【書評/要約】99%の日本人がわかっていない国債の真実(高橋洋一 著)(★4) 「国債発行=悪」は無知の極み。日本経済の「本当の実力」を知れ!

国の借金「国債」。国が破綻しないか心配だけど、国債なんてよくわからないし、自分とは縁がない。

そう思っている人は多いかもしれません。

しかし、それは全くの誤り。国債の真実」を知ることが、日本経済の「本当の実力」を知ることにつながり、「投資」に強くなることにつながります。

株式投資に比べて情報が少なく、また投資モチベーションが湧きにくい「国債」ですが、昨今のインフレで、個人向け国債 変動型10年満期の金利は年率0.6%まで上昇してきています。

日本国債への投資を検討するに当たって、改めて国債の勉強を…と思い読んでみたのが、高橋洋一さんの「99%の日本人がわかっていない国債の真実」です。

今回は、まず、押さえておきたい「国債のキホン」と「国債の真実」について、学びの一部紹介します。

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そもそも「国債」とは何か

【書評/要約】99%の日本人がわかっていない国債の真実(高橋洋一 著):国債とは何か

国は、財政支出の不足分を国債による収入で賄っています。これは国の借金です。国家運営に必要な国家予算に足りない分を、国債で補っています。まずは、国債と国家予算・お金の流れについて押さえましょう。

国債を発行でお金はどう巡るか

政府が国債を発行するとどうなるか?ここで登場するプレイヤーは、「政府」「日銀」「民間金融機関」の3者です。

国債が発行された後の流れは以下の通り。この流れにより、世の中にお金がより多く出回ることになります。

政府が国債を発行すると…

❶政府が国債を発行
❷民間金融機関が政府から発行された国債を購入 ※お金の流通量が増加
❸日銀が民間金融機関から国債を買い取って引き受け=買いオペ(量的緩和)
❹日銀は、民間金融機関が日銀にもつ「日銀当座預金」に代金(日銀券)を振込
↓ 満期償還を迎えると…
❺政府は、国債の利息を国債保有者に支払い
❺日銀は、国債購入の利子収入(通貨発行益)を「個々納付金」として政府に収める
※国債は政府にとっては「負債」、日銀・民間金融機関にとっては「資産」
※日銀券は、日銀にとって「負債」

民間金融機関にとって国債は「もっておきたい債券」

中央銀行である日銀は、上記方法で世に出回るお金の量をコントロールしています。

また、政府と日銀は親子関係です(政府が日銀の55%の株式を保有)。国債の利子のうち、日銀への支払い分は、まるまる「国庫納付金」として、再び政府に収められて、「税外収入」として、還流します。

一方、民間金融機関にとって、国債は「もっておきたい債券」です。なぜなら、現金で資産を持つより国債を持つ方が利息が発生し儲かるからです。故、国債の満期きて償還したら、また、新しく国債を購入します。国債より、社債や株式の方がハイリスク・ハイリターンです。破綻リスクという意味でも、民間企業に貸すより、国に貸す方がはるかに信用できます。

政府は、償還すると同時に新発国債を買ってもらえるのだから、借金の返済で首が回らない、という事態にも陥りません。国債を償還するたびに新発債で借り換えるのは、永久債を発行しているのと、じつはあまり変わりません。

日銀が国債を買うと「円安」になる

金融緩和策とは、上記のような方法で世の中に出回るお金を増やそうとする試みです。出回るお金が増えれば、相対的に1円の価値は薄まります。結果、金融緩和は「円安」を促します。

ただし、為替、例えば「ドル円のレート」は、あくまで、「通貨の量の比率」で決まります。日・米どちらもお金をジャブジャブすれば、刷っている方が多い方向に「●安」が進みます。

世にはびこる国債のエセ知識――その思い込みが危ない

【書評/要約】99%の日本人がわかっていない国債の真実(高橋洋一 著):世にはびこる国債のエセ知識

「個人の借金」と「国の借金」は違う

「借りたものを返す」は世の中の道理。政府も返済しなければ、デフォルト(債務不履行)となり、国債は暴落し、国民経済は大変なことになります。

しかし、「国債」を「個人の借金」と同じように悪者扱いしてしまうと、その本質を大きく見誤ります。

なぜなら、国家運営に必要なお金が足りないからと緊縮財政にすると、その分、企業活動の規模が縮小する⇒経済が悪化につながるからです。足りない分を増税で賄っても、国民はお金を使わなくなります。つまり、政府が「倹約」「増税」すると、いずれにしても経済が悪くなり、給料減・失業など、国民もお金に苦しむことになります。

故、高橋さんは「国債は借金だからダメ」というのは、「緊縮財政になって景気が悪くなってもいい」、あるいは「増税されてもいい」といっているのと同じなのだと力説します。

ココで知っておくべきなのは、経済学における「合成の誤謬」です。簡単にいえば、 個人レベルで見れば正しいことでも、同じことをみんながやったら困る、という話です。

個人レベルでは、日々倹約して、借金はせず、お財布のなかにあるお金だけでやりくりするのがベターです。しかし、このような「半径1メートルの思考」で、世の中全体を見てはいけません。民間金融機関も、国債が買えなくなると、最も安全な利息収入がなくなり、商売ができなくなります。金融市場は、利払いのやりとりを通じて、経済を動かしているといえるのです。

