様々なダイエット法や健康法が溢れる現代。多くは、欧米から日本に紹介されますが、いろいろ試したけど効果がない…と思ったことはありませんか?
欧米のエビデンスに基づくものである場合、それが体格・遺伝子も異なる日本人に当てはまるとは限りません。なぜなら、日本人の遺伝子変異の約半分は、日本人に固有の変化であることが指摘されて癒えるからです。
今回紹介の著書「医師が教える日本人に効く食事術」は、「日本人の体質・生活習慣」に合った、食事のとり方や健康法が学べる1冊。
私たちの体は、細胞一つひとつに至るまで、自分が食べたものでできています。故、日本人に合った食品を正しい食べ方で食べれば、痩せて健康的になるだけでなく、仕事のパフォーマンスも上げられます。
今回は、溝口徹さんの著書「医師が教える日本人に効く食事術」からの学びに、過去のダイエット・健康本の学びを交えて、ポイントを紹介します。
目次
日本人の遺伝子・体質
たとえば欧米人に比べて日本人は、やせ型の人が多いと思われています。しかし、遺伝子的には痩せやすいわけではないようです。
「肥満遺伝子」をもつ日本人
日本人の1/3は「肥満遺伝子」を持っています。故、遺伝子的には、最も太りやすい人種です。
肥満遺伝子とは、別名「倹約遺伝子」 とも呼ばれる遺伝子です。この遺伝子は食べ物が十分になかった氷河期の時代、手に入れた貴重な「糖質」を、次の飢餓に備えてしっかり脂肪として蓄えておくという特徴を持っています。
この肥満遺伝子の1つが「β3アドレナリン受容体遺伝子」です。この受容体はアドレナリンの刺激によって脂肪を燃焼させることで、肥満を防ぐ働きがありますが、この遺伝子に変異があると、基礎代謝が200kcal/日も減少。もし異変があると、単純計算で、同じ食事でも1年間で約10kgも太る可能性があるのです。
日本人は内臓脂肪もつきやすい
この遺伝子に異常が発生すると「内臓脂肪」がつきやすくなり、様々な問題を引き起こします(皮下脂肪は、病気を引き起こすことはありません)。
内臓脂肪が増えると、脂肪細胞から炎症を起こす引き金になるアディポサイトカインという物質が分泌され、それが肝臓につながる血管である門脈からダイレクトに肝臓に流れます。これが脂肪肝をつくるとともに、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効き目を悪くする作用があることから、 糖尿病や高血圧などの生活習慣病につながりやすくなります。
肥満遺伝子のON/OFFには生活習慣が関わる
「日本人は太りやすく、内臓脂肪をつくりやすい遺伝子変異を持っている人が多い」ですが、遺伝子は持っていてもON状態になっているとは限りません。このON/OFFに大きく関わるのが環境=食べ物や生活習慣です。
つまり、遺伝子レベルで太りやすい、肥満になりやすいという体質を持っていても、食べ物や生活習慣という環境要因でカバーをすることができます。
日本人は運動だけでは痩せられない
さらに、残念ながら、日本人は運動だけでやせられるという、過度な期待は持たないほうがいい人種です。それは、日本人は速筋が少なく、遅筋が多いことが関係しています。
速筋:素早い運動をするときに働く
ミトコンドリアやミオグロビンが少なく白いため(白筋)
遅筋:持久的な運動をするときに働く
遅筋は酸素を運ぶミトコンドリアやミオグロビンというたんぱく質が多く赤い(赤筋)
日本人は有酸素運動をコツコツと続ければ続けるほど遅筋がつき、よりやせにくい体になってしまいます。ジョギングなどの有酸素運動は、脂肪酸を燃やし熱に変えるUCP(脱共役たんぱく質)の活性を下げ、体を省エネモードにしてしまいます。結果、ジョギングばかりやっていると、日本人の体はどんどん省エネモードでやせにくい体になってしまうのです。
褐色細胞も少ない
日本人が鍛えるべきは、トレーニングをしても増えにくい「速筋」です。筋トレは速筋を鍛えますが、ここで大事なのは熱を作り出す「褐色脂肪細胞」を働かせることです。
