【書評/要約】自閉症の僕が飛び跳ねる理由(東田 直樹 著)(★5) コミュ・自己表現について多くの気づき。胸打つ1冊

重度の自閉症である東田直樹さん。

自分の衝動を抑えることもできず、人とまともに会話することもできない。しかし、ひとたび文字盤を使えば並外れた豊かな表現力で自分の気持ちを表現する。そして、驚くほど、人の心を揺り動かし、人の心を打つ。

本書は、自閉症や自閉症の家族を持ち、悩む方への「光」となるだけではありません。

コミュニケーションに悩みを持つ普通の人たちにも、「あの言葉にならないもどかしさは何なのか」といった自分ではうまく言語化できない悩みに気づきを与えてくれるのと同時に、自分がいかに「自己を表現すること」に対して何も考えてこなかったかを教えられます。

人生観や世界の見方を変えさせられる一冊です。今回は、東田直樹さんの著書「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」からの気づきを書評として紹介します。

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12月11日 01:59まで

自己表現とは何か。心を打つ言葉の数々

【書評/要約】自閉症の僕が飛び跳ねる理由(東田 直樹 著):自己表現

通常、重度の自閉症の正直な気持ちに耳を傾けることは難しいと言われます。それは、健常者が彼らの意をくみ取りたくて問いかけても、彼らはうまく気持ちを表現できないからです。

しかし、東田直樹さんは文字盤を前に、自閉症者の気持ちを代弁する。

家族に自閉症者を持つ方々は、うまくコミュニケーションが取れずに、心を痛めています。それ故、東田さんの著書は、自閉症の子供を持つ多くの人に希望を与えました。子どもが何を考えているわからず、途方に暮れていた人たちが、自分の子供に備わった愛情や知性を信じられるようになったのです。本書は30カ国以上で翻訳され、多くの方々の救いとなっています。

しかし、影響を与えるのは、自閉症やその家族に対してだけではありません。健常者に対しても多くの気づき、さらに、自分が健常者として生まれたことがいかに幸福であるかを再認識させてくれます。

本書では、健常者が自閉症の方に聞きたいこと58の質問に代弁。当事者にしかわからない素直な回答の一言一言は、多くの人の胸を打ちます。そして、その言葉の中に、私たちがいつもモヤモヤして言葉にならないことに対するヒントがあります。

以下では、そのいくつかを取り上げ紹介します。

人とうまく話せない人へのアドバイス

【書評/要約】自閉症の僕が飛び跳ねる理由(東田 直樹 著):人とうまく話せない人へのアドバイス

なぜ、同じことを繰り返す?なぜ、うまく会話できない?

自閉症の方は、よくオウム返しをしてしまうそうです。そして、すぐに返事ができないそうです。
それは、普通の人は、頭で考えて、言葉が口から出るまでが、ほんの一瞬です。しかし、東田さんはそれができないと言います。

僕たちは、脳の神経回路のどこかで異常が起きているのでしょうか?
僕たちが話を聞いて話を始めるまで、ものすごく時間がかかります。時間がかかるのは、相手の言っていることが分からないからではありません。相手が話をしてくれて、自分が答えようとする時に、自分の言いたいことが頭の中から消えてしまうのです。
僕たちは、まるで言葉の洪水に溺れるように、ただおろおろするばかりなのです。
思いはみんなと同じなのに、それを伝える方法が見つからないのです。
僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて、じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、まるで不良品のロボットを運転しているようなものなのです。

普通に対人コミュニケーションができる人も、苦手な人を相手にすると、頭が回らず、言葉がどもって出てこないことがあります。しかし、この状況を説明せよと言われたら、説明できません。そんなときの自分がどんな状態なのかを知るヒントになる言葉ではないでしょうか。

客観的に自分を見ることができると、少し、落ち着いて、人とコミュニケーションができるはずです。

なぜ、自分を見て話してくれない?

健常者は「目を見る」ことで、相手が自分の話をしっかり聞いてくれていると感じます。普通、話の際に、首をあちこちに動かされてしまうと、「どうして話すときに目を見てくれないのだろう」「話しているとき、どこを見ているのだろうか」と思います。

しかし、自閉症の方は、対面で目を見ながら話すことが難しい。「なぜ、自分を見て話してくれない?」との問いに対し、東田さんは以下のように答えます。

みんなにはきっと、下を見ているとか、相手の後ろを見ていると思われているのでしょう。僕らがみているものは、人の声なのです。
声は見えるものではありませんが、僕らは全ての感覚器官を使って話を聞こうとするのです。

東田さんの場合は、真剣に耳をそばだてようとすると、目に映っているものが意識できなくなってしまうといいます。そのため、全ての感覚器官を使うことで声を見る。彼は目を合わせないことで、相手の話を必死に聞こうとしているのです。

この言葉を聞いて、自分は真剣に人の話を聞いていいただろうかと気づかされました。

真剣に聞いているかどうか、どのぐらい心を寄せてい相手と向き合っているかは、知らず知らず態度に出ます。相手に対するぞんざいな態度がにじみ出ていたとしたら…. 自分の態度が、人を遠ざけ、その結果、コミュニケーション下手になっていることもあります。注意したいですね。

悩みが多く行動できない人へのアドバイス

【書評/要約】自閉症の僕が飛び跳ねる理由(東田 直樹 著):悩みが多く行動できない人へのアドバイス

気持ちの折り合をつけるとはどういうことか?

あなたは「気持ちに折り合いをつける」ということを、言葉で説明できるでしょうか?
東田さんは以下のように説明します。

したいことも、しなければならないことも、すぐに行動できないことがあります。やりたくない訳ではないのです。気持ちの折り合いがつかないのです。
何かひとつのことをやるにしても、僕は、みんなのようにスムーズに物事に取り掛かることができません。
気持ちに折り合いをつけるということは、どんな作業か説明します。

まず、何をやるのか考えます。
次に、自分がそれをどうやるのかイメージします。
そして最後に、自分で自分を励ますのです。

この作業が 上手くいくかどうかで、スムーズに行動できるか、できないかが決まってきます。

自分がやりたいと思っても、体がゆうことを聞かないと悩んでいる人は多いと思います。そんな人は、藤田さんの2つめのステップ「自分がそれをどうやるのかイメージする」ができていません、

伊庭 正康さんの著書「結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる」は、粘り強くやり続けて成功をつかむためのアドバイス本ですが、その中に、感情が邪魔をして「問題」と「課題」がごちゃ混ぜになって区別できない⇒動けない人が多いという記述がありました。

気持ちに折り合いをつけて前に進むとは、【感情はいったん脇において、「問題」「課題」「対策」を考えること】です。問題解決が苦手で悩みばかり考えている人は、大体、このパターンに陥っています

最後に

今回は、東田直樹さんの「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」を紹介しました。
非常に、胸を打たれる本です。「ダメな自分への喝入れ」にも大いに役立ちます。是非、多くの人に読んでいただきたいです。