【書評/要約】実践型クリティカルシンキング (佐々木裕子 著)(★4) 前提を疑え!変化の早く絶対的な正解のない時代に必要な思考法

クリティカルシンキングとは、論理的・構造的に考える思考法。日本語にすると「批判的思考」と訳されることから、”粗探し”などダークなイメージを持たれてしまう方もいますが、決して欠点を指摘するための思考法ではありません。

「本当にこれで正しいのか」という視点を持って物事を見る方法であり、「前提を疑う」「思考の偏りに気づく」ことを基本とした思考法です。

クリティカルシンキングが重要な理由は、世の中はものすごい勢いで変化し、絶対的な正解がない時代だからから。ロジカルシンキングは、物事を構造的に整理するにはとても有効ですが、今のような絶対的な正解のない時代では、それだけでは結果は出せません。そこで重要となるのが、常識・前例を疑い、様々な視点で考え直すクリティカルシンキングです。

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本書、佐々木裕子さんの「実践型クリティカルシンキング」は、クリティカルシンキングを効果的、かつ、筋よく思考を深めることができる実戦書。複数の設問を通じて、思考の過程で行き詰りやすいポイントや、思考の罠などを学ぶことができます、読み進めることで、徐々に思考の仕方が身につくスタイルです。

今回は、本書実践型クリティカルシンキング」からの学びを紹介します。

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実践型クリティカルシンキングとは

【書評/要約】実践型クリティカルシンキング (佐々木裕子 著):実践型クリティカルシンキングとは

なぜ「実践型クリティカルシンキング」が今求められるのか。まずは、この点を深堀します。

実践型クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキングは、手段・ツールです。ビジネスの世界では「思考のフレームワーク」と呼ばれるものが多数ありますが、これらはあくまで道具=手段です。思考法を覚えることが目的ではありません。あくまで、「目指すもの」を達成するために、クリティカルシンキングを使います。手段と目的を間違えないことが大事です。

実践型クリティカルシンキングとは

・「目指すもの」を達成するために、
・「自分の頭」で考え、行動し、
・「周りを動かす」ための実践的な思考技術

実践型クリティカルシンキングが求められる3つの理由

実践型クリティカルシンキングが求められる理由は3つあります。

❶素早く結論を出すことができる :世の中の変化のスピードが速い時代に対応するため
❷経験値のない事柄でも判断できる:未経験の事柄がらも、自分の頭で考え、論理的な判断を行う
❸判断の根拠を説明できる    :根拠を他人に簡潔かつ論理的に説明できる

クリアになっているか、常に注意すべきこと

クリティカルシンキングでは、常に、以下の3点がクリアになっているかを意識することが大事です。

❶「目指すもの」は何か?(いつまでに、どのくらいのレベルで?)
❷今と目指す姿のギャップ(=課題)は?
❸ギャップを埋めるための具体的な施策は何か?

日ごろから、「徹底して意識する、考える」ことが問われます。

クリティカルシンキングの3つのステップ

【書評/要約】実践型クリティカルシンキング (佐々木裕子 著):実践型クリティカルシンキングとは

以下では、クリティカルシンキングを実践するに当たって、どうすればいいか。3つのステップを順番に見ていきましょう。

❶目指すものを定義する

どんなことがしたいのか? 
どういう状況を実現したいのか?
それはなぜか? 
を、目指すべきものを具体的かつ明確に決めます。「

ここで大事なことは、その目指すレベルと期限が決まっていることです(理由も含めて)。
・いつ
・どのくらいのレベルのことを
・何のために 目指すのか

❷何が問題なのかクリアにする

・いま、どういう状態なのか?
・目指すものとどのくらいのレベルの差があるのか?
・どんな課題があるのか?
を本質的に理解します。そのためには、
・自分の現状を客観的に分析し、
・「目指すもの」とのギャップを認識し、
・そのギャップが生じている原因(=課題)を本質的に説明ができる

ことが、重要になります。

❸打ち手を考える

❷までのことを踏まえて、ギャップを埋めるためにどうすればよいか、という具体的なアクションに落とし込みます。
ここでも、
・具体的なアクションをあげられること
・なぜそのアクションなのかをクリアに説明できること