しかし残念なことに、 日本人はこの褐色脂肪細胞も少なく、逆に白色脂肪細胞が多いという体質を持っています。褐色脂肪細胞は刺激することはできても、その数を増やすことはできません。そのため、日本人が筋肉量を増やしても、基礎代謝が効率よく上がることはないのです。
日本人にできることは、もともと少ない褐色脂肪細胞をフルに働かせることです。ミトコンドリアが活性化すれば、熱が産生され、褐色脂肪細胞が働きやすくなり、やせやすくなります。ミトコンドリアの活性化には 鉄分(ヘム鉄) と ビタミンB群などの栄養素が欠かせません。(逆に言えば、鉄不足で冷え性の女性はやせにくいと言える)
日本人がやせる食事術
様々な方法が紹介されていますが、その中からいくつか紹介します。
項目 | 解説 |
---|---|
熱発生を促す食事と習慣 | ・熱発生を促す食事 青魚 アジ、 サバ、 イワシ、 サンマ、 ブリ:魚の油 DHA(ドコサヘキサエン酸) や EPA(エイコサペンタエン酸) 天日干し昆布、ひじき:フコキサンチン 唐辛子・鷹の爪:辛み成分 カプサイシン ・熱発生を促す習慣 身体を冷やす 薄着、足水、水風呂:逆転の発想で熱発生を促す ・一流はなぜサウナに通うのか |
朝のスムージーへのフルーツ禁止 | ・肥満遺伝子を持っている日本人は、フルーツですぐに脂肪合成スイッチが「オン」になる ・果糖は摂取するとすぐ肝臓に吸収され、中性脂肪に変換 ・ブドウ糖やショ糖は血糖値を上げる ・肥満遺伝子を持っている?検査キット |
「人工甘味料」ではやせられない | ・血糖値を上げないので、砂糖が入った食品を食べたときの「真の満足感」が得られない ・結果、甘いものが食べたい欲求→依存症に ・腸内細菌のバランスも乱れる ・内臓脂肪を減らし、空腹スイッチを正常化する食べ方 |
日本人は「ヨーグルト」より「漬物」 | ・やせ体質をつくるポイントは、ズバリ「腸」 ・日本人はもともと乳たんぱくに弱く、乳製品を消化する酵素を持たない ・発酵食品は生まれ育った国や土地のものを食べるのがベスト 日本人には「漬物」 ・【腸活】痩せたければデブ菌を減らせ |
魚は「内臓ごと食べる」とやせる | ・細胞間の接着を強固にして引き締めるのに重要な栄養素はビタミンD ・小魚なら内臓も簡単に摂取可(ししゃも、めざし、たたみいわし) |
「グルテンフリーダイエット」は日本人にも効く | ・グルテンフリー=低糖質 ・グルテンと同時に、カゼインフリー(乳製品を控える) ・バターは食べてもOK ・グルテンとカゼインを2週間、徹底的に抜くと、本当に体調が変わる ・グルテンフリーの大敵:夜のスイーツを減らす |
「ネバネバ食材」でいい「便」を出す | ・赤ちゃんのうんちが臭くないのは乳酸菌が多いから ・大人の便が臭い原因 ・腸内環境が悪化して悪玉菌が多い ・たんぱく質が未消化なまま排泄され、異常発酵している 他 ・腸内環境を整えるのは「ネバネバ食材」 |
日本人の遺伝子とパフォーマンス
遺伝子の違いは、仕事などのパフォーマンスにも大きな影響を与えます。
欧米人は新しもの好き、日本人はコツコツ
集中の高い仕事をすると、人間の体は「ストレス」と認識します。それ故、ノルアドレナリンに任せて集中状態をつくるだけでなく、ドーパミンで満足感や達成感を感じながら集中して仕事をするほうがパフォーマンスは上がります。
このドーパミンのレセプター(受容体)の1つ DRD4は、人種によって長さが異なります。
白人欧米人は、DRD4が長いのでこの「新奇探索性」が高く、新しい物事に出合っても、ストレスを感じません。むしろ「新しいことが大好き」です。
一方、日本人(86.7%)は、DRD4が短く「新奇探索性」が低いため、新しいことを始めることにストレスを感じやすい。逆にコツコツやることに自己満足を感じます。ストレスを感じずコツコツ継続できる点は日本人のメリットです。
変化の時代においては、弊害多し!?
