【書評/要約】世界観をつくる(水野 学、山口 周 著)(★5) 「役に立つ」より「意味がある」が大事。物語をつくり、未来をつくれ!

モノが売れなくなった現代。生活に必要なものは手に入れてしまい、「心から欲しいと思うモノ」が減少しています。しかし、高くてもどうしても欲しくて買ってしまうものもあります。

Apple、スターバックス、無印良品…
これら企業が共通して持っているのが「世界観です。単なる「機能・便利」では心を揺さぶられることはありません。世界観に魅了され、「欲しい」気持ちが揺さぶられます。

このような、ビジネスにおける世界観の大切さを教えてくれるのが、水野 学さん、山口 周 さん共著の「世界観をつくる」。

「意味をつくり、物語をつくり、未来をつくる」の3ステップで「世界観の作り方」を教えてくれます。非常に多くの学びがある1冊です。

今回は、本書からの学びを紹介します。

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意味をつくる

【書評/要約】世界観をつくる(水野 学、山口 周 著):意味をつくる

なぜ、世界観が重要なのでしょうか?まずは、そこから見ていきましょう。

「正解」よりも「意味をつくる」ことが大事に

人類の歴史は、問題解決の歴史です。私たちの祖先は、技術進歩と市場原理から、簡単に、かつ、市場が広く儲かる課題から問題を解決に当たってきました。そして、今―。「問題=本当に困っていること」が減っています。

しかし、今だ、企業は、従来の方法=「機能向上」で便利なものを生み出そうとしています。今は、それが行き過ぎて、「家電製品」に見られるように同じような商品が溢れています。これは、各社が「ほぼ正解」にたどり着いてしまったということです。

「ボタンが50個あるリモコン」を提供されても、もはや機能過剰。企業は努力する方向を間違っています。

今、大事なのは、「便利の追求」ではありません。必要なのは、「便利なものを作る・役に立つものを作る」ことではなく、「新たな問題を提起し、意味をつくる」こと。つまり、「ビジョン」であり、「未来をつくる」ことです。

「文明」と「文化」:2つの時代では求められることが異なる

世の中は、「文明の進化」とその後の「文化の開花」の繰り返しで進化してきました。企業の存続には、時代が「文明:役に立つ」「文化:意味がある」のどちらを求めているのかの見極めが欠かせません。

局面求められる
価値
内容
文明役に立つ
という価値
・日本企業がずっと闘ってきた場。性能向上など
・裏打ちは論理・サイエンス・スキル
・性能・コストなど、数値を追い求める世界
・競争が進むと、「圧倒的No.1」と「その他大勢」に
・1位総取りの世界。既に過剰
文化意味がある
という価値
・今、求められている場。今後、ますます大事
・ブランディングに必須。企業としての「世界観」
・明確な正解がない故、ギアシフトが難しい。二の足を踏む
 ⇒多くの企業は経験に乏しい

便利を捨てる勇気・判断する勇気

日本は戦後、「役に立つ」一辺倒で走ってきました。「役に立つ」⇒「意味がある」にギアシフトできなかった結果、平成は「失われた30年」となりました。

日本には「機能」で優れた技術をもつ企業はたくさんあります。しかし「世界観を感じる企業」はどのぐらいあるでしょうか?

企業は、今からでも、文化という「意味がある世界」に進む必要があります。自ら使いたい!作りたいと思える「カッコイイ」製品作りにシフトする必要があります。

世界観には、クリエイティブの世界であり、「正解」がありません。故、「変わらなくちゃ」と思っていても、自分で方向性の良し悪しを判断する自信に欠けた日本企業は、モタモタしています。しかし、その先に待ち受けるのは「役に立たない、意味もない」という存在へのなり下がりです。

「便利を捨てる勇気」を持って、「いかに意味をつくり、ブランディング化するか」が求められています。

「主観」を大事に

ビジネスの世界では「主観性」より「客観性」が重視されがちです。しかし、実は大事なのは「主観性」です。主題、主要、主都……つまり「主=ぬし、おも、あるじ」が大事です。

わがままに、自分が欲しい・面白いと思うものを目指すこと姿勢は大事です。なにより、「わがまま」「面白さ」は、企業にとって最大の経営資源・武器となる「モチベーション」につながります。