が、重要になります。

クリティカルシンカーになるための2つの力

【書評/要約】実践型クリティカルシンキング (佐々木裕子 著):クリティカルシンカーになるための2つの力

クリティカルシンキングの能力が高い人=クリティカルシンカーになるためには、どのような力が必要でしょうか。必要な2つの力を見ていきましょう。

❶ズームイン・ズームアウトする力

ズームイン・ズームアウトする力とは、現実と理想のギャップを埋めるために必要な力です。

ズームインとは、細かく砕いて、核心に迫る力です。本質的には何が問題なんだ? 根源的にはどこが問題なんだ? と、掘り込んでいきます。例えば、ビジネスで「成約額」が飲み悩んでいる場合、その問題を探るために、「成約額=①面談件数×②成約率×③1成約当たりの単価」と掛け算で分解し、一つ一つを掘り下げてみるといったやり方です。

ズームアウトは、思考や発想の枠を広げる力です。 ズームインが掘り込んでいくのに対して、引いて俯瞰します。

これを、「なぜ?」「ホント?」「具体的に?」の3つの質問で深めていきます。

❷目指すものを定義する力

さらに大事なのが、「目指すものを定義する力」です。「目指すものを定義する」とは、「なぜ、具体的に、いつまでに」目指すのかを決めることです。

「目指すべき山を決めずに歩く」ことは、さまよっているのと同じです。下図は、大谷翔平選手の子どものころにまとめたものですが、「目指すべきものが具体的で、期限も明確に決まっている」 からこそ、彼はその目標の実現だけをブレずに見すえて集中したのだろう、と想像できます。

さて、以下では、クリティカルシンキングの3つのステップをより、実践的に行うためのテクニック・コツを見ていくことにしましょう。

【実践:ステップ1】目指すものを定義する

【書評/要約】実践型クリティカルシンキング (佐々木裕子 著):【ステップ1】目指すものを定義する

それでは、クリティカルシンキングの3つのステップを進めるに当たって、ステップ1の「目指すものを定義する」のコツやテクニックを見ていきましょう。

「目指すものを定義する」3つのコツ

自分の人生の目標でも、会社の経営でも、正解はありません。だから、目指すものは、ブレない明確なものである必要があります。「目指すものを定義する」には、以下のコツを押さえることが大事です。

❶言葉の意味を明確にし、最終的に解くべき命題を導き出す
❷明確にイメージできるよう、わかりやすく表現する
❸「正解」はないので、自分が納得するまでひたすら考え続ける

「目指すもの」がフニャッとしている中で問題解決をしようとすると、何の問題を解決しているのか、よくわからなくなっていくパターンに陥ります。

目指すものを「SMART」でチェックする

目指すものを誰にでもわかるように明確に定義する」。 これが、 クリティカルシンキングの手順のいちばん最初であり、かつ、実はいちばん大事でいちばん難しい部分です。

誰が聞いても映像が思い浮かぶ。誰が聞いても、「そういうことか、そのためにやってるんだ」とわかる。目指すものを達成したシーンやイメージが、誰でもさほどブレないで見える。もしくは数字でわかることです。

このために、使えるテクニックが「SMART」でチェックする方法です。

目指すものを「SMART」でチェックする

「S」Specific(具体的)
「M」Measurable(達成できたかどうかを事実で判断できる)
「A」Action Oriented(アクションに落とせる)
「R」Relevant(意義=なぜやらなければならないかが明確)
「T」Time-Limited(いつまでにやればいいか、期限が明確)

【実践:ステップ2】何が問題なのかクリアにする

【書評/要約】実践型クリティカルシンキング (佐々木裕子 著):【ステップ2】何が問題なのかクリアにする

何が問題なのかクリアにするには、「なんでこれが起きてるんだろう」「本質的な課題は何か」をしっかり考えておかないと、時間を無駄にします。問題の本質がわからなければ、解決策は出てこないからです。

ズームイン(分解して絞る)で課題設定をするときのコツ

問題をクリアにするための「ズームイン」では、以下を実践するのがコツです。

・「ピラミッドストラクチャー」になるように分解する
・「なぜ●●なのか?」を4~5回繰り返す
・MECE(もれなくダブりなく)な切り口に分解する
・意味のある切り口で分解する(フレームワークを活用する)