コツコツ継続する国民性が、日本の高度経済成長に寄与したのは間違いありません。何も考えずにコツコツやればよかったからです。しかし、変化が激しい時代においては、マイナスな面も否定できません。
日本の企業は世界的に見て生産性が劇的に低いことが指摘されていますが、組織レベルでの業務改善、個人レベルでの作業改善をせずに、非効率なこともコツコツやっている弊害が散見されるように思います。個人レベルにおいては、これがトップ5%社員と残りの95%社員を大きく隔てている理由でしょう。上記DRDAの差との関連性は?ですが、かなり合致します。
日本人のやる気低下の原因の1つ:ストレス
日本人はストレスが多いことでも知られています。鬱も自殺者も多いです。
ストレスを感じると、人は副腎からストレスに対抗するためにコルチゾールというホルモンを分泌します。あまりにストレスが高い状態が続くと、副腎が疲れ果て、機能低下。副腎疲労で「朝起きられない」「疲れがとれない」「うつっぽい」など体や心にさまざまな症状が出てきます。そして、栄養素 ビタミンCが大量に消費され、ビタミンC不足になります。
効果的に集中力を出すには、十分なタンパク質と脂質を
パフォーマンスの決め手となる集中力を引き出すためには、脳内において「ドーパミン→ノルアドレナリン」の経路を円滑にすることが必要です。そして、私たちが、ドーパミンによって心地よく満足感を得ながら、ノルアドレナリンによって時間の経過も忘れるほどの高い集中力で仕事をこなすには、アミノ酸(たんぱく質)が欠かせません。これをつくる材料となるフェニルアラニンやチロシンを含む食品をと一緒に食事することで、効果が発揮できます。
ちなみに、脳の構成成分は6割が脂質で4割がたんぱく質です。パフォーマンスを左右する神経伝達物質の材料もたんぱく質でできています。
日本人のパフォーマンスを上げる食事術
以下、ポイントをいくつかピックアップして紹介します。
項目 | 解説 |
---|---|
集中力を高めたければ「ピーナッツ」「アーモンド」「カシューナッツ」 | ・ナッツはフェニルアラニンやチロシンを多く含む ・食べても太らない効果もある ・食べても太らない食事法 |
ビタミンCを取る | ・ストレスで大量消費される ・含有量が多い食品は、アセロラ、パセリ、緑茶 など |
糖質を制限(炭水化物を抜き)し、ケトジェニック体を目指す | ・糖質による血糖値の上下動は脳や体のパフォーマンスに影響する(眠気など) ・糖質依存からケトン(脂質)依存体に体を変えて、長時時間のパフォーマンスを維持できる体を作る ・ケトジェニックな体に変わるまでには、早い人でも2週間必要 ・十分な脂質の摂取で、満足感を得やすく食べ過ぎも防ぐ ・タンパク質・脂肪メインで炭水化物を押さえた食事法 ・科学的エビデンスに基づく一生リバウンドしない食事法 ・プロテインなしのダイエットはハードモード |
仕事のひと段落時にGABA | ・GABAは抑制系の脳内神経伝達物質で脳が興奮にブレーキをかける ・ホッとした安堵感で、長い目でパフォーマンスの向上を目指す ・売れてるGABAサプリ ・ストレス解消法 |
カフェインを上手にとる | ・カフェインは交感神経を刺激。脳を落ち着かせるアデノシンの作用を遮断することで、相対的にドーパミンなどの興奮系の作用が強められる⇒眠け覚まし、一時的集中力UP ・副腎でもアドレナリンやコルチゾールの分泌が刺激され、疲労感軽減、ストレスへの抵抗力がUP ・パフォーマンスを上げるコーヒーの飲み方 ・夜はデカフェ |
寝る前の緊張をとるなら海藻たっぷりスープ | ・マグネシウムはストレスが高いとどんどん排出されてしまう ・睡眠ホルモン「メラトニン」の生成にも欠かせない ・マグネシウムが多く含まれている食品は木綿豆腐、アオサ、わかめ、昆布、ひじきなどの海藻類やほうれん草 ・良質な睡眠をとる環境を整える |
最後に
今回は、溝口徹さんの著書「医師が教える日本人に効く食事術」からの学びに、過去のダイエット・健康本の学びを交えて、ポイントを紹介しました。
本書には、これ以外にも、
・日本人が若返る食事術
・日本人のメンタルに効く食事術
・日本人が長生きする食事術
などについても紹介されています。
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