境界知能(明らかな知的障害ではないが状況によっては支援が必要)を抱えていても、「厄介な子」「バカな子」として扱われるだけ。

小学校2年生くらいから勉強についていけなくなり、友だちから馬鹿にされたりイジメにあい、先生からは不真面目だと思われる。さらには、家庭内で虐待を受けたりする。そして、その辛さからの逃避・回避策として、学校に行かなくなったり、暴力や万引きなど様々な問題行動を起こしたりし始めてしまうのです。

「クラスの下から5人」の子どもたち

現在の知的障害者の定義は、おおよそIQが70未満で社会性に障害があることとなっています。この定義に従えば該当者は2%です。

しかし、軽度知的障害なども含め、上記のような問題を抱える人を知能分布から算定すると、人口およそ 14%。つまり、現在の標準的な1クラス35 名のうち、約5人いることになります。

このような、クラスで下から5人の子どもたちは、彼らは知的障害者と同じくしんどさを感じていて、支援を必要としているかもしれません。

最近は、ADHD(注意欠陥多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)と診断される子もいますが、彼らは周囲からの理解が得られやすい。しかし、クラスで下から5人は困っているにもかかわらず診断がつくことはありません。病院に行って色々検査を受けても、「知的な問題なし」と診断され、結果、「バカ」「厄介な子」で片づけられるという悲劇につながります。

中学になると手が付けられない

彼らが中学生になるとどうなるでしょうか?もはや手がつけられなくなります。

彼らの一部は、犯罪によって被害者を作り、逮捕され、少年鑑別所に入って、最初は悪いことをしても反省しない「どうしようもない子」と判断されます。しかし、丁寧な児童精神科などを受けて、そこで初めて「障害があったのだ」と発覚するのです。

本来なら、もっと、小さい時に、周囲が障害に気づいて正しくケアされてれば、ここまで素行が悪化することはなかった子供たちかもしれません。

もちろん、障害のある少年だからといっても犯罪行為は許されません。しかし、本来は支援されないといけない障害をもった少年たちが、「なぜこのような凶悪犯罪に手を染めることになったのかは極めて大きな問題」です。

境界知能は親でも気づきにくい

「自分の子供が何かおかしい」と思ったとき、親は子供を病院に連れていきます。しかし、病院を受診する子たちは、家庭環境が安定した比較的恵まれた子どもたちです。

しかし、多くは見過ごされ、犯罪などの大問題を起こした後に、「非行の根底に境界知能という障害があったことが発覚」するのです。

世界が歪んで見える子供たち

【書評/要約】ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治 著)(★5):世界が歪んで見える子供たち

なぜ、ケーキが3等分できないのか?これは、彼らには世界が大きく歪んで見えることが原因だと宮口さんは言います。
彼らにとって、世界はとても【生きにくい残酷な世界】でしかないのです。

非行少年に共通する特徴

少年院でも反省できない非行少年たちには、次のような5+1の特徴があると言います。

❶認知機能の弱さ  :見たり聞いたり想像する力が弱い
❷感情統制の弱さ  :感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる
❸融通の利かなさ  :何でも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い
❹不適切な自己評価 :自分の問題点が分からない。自信があり過ぎる、なさ過ぎる
❺対人スキルの乏しさ:人とのコミュニケーションが苦手
+①身体的不器用さ :力加減ができない、身体の使い方が上手でない

以下では❶と❸について取り上げます。

5感からの情報が既に間違っていると…

彼らの中には、「見る力」「聞く力」から入ってくる情報が既に間違っていたり、情報の一部しか受け取れなかったり、受け取った情報を間違って整理してしまうなどの特徴がみられます。「見る力」「聞く力」を補う「想像する力」も弱いと、それらを正しく修正することもできません。

その結果、先生・指導者の言っていること聞き取れない/理解できません。最初の情報が歪んでいるので間違った方向に進んでしまうのです。これが、これが認知機能の弱さが引き起こす〝不適切な行動〟につながってしまうのです。

そして、一時的に「分かったふり」してやりやり過ごすと、次回、その約束・注意は守られることがないため、あの子は「ふざけている」「やる気がない」「ウソをつく」というレッテルが貼られてしまうことになります。

想像力が足りないとどうなるか

世の中には「どうしてそんな馬鹿なことをしたのか」と思わざるを得ないような事件がたくさんあります。この背景にあるのは「後先を考える力=想像力の弱さ」です。

見えないもの想像する力がないので「時間」の概念もわからず、せいぜい「3日間ぐらいの世界」で生きている子もいます。これでは、夢を持ち、先を見通し計画を立て前向きに努力することもできません。「その時が良ければいい」という考えで動くことになります。故、認知機能が弱い非行少年は、矯正教育を行うことも極めて大変です。

また、犯罪を犯したら自分がどうなるか、被害者がどのように苦悩するかも想像できません。これではとても被害者遺族への謝罪などできるはずがありません。

融通が利かない

我々は、何か困ったことがあれば、解決案を考え、実行し解決を目指します。上手くいかなければ他の選択肢を選び直し、再度実行します。ここで大事なのは、「解決案のバリエーション」と状況に応じて適切に選択肢を決める「融通を利かせる力」です。