今、自分に輝かしい未来を描けない日本は、「ハングリーになれない人」であふれています。こんな人のモチベーションを上げるには、「役立つ」より「ワクワク(主観)」が必要です。

「意味の時代」に求められるビジネススキル

「意味の時代」では、「主観・感性で語る」ことは、軽んじられました。「数字で語る」方だ意味があったからです。

しかし、「意味の時代」には、企業人には、自分の感覚・感性を大切にして、「(自分がカッコいいと思うものは)カッコいいんだ!」と発言できる強さが求められます。あるいは、誰かの提案を自分の感覚で判断して、「これはいい!好きだ!支持する!」と判断・発言できるスキルが不可欠です。これが、自分のクリエイティビティの自信につながっていきます。

物語をつくる

【書評/要約】世界観をつくる(水野 学、山口 周 著):物語をつくる

「意味をつくる」次に必要なのが「物語をつくる」ことです。

なぜ、ストーリーが大事なのか

商品開発には「コアターゲット」の設定が欠かせませんが、ここで大事なになるのが「物語(ストーリー)」です。

その商品を好んで使房具でも、それが使う人が、どの街のどんな部屋に住み、どんな服装で、どんな、ランチ・ディナーを食べているかと言ったことを、具体的に考える。そして、そんな主人公がどんな風にその商品と接しているのかを、ストーリーとして描くことが欠かせません。

ペン1本でも、それが使われる世界が描かれ、それが人の感性を動かしたとき、「あっ、これだ!」と人は心を動かされ、その商品が欲しくなります。ただのペンが「自分に関係があるもの」になるのです。あるいは「憧れの暮らし」として、その人と関係性が生まれ、人は高くても買ってくれます。

企業サイドから見れば、開発中の商品とコアターゲットをつなげる「世界観」をいかに示せるか―です。

徹底的に「世界観」を考えるのが最初の一歩

ブランドでも商品でもお店でも、「どんな世界観にしたいか」をまず徹底的に考えることが、第一歩です。ただし、盛り込み過ぎは禁止。ポイントを絞って、そこにそぐわないものは排除する勇気が必要です(不安になって余計なものをくっつけてしまうと、世界観はぼやける)。

この世界観のアピールが「ブランディング」です。「企業存在の意味」を分かりやすくビジュアルで訴求していくことがブランドをつくります。

ただし、アップル、スターバックス、無印良品、バルミューダなど、強いブランド力のあるこれらの企業は、単に「デザインセンス」が気に入られているのではありません。製品・サービスに徹底された「世界観」がベースにあります。これは、機能・デザイン・ネーミングなどの細部まで「意味を最重要視」されているからこそ、人はファンになります。

世界観づくりには「知識」が必要

世界観を作るには「知識」が必要です。世界観を作れる人は、必ず、様々な作品に親しんでいます。名作から、世界観、その中にある普遍性、ポピュラリティを学んでいるのです。

本をどれだけ読んで、どれだけアートに触れているか―。たくさんのものを見る・触れる・体験することで、知識の引き出しが増えていきます。

なお、知識と言っても、即アウトプットに直結する学び(例えば、エクセル関数を学ぶ)ばかり追求していては、世界観は生まれません。一見、何の役にも立たない、仕事に関係ないような知識のインプットが必要です。これがアイデアの元になります。

どうやってコアターゲットを見つけるか

コアターゲットを作るには、セグメントが明確な「雑誌」を参考にするのがおすすめです。ファッション誌、ビジネス誌、趣味雑誌 等、セグメントが明確です。

セグメントが近そうな雑誌を見つけて、雑誌に学ぶと「コアターゲット」が好きそうなストーリーが見えてきます。Kindle Unlimitedのような本の読み放題サブスクを利用すれば、あらゆる雑誌の調査ができます

世界観にもアップデートは必要

世界観は一度作ったら、おしまいではありません。核となる本当に重要な部分は守った上で、時代に合わせてアップデートすることが大事です。

そうしなければ、時代に置いていかれます。長くブランドで支持される企業は、このアップデートを繰り返すことで、「ブランド力」を維持しています。

未来をつくる

【書評/要約】世界観をつくる(水野 学、山口 周 著):未来をつくる

世界観✕マーケット、いかに勝負するか

世界観✕マーケットをいかに両立させて未来をつくるか。まずは、マスを捨てターゲットを絞り込むこと。ただし、日本だけでは市場が小さくなってしまうので、日本を飛び出し、グローバル化することです。

