【書評/要約】読書について(ショーペンハウアー 著)(★5) 多読よりも、考えて読め!知識の鵜呑みを否定。じっくり考え知識化せよ!

読書は大事。では、どう読めばいいのか?とお思いの方は多いのではないでしょうか。

今回紹介の「読書について」は、19世紀のドイツの哲学者 ショーペンハウアーによって書かれた読書本です。
ショーペンハウアーは、ニーチェをはじめ、アインシュタイン、フロイト、トルストイなど広範囲の人に大きな影響を与えたことで知られています。

本書は3部構成され、「自分の頭で考えることの重要性」「文章の書き方」「読書の仕方」が学べますが、全編を通じて「厳しい言葉」が並びますが、それが、読者の心に響きます。

個人が多数の発信メディアを持つ現代社会において、有限な時間を無駄にしないために、「どう読み」「どう考え」「どう発信すべきか」深く考えさせられる一冊。時代を越えても変わらない真理をついた本で一読の価値ありです。

多読を否定。自分の頭で考えろ

【書評/要約】読書について(ショーペンハウアー 著)(

「自分の頭で考える」「読書について」で、ショーペンハウアーは一貫して「多読」を批判します。

どんなにたくさんあっても整理されていない蔵書より、ほどよい冊数で、きちんと整理されている蔵書のほうが、ずっと役に立つ。同じことが知識についてもいえる。いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに 鵜吞みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうが、はるかに価値がある。

多読することよりも、自分の頭で考えることの重要性を説いているのです。本を読むことは、自分の考えではなく、他人の頭で考えることです。読書三昧のみでは、自分の頭で考える能力がしだいに失われてゆく危険があることを厳しく指摘しています。

匿名で書くこと否定

【書評/要約】読書について(ショーペンハウアー 著):匿名で書くこと否定

現代社会においても、SNSにおける匿名での攻撃的な批判が問題となっていますが、「著述と文体について」では、匿名でものを書くことを厳しく批判しています。

自分が書いた文章の下に署名しないのは名誉心なき者だ。面と向かって率直に発言する相手なら、うまく折り合い、和解することができる。これに対して、陰でこそこそ言う人間は、臆病な卑劣漢で、自分の判断を公言する勇気すらない。自分がどう考えたかはどうでもよく、匿名のまま見とがめられずに、うっぷんを晴らし、ほくそ笑むことだけが大事なのだ。

また、「何一つ主張がないのに、あるように見せかけたくだらない文章」「知者を装った文章」「はっきりしない、あいまいな表現の文章」「語彙力の不足」などについても痛烈に批判しています。

今は、一人一人の個人が、Facebook、Twitter、Instagram、youtube、ブログと複数のメディアをもって発信できる時代。一部の人しか発信できなかったショーペンハウアーの生きた時代以上に、現代社会においてますます重要な問題です。簡単に情報発信ができる今の時代だからこそ、我々は、情報の発信の仕方を今一度考える必要があると言えそうです。

悪書を読むな:悪書を読まないコツ

悪書を読むな:悪書を読まないコツ

上述の通り、ショーペンハウアーは自分の頭で考えず多読することに否定的です。ただし、読書を全否定しているわけではありません。

人の人生・時間は有限です。故、良書とその高尚な目的に向けられるべき時間と金と注意力を無駄にしないために「悪書を読むな」と指摘します。

悪書を読まないための方法として、以下のような読書をすべきとアドバイスしています。

悪書に無駄な時間をせず、読書を血肉にするアドバイス

・大衆受けする新刊書ばかりを読まない
・古人が書いた古典・名著を読む
・思想体系をもって公正な関心を持って読む

快楽な読書ばかりではいけないことを改めて思い知らされます。

最後に

今回は、ショーペンハウアーの「読書について」からの学びを紹介しました。

本書は、私個人、本の読み手として、そして、個人メディアでの発信者として耳の痛い言葉ばかりです。それ故、「どう読むべきか」「どう書くべきであるのか」を深く考えさせられます。

本を読んでも自分の血肉となるのは、自分で反芻し、じっくり考えたことだけです。そういう観点からも、本書は自分の行動を改めるべく考えさせられる本であり、非常に有益な本でした。

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