しかし、想像力が低いと解決策がいくつも出てくることはありません。結果、一つの考えに固執、つまり、融通が利かなくなります。

では、この選択肢がそもそも適切な策でなかったらどうでしょう。これが不適切な行動を繰り返してしまうことにつながってしまうのです。

犯罪者を減らし国力を上げるには、学校教育の変革が必須

【書評/要約】ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治 著)(★5):犯罪者を減らし国力を上げるには、学校教育の変革が必須

もし、親が「境界知能」で世界が歪んで見えていると気が付かなければ、次に発見の場となるのは「教育現場」です。しかし、現在の教育現場においては、「境界知能」の子供たちを救い出すことができていません。
このことが、日本の国力低下、不幸の連鎖にもつながっています。

大人になった境界知能者に待つ社会

問題を抱えた児童・生徒も、学校に行っている間は、先生が目をかけてくれる可能性があります。しかし、卒業して社会に出れば、もう誰も目をかけてくれません。

彼らは見た目には普通の健常者です。社会ではより要求度の高い仕事を与えられ、失敗すると責任を取らされたり、給料減額になります。すると、現状を克服する力がそもそも低いために、嫌になって仕事を辞め、職を転々した結果、何もかもうまくいかずにひきこもりになったりします。

彼ら自身、自分が境界知能とは思っていないため、自分から支援を求めることはありません。また、支援を求めたとしても、公的に障害を持っていると認定されるわけでもありません。

結果、金銭的に、精神的両方の面から、社会の隅に追いやられ、追い詰められ、最悪の場合、犯罪を起こしてしまうことにもなるのです。刑務所の中には、このような境遇をたどった人がたくさんいます。

「生きにくさ」。それが犯罪へとつながってしまうのです。

違いが出るのは予期せぬ事態が起きたとき

軽度知的障害や境界知能をもった人たちは、見た目は健常者と同じです。大きな違いが出るのは、何か困ったことが生じた時です。

いつもやっていることならいいのですが、いつもと違ったことや初めての場面に遭遇すると、想像力が不足、さらに、融通もっかないため、柔軟に対処できません。どう対応していいか分からず思考が固まってしまいます。

例えば、「育児」は予期できないことの繰り返しです。結果、パニックから幼児虐待育児放棄につながってしまうこともあるのです。虐待を受けた子供も、犯罪率が高いことは知られています。このようにして、不幸や犯罪が次の世代にも連鎖してしまうのです。

犯罪者を納税者に:犯罪者一人で年間400万円の損失

現在、刑務所にいる受刑者を一人養うのに、施設運営費や人件費を含め年間約300万円かかるという試算があるそうです。もし、その受刑者の中の一人でも健全な納税者に変えられたなら、大きな経済効果があります。平均的な勤労者の場合、消費税なども考慮すると、大雑把に計算して一人当たり年間100万円程度は何らかの形で税金を納めていますので、一人の受刑者を納税者に変えればおよそ400万円の経済効果につながります。

犯罪者を減らせれば国力も上がる

では、日本全体で、実際どのぐらいの損失が生まれているのか?

刑事施設の収容人員は平成29年末では56,000人。単純計算で年間2240億円の損失が生まれていることになります。

被害者の損失額を含めれば、さらに大きな損失額となります。著者は、財産犯だけでも、およそ2000億円の被害額とされています。これに殺人や傷害、性的暴行などの被害額を併せると、年間の犯罪者による損害額は年間5000億円を下らないと著者は指摘します。

いかに犯罪者を減らすことが日本の国力を上げるために重要か。その損失額を知れば、ご理解いただけるのではないでしょうか。

そのために社会ができることは、「困っている子ども」の早期発見と支援です。それに最も効率的に支援できるのは、子どもたちが毎日通い、かつかなりの時間を過ごしている学校以外ありません。

褒める教育だけでは問題は解決しない

では、現在の教育現場の実態はどうでしょうか?

学校では、問題のある生徒に対して、反省を促すと同時に、彼らに自信をつけさせてあげるという観点から「褒める教育」が行われることがあります。

苦手なこと克服する指導では、さらに子供の自信をなくさせる結果になることも多いので、得意なところを見つけて伸ばす、いいところを褒めるという教育です。確かに、この方法は、多くの児童には効果があるかもしれません。

しかし、境界知能の児童の場合は、問題の先送りにしかなりません。

そもそも、「当少年は自尊感情が低い」と言われますが、問題は「自尊感情が低い」ことではなく「自尊感情が実情と乖離している」ことにあります。何もできないのにえらく自信をもっている。逆に何でもできるのに全然自信がもてない。要は、等身大の自分を分かっていないことから問題が生じるのです。

この大問題の改善のためにも、世界が歪んで見える子たちの実態を社会全体で共有し、見る、聞くといった力に問題がないかを確認することで、彼らを早期に発見してあげることが非常に大事です。新たな視点をもった学校教育が充実が望まれます。

最後に

今回は、宮口幸治さんの著書「ケーキの切れない非行少年たち」からの気づき・学びを書評としてまとめました。

日本から犯罪、そして、不幸をなくすためにも、是非、多くの人にこの本を読んでいただきたいと切に思います。

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マンガ版(全5冊)もあるので、新書が苦手というかたも、是非、マンガを通じて、その実態を学んでほしいです。