マスを捨て、コアターゲットを絞ると、「らしさ」「ブランド」が際立ちます。

では、どうやってマーケットを見つけるか。これは、単に「ニッチを探す」「ブルーオーシャンを探す」ということではありません。例えば、スターバックスは、レッドオーシャンに飛び込んで、世界観で成功した王者です。

スタバ誕生時、米国には1ドル、2ドルでコーヒーを売る店はたくさんありました。そこに、店舗のインテリア・雰囲気、コーヒー・カップ・マグ、ロゴ….という「世界観」で飛び込み勝利しました。そして、「スタバで一人コーヒーを片手に読書する私」「スタバに立ち寄って、ラテをテイクアウトしてオフィスで仕事する私」に憧れを抱かせ、虜にしました。これはもう、「圧倒的な世界観」「ストーリー」の勝利です。

どんなレッドオーシャンでも、「意味」をつくれればやりようはある。スタバはそれを証明しました。意味を作れれば高くても売れます。利益率が高くなるので、少ない顧客数でも売上は維持できます。

クリエイティブな企業になる第一歩

ブランドを構築するには「クリエイティブ」な組織作りが必須です。その第一歩は、まず経営者が、クリエイティブの重要性、「意味をつくる」ことの必要性を理解することです。

これを一人でやってのけた偉大な経営者がスティーブ・ジョブズです。ジョブズはクリエイティブやデザインの細部を見ながら、企業やブランドのビジョンも描きました。一人でできなければ、外部からクリエイティブディレクターを招いてもいいのです。とにかくデザインやアウトプットをつくるより前の段階、世界観から丁寧に構想していける人が必要です。

水野さんは、このことを「デザインには前と後ろがある」と表現しています。

世界観をつくること。ここが大事。少なくとも今はAIができない部分
絵を描いたり、形をつくったり、いわゆるデザイナーの仕事だと思われている部分
AIでもやれる部分

「センス」から逃げるな

多くの人は「センス」に臆病です。なぜなら、教育現場では「正解」を探す訓練だけをしてきたからです。しかし、実は、仕事ができる・できないの、最後の最後の分かれ道は、その人の「感性」です。

「センスを感覚を磨く」には、自分はそれが好きか嫌いか、「なぜ」好きなのか、嫌いな場合、どこが変われば好きになれるのか、好き嫌いの理由まで突き詰めて考えることが欠かせません。できるだけデザインを言語化しようと努めることで、感覚は磨かれます。

完成度、そして、未来を描く力

「役に立つ」から「意味がある」へと時代が移る中で、ますます必要になっていくのが「精度」「完成度」です。

先に示した通り、ブランディングで大事なのは、「細部までものこだわり」です。このこだわりがなければ、顧客に「意味」を見出してもらうことはできません。顧客はその完成度の高さに魅了され、ファンになるのですから。

そして、「既存顧客」「競合他社」に固執することなく。自分たちのビジョンを定めて、そこにむかって未来をつくっていくことが大事です。かつてソニーの盛田昭夫さんがウォークマンを世に知らしめた時のように、いまここにない未来を想像し、実現への道筋を考え、ストーリーと共に製品をアピールすることです。まだここにない世界は、言葉では伝わりません。「ビジュアル」でしか示せません。デザイン力は大事です。

これからのビジネスに求められること

【書評/要約】世界観をつくる(水野 学、山口 周 著):これからのビジネスに求められること

まずは、こうだったらいいなと自分が思う情景を、くっきりと、具体的にイメージする
次に、それを実現するために、世界観を、圧倒的な精度で作り上げる
そして、「意味がある」モノをこの世に生み出す
その結果として、共感してくれる人を増やしていく

これを実現するために、「世の中をこうしたい」「未来をこう変えたい」という熱意と希望と強い意志を持つ、情熱ある組織を作りましょう。大義を持ち、ビジョンを掲げ、そこから生まれるモチベーションを武器に進んでいくことが、これからの企業人の道しるべになります。

最後に

今回は、水野 学さん、山口 周 さん共著の「世界観をつくる」からの学びを紹介しました。
ここで紹介したのは一部でしかありません。水野さん、山口さんの対話の中に、多くの気づきが詰まっています。是非、手に取って読んでみられることをおすすめします。