【書評/要約】勉強法の科学(市川 伸一 著)(★) 記憶・モチベーションのメカニズムを知らない学習は非効率!勉強する前にこれを読め!

何歳になっても「学び」は大事ですが、「勉強の仕方」を教えてもらったことはありますか?

多くの人が勉強の仕方・記憶やモチベーションのメカニズムを知らないが故、非効率な勉強を行い、覚えられない・わからないといったジレンマから「学び嫌い」になっています。

一見ばらばらのものに、なんらかの関係を見いだせば、覚えやすくなる!

今回紹介の「勉強法の科学」は、学びを加速する「学びの根本」がわかる良書。多くの人が自分の勉強のしかたを見直すきっかけとなるはず。もっと若い時に出会えていたら!と思える内容が満載です。

今回は市川 伸一さんの著書「勉強の科学」からの学びを、難しい用語は使わずに、私の言葉で紹介します。

[スポンサーリンク]
Audible 2か月体験無料
聴き放題対象本:おすすめビジネス書・自己啓発書  おすすめ小説

どうすればよく覚えられるのか

【書評/要約】勉強法の科学(市川 伸一 著):どうすればよく覚えられるのか

わたしたち人間は、いったいどれくらいものを覚えることができるか知っていますか?まずは、これを知ることが大事です。大人でもも10歳児も、ほとんど変わりません。

一度にどのぐらい覚えられるか

私たちがパッと見た数字を何個ぐらい覚えられると思いますか?思えられるのはせいぜい7つか8つ程度。この能力「短期記憶」は大人も10才児もほとんど変わりません。

暗記する力は、私たちが一度見たり、聞いたりして覚えていられることは実に少ない。テスト前の一夜漬けの丸暗記が使える知識にならない理由はココにあります。

一方、人間は生まれてから、実にたくさんの経験や知識を記憶しています。一度、意識から消えてしまっても、またあとから思い出すことができます。これが「長期記憶」です。長期記憶の長期貯蔵庫は無限です。しかし、いきなり長期貯蔵庫には入りません。覚えるには反復学習が必要です。

短期記憶に入る情報量を広げる

では、たくさんのことを人が覚えようと思ったとき、単純に何度も反復して覚えるしかないのでしょうか。

短期記憶では、7項目ぐらいの情報しか記憶しかとどめておけませんが、以下のような工夫によって短期記憶に入る情報量を広げることが可能です。

短期記憶に入る情報量を広げる方法

・大きなまとまりをつくる
・意味を理解し、有意味化する
・関連をつかみ、構造化する

大きなまとまりをつくる

1つ目が、大きなまとまりをつくる「チャンク化」です。例えば、適当な11桁の数字09078402404を、090-7840-2404として塊するのもチャンク化。11個の数字を覚えるより、ハイフンで区切り、3つの固まりにした方が覚えやすいですよね。これは、「私たちの短期記憶の中に入るのはチャンクの個数」ということ利用しています。

意味を理解し、有意味化する

私たちが長期記憶化するには、覚えたいものの意味を理解する「意味づけ・解釈」がとても大事です。なぜなら、私たちは、写真やビデオ撮影のように、見たものをそのそのまま覚えているわけではなく、「何らかの意味をそこに見出して覚えようとする」からです。

関連をつかみ、構造化する

ひたすら反復練習では、脳がありません。そこで用いたいのが、「構造化」です。新しく入ってきた情報を関連付けて構造化する(ルールを見出す)方法です。

ここは非常に大事なことですが、これを実行するには、ベースとなる知識がないと、構造が見えてこないし、長く覚えることもできないということです。

なぜ、知識量に圧倒的な差がついてしまうのか

一般に、7~8歳くらいまでの子どもたちは、機械的に反復して覚えます。この年代の子どもは、繰り返しを嫌がらずにやりますし、丸暗記も得意です。10歳ごろから意味や構造を理解したいと思うようになります。さらに、中高と学年が上がると、学ぶ内容は難しくなり、反復・丸暗記だけに頼った学習では追いつかなくなります。

つまり、10歳ぐらいで、「わかりたい」と思い、わからない場合は「なぜこうなるのか」と考えたり聞いたりする学習に切り替わっていかないと、学力は伸び悩むのです。わかれば勉強は楽しいし、わからなければ嫌いになる。こうして、知識差が開いていくことになります。

知識はどうとりこまれ、使われるか

【書評/要約】勉強法の科学(市川 伸一 著):どうすればよく覚えられるのか

ここまで、上手に「長期記憶化」する基本を見てきました。では、収集した情報はどのように知識としてとりこまれ、使える情報となっていくのでしょうか。

脳は取り込んだ情報をどう処理する?