日本国債の金利の低さが示すこと

借金は、返済リスクが高い人には、高い金利をつけて貸し出します。これは、国債も同じです。

では、日本国債の金利(リスクプレミアム)はどうか。グローバルで見ても、極めて低金利です。返してくれる=日本の財政は大丈夫という安心感があるからです。これが「日本経済の実力」です。

国債は借金だから全額返す義務があります。しかし、「バランスシートで国の財務状況をみれば、現在の国債発行額には何も問題がない」を示しているのです。

市場ほど明瞭に、世の中の実相を映し出すものはありません。都合のいいことも悪いことも、すべてを織り込みます。そこには、一部の陰謀や忖度などが働く余地はありません。

地政学リスクが起きた時、「有事の円買い」が起こるのも、日本のバランスシートに問題がないことを示しています。

国債発行残高はGDP200%。それでも大丈夫なのか

ただ、そうはいっても、日本の国債発行残高は、だいたいGDPの200%にもぼります。しかし、このうち半分ほどは日銀が保有しており、金融市場に出ているのは、GDPの 50~60%程度です。

負債が何百億にも膨れ上がると、その額ばかりに目が行きです。しかし、大事なのは「莫大な借金があること」ではなく、「借金を返せるだけの資産があるかです。会計学では、バランスシートの負債の総額を「グロス」、負債から資産を引いた額を「ネット」といいますが、見るべきは「ネット」です。つまり、借金に見合うだけの資産があれば問題はありません。「借金」だけを見て、騒いではいけません。

政府と日銀のバランスシートを合体させると、政府の負債である国債と、日銀の資産である国債が相殺され、政府債務は減少します。海外では一国の財務状態を「統合政府バランスシート」で考えるのは「当たり前」です。百歩譲って財政問題があるなら、政府資産を売ればいいのです。

国債発行に悪いイメージをつけている犯人は誰か

【書評/要約】99%の日本人がわかっていない国債の真実(高橋洋一 著):国債発行に悪いイメージをつけている犯人は誰か

犯人は「財務省」

国債発行を悪者扱いしている筆頭は「財務省」です。理由は「増税したい」からです。財務省的には、「日本の財政は火の車」に見えた方が増税できてうれしいのです。

増税すると財務省の予算権限が増えて、各省に対して恩が売れて、各省所管の法人への役人の天下り先の確保につながるからです。

先に「合成の誤謬」で触れたように、マクロ経済は「道徳」で考えると見誤ります。この「個人の真面目さ・道徳心につけこむのは、財務省のもっとも得意とするところだ」と高橋さんは指摘します。

国の借金は、広く世の中にお金を回すための借金で、むやみに「歳出カット」してはいけません。だからこそ、世の中にもっとお金が回ったほうがいいときには、「財政政策」と「日銀が民間金融機関から国債を買う」という「金融政策」の「2つの合わせ技」で、インフレになりすぎない程度に国債を発行することが大事なのです。

災害復興こそ 「超・長期国債」の出番だった

国債を毛嫌いすると、「財源が必要なら増税すべし」というロジックに簡単にはまってしまいます。 

東日本大震災後の2014年の消費増税などはその典型です。財源確保に当たって「国民全体で痛みを分け合うべく、増税を断行」という財務省ロジックが勝利しました。しかし、増税すれば、景気が落ち込みます。本当に災害復興を目指すなら、超・長期国債を発行するのが、もっとも効果的だったはずだと、高橋さんは指摘します。

経済を大きく揺るがすほどの大災害が起こるのは、100年に一度、500年に一度です。災害が起こった世代だけで復興財源を出そうとする方が「不公平」です。100年と言った具合に世代を超えて復興財源を出し合う方が、「課税の平準化」にも合致します。一国債なら買いたい人が買えばいい話です。

教育財源は「こども保険」より「教育国債」だった

同じく財務省ロジックで増税が進むのが「こども保険」です。こちらも、「増税」といわず「保険」「ツケを将来に回さない」という体のいい言葉で、すり替えが起こっています。

確かに、教育に投資しないと国民の所得上がらず、国も衰退します。教育への投資は、将来的に最大の利益をもたらします。しかし、これも災害復興同様、「教育国債」とされるべきであったと高橋さんは指摘します。

本来、保険は、不慮の事故・病気・失業など、「万一」に備えて、保険料を出し合いサポートし合う仕組みで、国民の生活には必要です。しかし、「こども保険」の場合、「事故」とは「子供が生まれること」であり、「万一のサポート」というには無理があります。また、「保険料を取られるだけの層」が出てきます。つまり、教育と保険は性質的に合わないのです。

債務負債をわざと大きく見せる財務省

政府の負債を大きくしたい(見せたい)がために、財務省は通常の感覚からすると、ちょっと信じられないことまでしていると高橋さんは指摘します。それが「債務償還費」と「利払い費等」など「歳出のカサ増し」です。

本来必要のない費用までカサ増すれば、余計な国債発行で、余計な利払いも増えます。これは、借金する必要がないのに借金しているのと同じです。ここの部分の詳細は省きますが、是非、本書でご確認ください。

最後に

今回は、高橋洋一さんの「99%の日本人がわかっていない国債の真実」からの学びを一部紹介しました。

なお、本書の最終章(5章)『「国債」が分かれば「投資」も分かる――銀行に預けるくらいなら国債を買え』では、具体的な国債の選び方、買い方、国債の金利と価格の関係などについてまとめられていますが、割愛しています。

より実際の投資についての知識を学びたい方は、是非、本書にて確認してみてください。