【書評/要約】護られなかった者たちへ(中山七里 著)(★5) 生活保護の闇... 貧乏は不幸・犯罪など悲劇を生む。映画より原作の方が泣ける
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貧乏ってのはありとあらゆる犯罪を生むんだ。

上記言葉は、日本の社会問題に警鐘を鳴らす、中山七里さんの小説「護られなかった者たちへ」の中の発言。

本作が取り上げるテーマは、「生活保護の実態と貧困」。

護られてしかるべき人が護られず、切り捨てられてしまったことで悲しく悲惨な死を迎えたことから始まる悲劇の物語。そして、最後の最後にどんでん返しに、さらに涙…

読んでいて、とにかく心が痛い。貧困というものがいかに、人を不幸たらしめるかを、これでもかと見せつけられます。映画化もされましたが、原作の方が泣けます。

2022年の今、急激に物価高が進んでおり、日本人の貧困に拍車がかかっています。貧困は何をもたらすか、再認識するためにも読んでおきたい小説です。

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護られなかった者たちへ:あらすじ

舞台は、東日本大地震から9年後の仙台。

全身を縛られたまま“餓死”させられるという不可解な連続殺人事件が発生。
第一の被害者は、仙台市内の保健福祉センターの元課長の三雲忠勝。
そして、第二の被害者は同じ保健福祉事務所の元所長の城之内猛。
それぞれ、善人、人格者と言われた人たちだった。

捜査線上に浮かび上がったのは、過去に起こした事件で服役し、出所したばかりの利根泰久
刑事の笘篠は利根を追い詰めていくものの、決定的な確証はつかめない。

なぜ、利根の過去に何があったのか?こんな無残な殺し方をするに至った理由はなんなのか…

やがて事件の裏に隠された、切なくも衝撃の真実が明らかになってい…

ストーリーの概要を知るには、上記映画紹介動画を見るのが最も早い。
上記動画だけでも、胸が苦しくなります。しかし、本作で描かれる貧困の実態は、これ以上に、人の心を締め締め付けます。

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護られなかった者たちへ:感想

護られなかった者たちへ:感想

作品全体を通じて、非常に重たいテーマです。フィクションですが、現実に同じような事件が起こっても不思議ではないと思えるような内容です。
以下、さらなるネタバレを含むので、まずは作品を楽しみたい方は読まないでください。

映画より小説の方が壮絶。そして、涙

本作は映画でご覧になった人が多いと思います。しかし、映画は尺の都合、どうしても原作の大事なシーンをカットせざるを得ないため、貧困の壮絶さ、事件の悲惨が簡略化されて描かれてしまいます。

私が原作本で最も涙が止まらなかったシーン(遠島けいが餓死に至る壮絶な貧困生活)は描かれていませんでした。また、以下も原作と映画では異なります。

映画と原作の大きな違い

・カンちゃんは、映画では女性。原作では男性!
・けいさんの自宅に残されていた「遺言ともいえるメッセージ」
・不正の暴かれ方
・カンちゃんが最後に発したメッセージと、そのメッセージが生活保護行政・世間に与えた影響
・ラストシーンの終わり方

ラストシーンで描かれた利根と笘篠刑事のやり取りは映画オリジナルでこれはこれでよかったですが、「その他の部分は原作小説の方が優る」というのが私の感想です。

映画しか見ていない方は、是非、原作小説を読んでほしいです。

生活保護の闇

連続殺事件発生の発端は、疑似家族ながらも心が通う家族であった、遠島けいの餓死

東日本大震災という災害を通じて出会った疑似家族でしたが、3人の間には、皆を護り合おうとするつながりがありました。

けいおばあちゃんの貧困は目に余るものがあり、生活保護を求めて複数回にわたって、保健福祉課を訪れ、申請を試みるも、証明が難しい申請内容につまずき、生活保護で守られることはありませんでした。もし、けいおばあちゃんに行政からの真っ当な社会保障が施されていたら…. けいおばあちゃんの壮絶な貧困、餓死は起こらなかったはずです。

しかし、社会保障費の予算不足を背景とする福祉保健事務所職員の行き過ぎた水際作戦(申請の却下)、さらには、生活保護費が少ない方が自治体としては優秀とみなされてしまう行政の闇(行政というタテ社会の中での、地方公務員の上層組織への忖度)も相まって、不幸な結果を招きます。

完全にネタバレになりますが、以下が顛末です。疑似家族3人は、それぞれが相手を護ろうと努めました。

円山は護れなかった遠島けいのために己を賭して復讐を実行した。
利根は弟分である円山を護るために八年間の刑務所生活を過ごした。
事と次第によってはその後の人生までフイにしかねなかった。
遠島けいは飢えで薄れていく意識の中、最後まで自分の息子たちを護ろうとした。
皆、自分の護るべきものを必死に護ろうとした。
運命の転び方で、その結果が犯罪になったかどうかの違いだけだ。

諸悪の根源は「貧困」

生活保護には、
・不正受給
・社会保障費問題
をはじめ、様々な問題を抱えています。

行政側の立場に立てば、どんなに真っ当な対応をしても、申請を却下すれば、逆恨みされます。

生活保護問題も、諸悪の根源は「貧困」です。「貧しさ」が最大の問題です。

貧乏な人間全員が犯罪者になる訳じゃない。犯罪に走るかどうかは別の要因であり、「殺人」自体を容認することはできません。しかし、貧困者の犯罪が多いのは事実。「貧困」は様々な問題を引き起こし、人を不幸にします。

小説の中には、生活保護を求める困窮者と職員のやり取りがいろいろ出てきます。これを読んでいるといろいろ考えさせられます。貧困は家族を不幸にし、そして、多くの犯罪を生みます。社会に様々な軋轢を生みます。

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宮口幸治さんの著書「ケーキの切れない非行少年たち」には、「大雑把な計算で一人の受刑者を納税者に変えられれば、ばおよそ400万円の経済効果。刑事事件を起こした受刑者が納税者に変えることができれば、単純計算で年間2240億円分、国力がUP。被害額も合わせれば、年間の犯罪者による損害額は年間5000億円がなくなる」といったような内容がありました(詳細は以下書評で)。

非行少年たちの一部も、幼少期に「護られなかった者たち」。護られなかった結果、人生にわたって、貧困・犯罪から離れることができなかった者たちがたくさんいます。

改めて、貧困とは、非常に根深い、問題だと改めて実感させられます。

最後に

今回は、中山七里さんの小説「護られなかった者たちへ」を紹介しました。

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資本主義下においては、格差は広がることはあっても、縮まることはありません。そして、今、日本全体が下流社会へ向かっています。貧困が増えれば、社会も荒みます…
是非、これからの社会を考えながら、小説を読んでみてください。