私たちは情報を取り込んだ時、意識することなく、様々な方法で情報処理しています。例えば以下のような方法です。

情報処理の例

トップダウン処理:大きな枠組みを細分化していく
ボトムアップ処理:下から上へ、カテゴリー分けなどをして上位概念を作る
パターン認識  :パターンで意味を理解する
フロー化    :項目を矢印などを使って整理
イメージ化   :図にする

例えば、私たちは、ただ項目がただ並んでいるだけでは、覚えられない。だから、例えば、上記のような情報処理で関連性をネットワーク化して「長期記憶」化します。学習・経験でこの知識のネットワーク大きくなります。

「思い出す」とは、こういうネットワークのどこを再び「活性化」するということです。時々、記憶がイモヅル式に蘇ることがありますが、それは、記憶の活性化が徐々に広がっていくということ。これが長期記憶の中での知識の構造の1つのモデルなのです。ここからも、知識はバラバラの状態よりも、関連をもってつながっているほうが、よく思い出せる=使える知識となることがわかるわけです。

自然と行っているトップダウン処理

上記の処理の中でも、私たちが意識せずによく行っているのが「トップダウン処理」です。

よく「行間を補いながら読む」と言いますが、私たちはすべを説明されなくとも、無意識に一般常識を補完して理解しています。

では、授業を聞いてもわからないとはどういう状態か。これは、前提となる知識がない・不足している・あやふや・間違っている状態です。話についていけないと思ったときは、「新しいことがわからない」以前に、既にその前段階がわかっていないということなので、要注意です。その前段に戻って学び直す必要があります。

いかにして問題を解くか

【書評/要約】勉強法の科学(市川 伸一 著):いかにして問題を解くか

世の中は、何が正解かがわからない問題で溢れています。一方、学校ででる問題は、正解・間違いがはっきりしています。私たちが、ある問題を聞いて、内容を理解して解くとき、どのような処理のプロセスを経るかを理解するのに最適です。

ベースとなる知識が必要不可欠

私たち活動は、すべからく「問題解決」です。例えば、「文章理解」も問題解決です。

例えば、英文解釈は、英単語と文法の知識があればわかるというものではありません。この2つがわかっても、その文章そのものの知識や背景などが理解ができないと、内容が理解できない。また、人に伝えたはずなのに伝わっていないことがありますが、「相手と自分の知識の違い」によって、意志疎通ができていないこともあります。つまり、ここでも【既にもっている知識】が大事になるのです。

問題解決力を上げるにはどうしたらいいか

問題解決力を上げたければ、既に持っている知識が豊富にし、そこから、適当なスキーマ(概念)をうまく読みだす力をつけること欠かせません。

「こういう問題だったらこうやって解けばいい」という攻略法をたくさん持ち、使いこなせるようにしておくことです。経験・練習は欠かせません。成功・失敗をたくさんして経験を積むことが問題を解くときの力となります。つまり、一足飛びに問題解決力は上がりません。

ミス・失敗に向き合え

勉強時に「一度解いた問題は二度と見ない」という人が多いですが、ここまでの話を総合的に考えると、こういうタイムの人は、損しています。

間違えた問題は、「なぜ解けなかった・できなかったのか」を考えて、次に生かせるようにするのが大事。メモを残し、時々見返す。解けなかった時、その場で「なぜ解けなかったのか」を簡単にメモしておけば、このひと手間で「教訓」を引き出しやすくすることもできます。