ロジカルシンキングやクリティカルシンキングの世界では、すべての課題の構造は「ピラミッドストラクチャー」です。選択肢や理由などを分解していくとき、どれか1つを選ぶと、捨てた選択肢はもう検討しなくていい。これがピラミッドストラクチャーの最大のメリットです。次の「なぜ?」で「顧客の選び方が問題」ということがわかったら、そのほかの選択肢はそれ以上考えなくてよくなります。

この時、大事なのは、「筋のよい」分解をすることです。正解はなくても、筋のよしあしはあります。「筋のよい」分解ができると、問題の本質をつかみやすくなります。その時に役立つのが、MECEを代表とする思考のフレームワークです。
※本書では、フレームワークについても解説されていますが、本記事では割愛します。

過度な「MECE・フレームワーク信仰」に注意

フレームワークは便利ですが、過度なフレームワーク信仰は危険です。以下はよくあるフレームワークの罠です

❶「で?」となりがちな「一般論型」:よくありがち
❷抽象的すぎる「評論家型」    :抽象的的すぎてさっぱりわからないというパターン
③詰めの甘い「砂上の楼閣型」    :詰め切れないうちに課題を絞り込んでしまったパターン

当たり前のことですが、整理学をいくらやっても意味はありません。本当の勝負は、その先をどれくらい考え抜けるか。どれくらい詰められるかが大事です。

フレームワークを用いず分解する方法も覚えておく

また、フレームワーク以外で、事象を分解する方法も覚えておきましょう。以下は代表的な分解例です。

数学的な分解:「足し算で分解する」「かけ算で分解する」
概念的な分解:ペアコンセプトで分解する 例)アウトプットとインプット、ウィルとスキル、ソフトとハード、長期と短期 など
2軸で分解 :2軸で事象をマッピングしてみる 例)PPMマトリクス など    

【実践:ステップ3】打ち手を考える

【書評/要約】実践型クリティカルシンキング (佐々木裕子 著):【ステップ3】打ち手を考える

最後のステップは「打ち手を考える」。打ち手を考えるとは、課題を解決しつつ、目指すものを達成するための方法を考えることです。目指したいものは定義できた、今とのギャップ(課題)もわかった。じゃあ、どうやってギャップを埋めましょうか、という部分を見ていきましょう。

打ち手を考えるための5つのステップ

打ち手を考えるためのステップは5つからなります。

❶まず、当たり前の答えを考える
❷当たり前の答えの対極を考える
❸アイデアの深掘りをする
❹発想を広げる
❺目標設定と照らし合わせながら絞って、さらに深掘りする

ここでのポイントは、
❶「ほかに選択肢はないか?」と何度も問う (ズームアウト)
❷目標設定と照らし合わせながら絞る

ことです。

❶❷を用いて、命題、すなわちいちばん最初の目標設定と照らし合わせながら、行ったり来たりしながら絞り込みます。これをやるだけで、情報収集を一切しないで、選択肢は消えて行きます。ただし、目標設定があいまいだと、自分でクリアに設定し直すことも必要となります。目標設定と解決策が論理的に矛盾する。そりゃダメでしょ、と思いますが、実際にやってみると、結構、このパターンに陥るのだそうです。

クリティカルシンキングに行き詰ったときの突破口

繰り返しになりますが、解決策が見つからないのは課題の本質をわかっていないからです。何が本当の問題かがわからないときです。

クリティカルシンキングは、「こうすればすぐできる!」というウルトラCはありません。結局のところ、「とにかくひたすら考え続ける」これがとても大事になります。

一方で、クリティカルシンキングはひとりでやってると行き詰まります。そんなときは、人と「誰かと意見の壁打ち」をしましょう。「そんな視点もあったなあ」と自分が考えられていなかったことが見えてきます。改めて議論してみると自分がどこがわかっていないのかとか、どこが説明できないのかがわかる。人に説明し、議論することで、自己満足に陥ってしまうのを防ぐこともできます。

最後に

今回は、佐々木裕子さんの「実践型クリティカルシンキング」からの学びを紹介を紹介しました。
本記事では、押さえるべきポイントを絞ってまとめているため、クリティカルシンキングの思考のプロセスまでは見えてきません。正直、上記説明だけでは、消化不良に陥ると思います。本書を読むと、課題を通じて、思考のプロセスを学ぶことができます。読みやすい本ですので、是非、一読してみてください。

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