【書評/要約】言いにくいことが言えるようになる伝え方(平木典子 著)(★4)自分も相手も大切に。アサーションで人生変わる

自分の「思い」を伝えるというのはむずかしいものです。特に、言いにくいことを伝えることは難しく、結果、いつも我慢してしまっている人は多いのではないでしょうか。

アサーションとは、「自分の言いたいことを大切にして表現する」と同時に、「相手が伝えたいことも大切にして理解しようとする」コミュニケーションです。 「どちらの主張が正しいか」ではなく、「対話を通して何がわかり合えるか」を受け止め合います。

現代には、いつも自分を押し殺して生きているため「ありのままの自分」が分からなくなっている人も少なくありませんが、アサーションは自分との対話を通じて、自分に気づき、より人生を幸せに生きるためにも役立ちます。

今回は、平木典子さんの本「言いにくいことが言えるようになる伝え方」からの学びを紹介します。

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言いたいことを我慢していないか?

【書評/要約】言いにくいことが言えるようになる伝え方(平木典子 著):言いたいことをがまんしていないか?

仕事の現場における「仕方ない」「しょうがない」。「仕方ない」は我慢です。日本の組織には、自分の本音にフタをし続けた結果、「我慢していることすら気づかない人」が蔓延しています。これは非常に大きな問題です。

我慢があふれる日本社会

能力のある人ほど、「やろうと思えばできる」ため、「無意識の我慢」を貯めがちです。他人から頼りにされると、自信もつくので、疲労がたまっていてもそれを受けようとします。この積み重ねは「ノーが言えない人」まっしぐら。いくら仕事ができても、我慢体質で自分を苦しめることになります。

我慢の果てに突然キレる

あの人が!という人が、突然「キレる」ことがあります。我慢による不満が「なぜ、俺はこんな苦しまなくてはいけないんだ」という怒りに変わり、自分の行動を制御できなくなった状態です。

八つ当たりもうつも【「どうしたいか」よりも「するべき」で動き続けた】ことが原因です。感情(右脳)押し殺し、ルール(左脳)を優先し続けた結果です。

制御不能に陥る前に、我慢に気づき、自分の本当の「思い」に意識を向けることが大事です。

なぜ、言いたいことが言えないのか

【書評/要約】言いにくいことが言えるようになる伝え方(平木典子 著):言いたいことを我慢していないか

なぜ言いたいことが言えないのか。それは、私たちは「社会」という枠組みの中で生きており、それほど自由ではないからです。

社会で生きている

社会は、人類が生き延びるために試行錯誤して積み上げた知恵・ルールの結晶です。しかし、その知恵は必ずしも、すべての人やどの時代にも合うとは限りません。

社会の中で、つまはじきに合わない簡単な方法が「我慢」です。しかし、人・組織・社会から受け入れてもらいたいがために、相手に合わせ、我慢を重ねる関係は、長続きする深い関係に発展することはありません。仕事なら辛すぎて退職を余儀なくされるか、ストレスでつぶれます。相手を配慮したつもりが、皮肉にも、相手まかせの関係となり、自分を苦しめます。

脳と心のメカニズム:左脳が感情を抑制

右脳は感情、左脳は論理を司りますが、成長に伴い、右脳の感じる「思い」を左脳でを抑えるようになります。

小さな子供は親に泣いたりぐずったりして「自分の思い」を伝えますが、徐々に気持ちを抑えることを学習。学校等の集団に属するようになると、「人と同じ」であることに安心感を感じ、「違うこと」に不安を感じ、感情を押し殺すようになります。確かに、社会で生きるには感情コントロールは必要ですが、「自分の思い」を押し殺し過ぎても幸せになれません。

大雑把な言葉遣いが、細やかな感情見えなくする

現代は、自分のことが分からない人で溢れています。この、自分の「思い」を見えなくしている事象の一つが、ヤバイ & 絵文字に代表される、「大雑把な言葉遣い」です。

常にこのような大雑把な言葉遣いをしていると、言葉の表現力が衰えて、細やかな感情を表現することも、相手の感情を理解する力も衰えてしまいます。

自分自身が無意識に感じている複雑な感情を自覚し、相手にも理解してもらえるように伝えるには、日頃から細やかなニュアンスを持った言葉を使って、感情表現を試みることが必要です。

【実践】アサーション第一歩:「自分の思い」を知る

【書評/要約】言いにくいことが言えるようになる伝え方(平木典子 著):アサーションで「思い」に気づき、自然体に生きる

常識にとらわれず、自分も我慢しない、相手にも我慢させない―。これは、お互いを大切にする「アサーションの基本姿勢」です。

他人とうまくやるために自己を改造することではありません。ましてや、自分の都合のいいように相手を動かす技術でもありません。「人間関係をどうするか」ではなく、「どう関係性をつくって生きるか」を大事にします。

自己表現の3つのタイプ

人との関係は、どのように自己表現するかで大きく変わります。

❶攻撃的自己表現自分の思いや頼み事を相手に命令したり押しつけたりして、自分の思い通りに相手を動かそうとするやり方。
相手が自分の思い通りに動くことだけ考えて動く点で、依存的な態度・表現
❷非主張的自己表現自分の考えや気持ちを言わず、言いたくても自分を抑え、結果的に相手の言うことを聞き入れてしまうやり方。
互いを大切にしていない関係性をつくるだけでなく、依存性も高い
❸アサーティブな自己表現立場や役割を大切にしながらも、互いを一人の人間として大切にするやり方。
目指すべき表現

