急落から急転、急騰したビットコイン。株が下がっても上げた理由は? SVB破綻・USDC下落に見る「一連の騒動からの教訓」

ビットコイン価格が急騰しています。
直近、急落していたビットコインは、3月14日早朝に急騰。年初来高値340万円には届かないものの、320万円付近まで上昇しています。

シリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank:SVB)の破綻で金融市場は揺れ、ステーブルコインはUSDCも下落しましたが、ビットコインはこれら下落の恩恵を受けて上昇しました。

リアル銀行が破綻すると、金融市場全体に資金回避の動きが走り、株式同様、ビットコインも下落しそうです。しかし、そうはなりませんでした。今回の銀行破綻劇に見るビットコインの動きには、今後、仮想通貨投資を続けていくに当たっての「教訓」があると考えます。このような教訓は、市場を見る目を養う・先を読むために重要です。

今回は、SVB破綻・USDC下落に見る「一連の騒動からの(私なりの)教訓」をまとめておきます。

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シリコンバレー銀行の破綻の原因は「取り付け騒ぎ」

3月10日に経営が破綻した「シリコンバレー銀行」は、カリフォルニア州を拠点に主にスタートアップ企業向け融資を行う銀行で、その規模は米国で18番目と大きな銀行でした。

経営破綻の理由は、「取り付け騒ぎ」です。

わずか数日で倒産

米国金利の上昇で安くなってしまった保有米国債の損失を抱えたSVBが、バランスシートを強化するために株式売却など改善策を打ち出したところ、預金者が一斉に資金引き出しに動いたことが原因。

8日には、引き出し額が同行の預金残高1730億ドルの約25%にあたる約420億ドルにまで膨らみ、あっという間に経営破綻に追い込まれました。さらに、この破綻をきっかけに、連鎖倒産が発生しています。これら結果を受けて、株式市場は大きく下落しています。

政府は、さらなる連鎖倒産を防ぐために、預金者保護を行うことを発表。早急な支援で、預金した企業の資金繰りが悪化して倒産が相次ぐ恐れは低下しました。

利上げ余地が狭まったFRB

この結果、FRBは身動きがとりづらくなったと言えます。FRBの強気な姿勢によるインフレ退治の金利引き締め政策が、銀行倒産⇒他企業にも波及という結果を招いてしまったからです。インフレ退治のための利上げ余地は狭まったと言えるのではないでしょうか。

今後の利上げ余地が少ないとなれば、マネーの流れも変化が出てくるはずです。次なる資金の行き先は… 動向をウォッチしたいと思います。

S&P500(日足)

SVC破綻に連鎖し、ステーブルコインUSDCは急落

仮想通貨のステーブルコインであるUSDCも、SVCに準備金を預けていたため信用不安が発生し急落。一時、ドルとのペッグ(連動)を大きく外れることになりました(現時点では、かなり回復)。

他のステーブルコインに対して、実際の資金の裏付けがあることが信頼感となっていたUSDCが、このよう銀行の経営破綻で価格が揺らぐとは、なんとも皮肉というかなんというか…

金融の世界には「万全はない」ということを思い知らされます。

USDCを売って、買われたのはビットコイン

ステーブルコインUSDCが不安となると、人はこのコインを手放そうとします。
USDCを売って買われたのが、仮想通貨の中では最も安心と見られる「ビットコイン」です。

中央集権システムから非中央主権システムへの回避も発生

さらに、ビットコインの場合、「銀行の破綻劇」から中央主権金融システムへの不安が発生したと考えられます。つまり、非中央集権金融への回避が起こったということです。

シリコンバレー銀行の破綻で、政府によって「預金者」は保護されることになりましたが、銀行株を保有していた「投資家」は保護されません。銀行株が激しく下落しているのも、シリコンバレー銀行破綻の影響が波及する懸念があると考えた投資家が投げ売ったからに他なりません。

一方で、非中央主権金融の代表であるビットコインは買われました。

なお、同じく仮想通貨の中では信任の厚いイーサリアムを除くと、その他の仮想通貨の反発力は限定的です。仮想通貨市場内でも「信用の差」が「反発力の差」となって、現れています。

ビットコイン(ドル建て、日足と週足)

■日足
200日移動平均線できれいに反発して、年初来最高値まであと少しのところまで戻す

■週足
200週移動平均線が、目下、上値抵抗線

ビットコイン(円建て、日足)

ドル建てと同じく、200日移動平均線がで反発(強い、レジスタンスラインとして機能)

一連の騒動からの教訓

銀行の経営破綻は、(いま直ぐというわけではなく、長い目で見た時も)今後も起こります。

正直、SVCの経営破綻のニュースが広がった当初、私が当初考えたのは、「仮想通貨は、株式市場以上に揺らいで下落する」という全く逆の考えでした。金融市場が荒れると、仮想通貨市場は、他の市場に増して、下落するという「いつものこと」が起こると考えてしまったのです。

しかし、結果は逆でした。

中央主権型金融が揺らぐと、非中央主権型金融がクローズアップされ、その中でも最も信任の厚い「ビットコイン」が買われる(こともある)。ということは、覚えておきたいと思います。

一連の騒動からの教訓

・金融の世界には「万全はない」
・銀行破綻など、中央主権型金融が揺らぐと、非中央主権型金融へ回避資金が流れる
 ⇒ビットコインが買われる