私たちは、過去の過ち、失敗などを自尊心を保つために、見ないようにしがちです。しかし、ミス・失敗を振り返ることが、自己成長・能力UPにつながるのです。

やる気がでないをどう克服するか

【書評/要約】勉強法の科学(市川 伸一 著):やる気がでないをどう克服するか

多くの人は勉強も仕事も嫌いです。では、どうしたらやる気が出ないを克服できるか?ここからは、「やる気」を促す「動機づけモチベーション)」について見ていきます。

外からのやる気、内からのやる気

やる気には、外からのもの(外発的動機づけ)と、内からのもの(内発的動機づけ)があります。

外発的動機づけの代表は「ご褒美」です。いい点とったらゲームを買ってあげるといったものだけでなく、「賞賛(褒める)」や「罰」もその一つです。これらは、やる気を削ぐ「諸刃の刃」にもなります。

一方、内発的動機づけは、「学ぶことが楽しい」「仕事が楽しい」といった、それ自体を目的として湧き上がる欲求です。本来、私たちが何かを学ぼうとするのは、報酬目当ではなく、知的好奇心、理解欲求、向上心のはずです。

・新しい刺激や情報を求める知的好奇心
・ものごとの原因・理由や知識同士の関連を知りたいという理解欲求
・技能に習熟してうまくできるようになりたいという向上心

モチベーション=期待値×価値

「やる気=意識」だと思っていませんか?それは間違いです。やる気は、実は、その人の「ものの見方」に大きく関わっています。というのも、モチベーションは以下で決まるからです。

モチベーション期待値(求める対象が得やすいかの確率)× 価値(価値の高さ)

例えば、受験なら、「受かる見込みがどれだけあるか」と、「その志望校が自分にとってどれくらい魅力的であるか」の両方の強さでモチベーションが決まります。また「掛け算」なので、一方がほぼゼロであれば、逆が高くても、ほぼゼロ。どんなに魅力的な志望校でも、受かる見込みなしと思えば、モチベーションは上がりません。

「成功体験」が大事な理由

成功体験を積むことがなぜ大事か。それは、経験が「やれば成功する(やらなければ失敗する)」という気持ちに直結するからです。行動すれば何かプラスが得られると、腹落ちしてわかっていれば、前向きに頑張れます。

逆に、学習意欲を失っている人は「どうせやるだけ無駄」という経験をたっぷり積んでいます。つまり「無力感」は後天的なものです。まずは、報酬でもいいので何か動機づけを与え、次第に、「これなら自分でもできそうだ」という自分で頑張れる意識が持てるように誘導していく必要があります。

無力感には本人が自覚していない理由もある

無気力はかなり罪な存在です。「将来の役に立たないとやる気が出ない」というのなら、(多くの場合)マンガ、ゲームにもやる気が出ないはずです。

この時起こっているのは、「俺が成績が悪いのは、勉強しなかっただけ」という逃げです。「やればできたはずだ」と思い込むことで、努力なしで自尊心や評価を保っています。しかし、自分をごまかし続けていては、「無力感という沼」からは這い上がれません。そして、いずれ、自尊心も評価も失うときが必ずやってきます。

とにかくやってみる

こんな沼からどう這い上がるか。とにかくやってみることです。やってみたら、できるようになった、おもしろくなった、という経験をつかむことです。

算数嫌いな子も、解けたときは嬉しそうな顔をします。やっぱり、できると嬉しい。このような内発的動機付け、知的好奇心、納得感、達成感、進歩の実感をうまく利用するのです。そして、先生・親のサポートも利用しつつ、目標を達成するにはどうすればよいかという手段・方法をちゃんと理解することです。

そして、最後の最後に、本書の最初の話に戻りますが、記憶のメカニズムを思い出し、ただ勉強時間を増やしたり丸暗記したり後言った「量的努力」でなく、「勉強法を改善といった「質的努力」をすることです。改善により成果が上がれば、内発的モチベーションを上げるループにはいれるはずですから。

最後に

今回は、市川伸一さんの「勉強法の科学」からの学びを紹介しました。
自分の記憶力をアップさせて、益々、学ぶのが楽しい状態を作るための多くの学びが得られて、大満足です。最後に、もう一言、早く出会いたかった!

私がまとめた内容だけでは、十分な理解はできないと思います。是非、本書を手によって、「ふむふむ🤔」と思いながら、多くの気づきを得てください。