自分に気づくが、最初の一歩

目指すべきは「アサーティブな自己表現」は、実は、相手ではなく、「ありのままの自分の気持ちや考えをつかむ」ことから始まります。

何がしたいか、何に関心があるか、何が大切か など、自分を理解しない限り、相手との相違点もわかりません。自分がわかることで、相手の事情・相手の立場を鑑みることができます。そして、お互いを尊重して、歩み寄る姿勢につながっていくのです。

自分との対話により、自分ができないこと、思いと異なることが明確になれば、「できることは引き受け、できないことは引き受けない」という姿勢を明確化できます。そして、これが、「自己信頼」にもつながり、人に意見する勇気にもつながります。

常識はあくまで基準

常識は、私たちが安心して人と付き合う「大まかな基準」であり、自分に合うとは限りません。人は個性があってこそ、自分らしい生き方ができます。常識を疑う姿勢を持ち、「誰にとってもそうか?」と考えるようになれば、互いに「その人の生き方」としてベスト解は何かを考え、問題に対峙できます。

そもそも、自分が大事と思っていることも、実は、他人からの刷り込みが置き換わっているものであることが少なくありません。 。自分らしさを失わないためにも、感情・好奇心を大事にしましょう。

【実践】アサーティブに「思い」を伝える

【書評/要約】言いにくいことが言えるようになる伝え方(平木典子 著):言いたいことを我慢していないか

人それぞれ、ものの見方や意見は異なります。「不一致はあり得る」と認識を改めることが大事です。多様性を認めることです。

コミュニケーションは取引ではない

「アサーション」と「Win-Winの関係」。どちらも相手のことを考える姿勢がありますが、根本がまるで異なります。

Win-Winコミュニケーションが「取引」
勝ち負け前提にあり、互いに「相手も自分も勝つ(利益を得る)」ことを目指す
アサーション勝ち負けという考えはしない。
大事にするのは勝ち負け・妥協ではなく、相手へのリスペクト。お互い様の関係

「No」の伝え方

「自分の思い」を犠牲にしてしまう「我慢」。我慢は、相手とお互い様の関係構築を阻害します。互いの距離も縮まりません。

意に沿わないときに大事なのは、「断り方」です。上手な断り方を知ることです。

上手な断り方

・断るときはいきなり「ノー」と言わない
・怒りの前の「困っている」気持ちを伝える
・自分を守る怒りは、貯めずに小出しにする
・「怒っています」とおだやかに言う

断る前に「考えてみます」先に言えば、相手もある程度気持ちを察してくれるかもしれません。

「怒り」の感情の前には、「困った」「がっかり」などの感情があります。怒りが爆発する前に、小出しで伝えるのです。怒る手前で自分の感情をキャッチして静かにその思いを伝えれば、相手が応じてくれる可能性は高くなります。また、静かに「私は怒っています」と伝えれば、大きな衝突も避けられるかもしれません。

「嫉妬心」をコントロールする

「怒り」と共に厄介な感情の一つが「嫉妬」です。 嫉妬は、元をたどれば「羨ましい」「自分もそうなりたい」という感情です。

自分が嫉妬心で苦しまないためには、素直に相手をリスペクトし「凄い!」と称賛の一言を伝えればいいのです。これで、自分の心を悩ます「嫉妬心」は抑えられます。

相手を褒める人は愛されていませんか?自分の心を悩ませないばかりか、助けてもらえる関係を手に入れられます。

ケンカを泥沼化させないためには

時にはお互いが気持ちを吐き出した結果、「ケンカ」になることもあります。このような時は、自分の言い分をわからせようと焦らないで、少し立ち止まることです。

我慢して聞き入れるのではなく、まず、相手の言い分に耳を傾ける――。我先にと言い分を主張し合えば、言葉の応酬となり、ケンカは泥沼化します。「あなたは何を言いたいのか?」→「言いたいことはわかった」→「では、私はこう言いたい」と、一呼吸おきながら話を進めましょう。

ケンカが堂々巡りの様相を呈してきたら、「タイム」を設けることも大事です。状況を客観的に振り返り、感情的にならずに考える時間ができます。

「思い」を大切にするとは、自分に正直に生きること

【書評/要約】言いにくいことが言えるようになる伝え方(平木典子 著):言いたいことを我慢していないか

我慢に「自己資源」「人生」を使う生き方はやめましょう。

自分のやりたいことに「社会のためになること」を見つける

自分自身の「思い」を大切にして正直に生きれば、もっと、有意義な人生が送れます。特に、「自分のやりたいことが、結果的に社会にとって意味になる生き方」は理想です。

「社会にとって意味がある」というと、とても「崇高なこと」を目指さなくてはいけないように思われますが、崇高である必要はありません。自分がやりたいことと人に喜ばれることの接点を、身近なものの中から探し出して見つければいいのです。ニッチでも、些細なことでも、「誰かの役に立つかも」なことをは自分を支えてくれます。

「ありのままの自分」を知り、成長させていく

アサーションの一歩は、「ありのままの自分を知ること」です。自分を知るには「人との関わり合い」が不可欠です。いろんな人々に出会い、かかわることで、自分の特徴、できることできないことなどが見えてくるからです。

自分の不十分なところも、いいところも公平に認めて、その特徴を自分らしさとして育てていく。その成長の試みを経て、「ありのままの自分」はいくらでも変わり、成長させることができます。

最後に

今回は、、平木典子さんの本「言いにくいことが言えるようになる伝え方」からの学びを紹介しました。

本書を通じて、私が最も大切であると思ったのは、タイトル「言いにくいことが言えるようになる技(テクニック)」が大事なのではなく、「最初に、自分の思いや、できること/できないことなど、ありのままの自分を知ることが、結果的に、相手へのリスペクトや自分の自信につながり、よい人間関係の構築につながっていく」という学びです。

よりよい人生は、テクニックではなく、基礎にあると、改めて認識させられました。