【書評/要約】『21世紀の資本論』の問題点(苫米地英人 著)(★3.5)
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英語版が出版されてわずか3ヵ月で40万部を売り上げたトマピケティさんの「21世紀の資本論」。この公式は、20ヵ国以上におよぶ主要な国々の『所得と資産』の関係を過去200年にもわたる資料を調べ、資本主義の特徴を歴史学的に導き出した結論を一言で表せば、

トマピケティの公式

r > g (r:資本収益率、g:経済成長率)

という実にシンプルなものです。

私もこのあまりにもシンプルな公式に深く納得し、投資をしない限りにおいて豊かになれないと、腑落ちしました。私にとってはロバート・キヨサキさん「金持ち父さん 貧乏父さん」のクワドラント図に次いで衝撃のあるものとなりました。この2つは私の生き方に大きな影響を与えています。

また、コロナショックでさらにrの成長スピードは加速。一方で、gはマイナス化することがあると痛感しています。

ただ、苫米地氏はこの式には大いに納得するものの、「21世紀の資本論」には大きな問題があると指摘しています。
今回は、『21世紀の資本論』の問題点について要点をまとめます。

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【おさらい】r>gとは

トマピケティの公式

r > g (r:資本収益率、g:経済成長率)

株式や債券、不動産といったものへの投資によって得られる利益の成長率は、労働によって得られる労働者の賃金の上昇率(≒GDP成長率)を常に上回るということ。

資本収益率は平均4~5%に対して、経済成長率は平均1~2%。つまり、資本を持つ富裕層が資本を使って投資すれば、平均4~5%の収益が得られますが、資本を持たない者が労働によって汗水かいて稼いでも、その成長率は平均1~2%なので、このまま何の政策も打たずに市場に任せておけば、「資本を持つ資本家」と「資本を持たない労働者」との経済格差はどんどん広がっていくことになります。

むしろ、21 世紀にはこの富の不平等はさらに大きく拡大してきます。理由は、資本主義という制度自体に「富の不公平が拡大する」という要素がすでに内包されているからです。結果、ピケティは、やがて中産階級が緩やかに消滅する(没落して、貧困層になる)と述べています。

ピケティの経済格差是正への提言

では、今後ますます拡大し続ける格差を是正するにはどうしたらいいのか?

そのためピケティは、「資産への累進課税が必要であり、しかもグローバルに課税しなければ意味がない」と結論付けています。

格差是正には、税による適切な再分配が欠かせませんが、ポイントは所得だけでなく「所得と資産の両方」への累進課税を「グローバルに行う」ことが大事だと提唱します。

グローバルでなければならないのは、少しでも例外があれば、そこが現在のタックスヘイブンのように、資産逃避先になってしまうからです。

苫米地さんが指摘する、『21世紀の資本論』の問題点

苫米地さんは『21世紀の資本論』には大きく2つの問題があると述べます

『21世紀の資本論』の問題点

①結局はサンプル調査
歴史的手法のみの故房であり、経済学に大事な数理的、理論的な経済モデルでの結論がない。

②格差是正提案の実現性が極めて薄い
所得への累進課税の不公平さだけでも問題なのに、さらに資本(≒資産)にまで課税し、しかも累進性を強化するというのはあまりにも理不尽であり、資本主義自体を否定し、社会の発展をも否定する政策。現実的でない。

以下②については、もっと深い部分があるので、補足します。

格差是正提案の実現性が極めて薄い理由

これを実現するには、個人だけでなく、法人に対しても実施しなければ意味がありません。しかし、法人も対象にするとどうなるか?例えば中小企業の製造機器などの資産にも毎年税金がかかります。すると、中小企業は設備に投資をし続けられるか?おそらく無理です。設備投資は減り、生産は減り、資本主義の良い面が機能しなくなります。

現代の国際金融資本の真実を無視している

ピケティさんや彼を大絶賛しているポール・クルーグマンさんらが累進課税で狙い撃ちしたいのは、金融資本だと思いますが、「仮に資本への累進課税をグローバルに導入したとしても、ほとんどの金融投資資金には課税できない」から。それは、金融投資をしている人たちの資金は資産ではなく、負債(レバレッジ投資)だからであり、負債への課税は不可能と思われるからです。

IMFの資産によると2013年世界GDP7470兆円(約74兆7000億ドル、ドル円100円換算)に対し、金融投資の元本は数京円(4~5京円)と言われています。特にリーマンショック以降のデリバティブ経済の拡大は無視できません。しかし、トマピケティさんさんはこれらデリバティブが生み出す信用創造を無視しています(これが特に活況になったのはリーマンショック手前からで歴史が浅い)。

今の時代、CDSしかり、不安定な確率現象なら何でも儲けの対象になっています。このCDSについては、資本収益率という概念さえ通用しません。なぜなら、資本ゼロで高収益を得ることができるからです。

さらに、地球温暖化による気温変動デリバティブさえもが売られている時代です。これが、現代金融資本主義における虚経済であり、本当の金持ちはそこにお金を投じています。このような現代の国際金融資本の真実を無視しては、意味がありません。

リーマンショック前の全世界の金持ちの確定申告書を何百年遡っても出てくる話ではありません。

なぜ、アメリカでベストセラーになったのか

著者トマ・ピケティはフランスの経済学者が、「21世紀の資本論」はアメリカで爆発的に売れました。しかも700ページもある本をその大半の人が選んだとは思えません。では、なぜ売れたのか?

火をつけたのはノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン。

そして、アメリカ人は、「自分が貧乏なのは自分のせいであって、頑張れば克服できる」と多かれ少なかれ思っていたところに、「資本主義のもとでは、格差は自然に広がって行く」。つまり、アメリカンドリームへとつながるビッグチャンスは誰にでもあり、それを掴めるかどうかはその人次第だと思っていたのに、「そんなものはない」と正面切って言われ、衝撃を受けた、或いは、目から鱗が落ちたような感覚を覚えたからだと思われます。

そして、インテリを気取るアメリカ人家庭の「インテリアブック(書棚のお飾り)」と化しました。

最後に

今回は、苫米地英人さんの「『21世紀の資本論』の問題点」をまとめました。

私は、資本収益率は平均4~5%に対して、経済成長率は平均1~2%の「資本収益率は平均4~5%」は低すぎるのではないかと違和感を感じていました。しかし、儲かる場合もあれば損する場合もあるのでならすと4~5%なのだろうと一旦納得していました。

しかし、トマピケティの調査からはデリバティブ金融の部分は考慮されていないと知り、納得。また、現代の社会では「不安定な確率現象なら何でも儲けの対象」という言葉に、資本主義の本当の強欲さを見た気がしました。

資本主義。今はこれに代わる社会システムはありませんが、「富の追求」は人間の本質的な部分であり、消えてなくなることはありません。幸せな人生を求めて試行錯誤しながら生きる私にとって私にとって、格差がなく、世界が幸せで満ちている世界は私も強く切望します。しかし、格差は「貯え」が可能になった農耕生活スタート時より解決できない難題です。

Chami的には、投資の大切さを本書で日々語っていますが、本ブログを見てくださった方が、少しでも早く、r > g の事実に気付き、自己の幸せ実現のために投資を始められることを願ってやみません。

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