その立ち居振る舞いを見るだけで、信用に値する人かどうかわかる――

「立つ」「座る」「歩く」「食する」とき、背筋がすっと伸びた姿勢の美しい人は、姿勢だけでなく、すべての行動が凛していて、信頼に値する方が多い印象がないでしょうか。「姿勢が大事」と言われますが、身体的な姿勢がきれいな方は、物事に対する姿勢も美しものです。

本書の著者は、室町時代から800年以上の間、一子相伝で受け継がれてきた「実用・省略・美」を旨とする小笠原流礼法の継承者。非常に実用的かつ合理的な日本の礼儀作法は、現代の生活やビジネスにも通じると述べます。

姿勢を正すことは、一流人への第一歩。

一流人に近づくための作法(姿勢)が学べる一冊です。

礼法は「人を敬い、人を気遣う」ためのもの

礼法というと、決め事が多く、わずらわしいものと思われがちです。しかし、おおもとは人を敬い、人を気遣うことです。そのための教えは4点に集約されます。
1.正しい姿勢の自覚
2.筋肉の動きに反しない
3.物の機能を大切にする
4.環境や相手に対する自分の位置(真柄や間)

肌のコンディションを整えず、肌の上をお化粧でカバーするべく、単に表面だけ繕おうとしてもダメなのは、礼法についても同じ。人間の「体の機能」と「物の機能」、「その使い方」がよく理解できたとき、それは「しぐさ」現れます。それを、「形」として体得することが武家の「しつけ」であり、武士の「たしなみ」として伝えられてきたものなのです。

小笠原流の真髄は「実用・省略・美」にあり

小笠原流の礼法は「実用・省略・美」であらわされます。

「実用」を「即戦」や「合理」、「省略」を「効率」という言葉に置き換えれば、合理性・効率を重視するビジネスシーンと相通ずるところがあります。しかし、もし、「実用・省略」のみを求められたならば、人の生活は殺伐としてしまうでしょう。

礼法で重要とされているのは「美」、つまり「調和」です。
「実用の合理・無駄の省略・調和の美」すなわち「実用・省略・美」は、武士の生き方を表す一つの哲学です。立ち振る舞いに「調和の美」を求めれば、無駄がなく効率的で、あらゆる場面に即応し、しかも美しい動きになると礼法では考えられています。

「形」と「型」

「かたち」には、「形」と「型」がありますが、二つは大きく異なります。
「形」は生きており、心が通っているのに対し、「型」は心が通わない鋳型です。「形」を追求しなければなりません。

体に1本の線を通せば、立ち姿が美しくなる

正しい姿勢を保つには、腹筋、背筋、大腿筋など、いわゆる体感がしっかりしていなければなりません。体に1本の線を通せば、立ち姿が美しくなります。

礼法でいう「立つ」姿勢で大切なことは以下の4つ。正しい姿勢は「意識して行う」が肝要です。

1.力学的に安定している
2.筋肉にかかる負担が少ない
3.内臓の緒器官を圧迫しない
4.正しく脊柱に沿っている

骨の少ないところを鍛えると体は安定します。

立ち姿だけでなく、礼法では「呼吸」も大切です。
現代人は「呼吸が浅い」のが特徴です。ストレスのせいもあるが、姿勢の悪さも多分に関係しています。普段から呼吸が浅いと、慢性的な酸素不足にあるため、階段を上る運動量に身体がついていけなくなります。さらに、姿勢が悪いと体が揺れるため、余計な力を使うことにもなります。礼法では、通常無意識に行う呼吸を意識し、腹式呼吸で深く息を吸い、呼吸に動作を合わせます。

人は楽をしたがる身勝手な生き物

人間は放っておけば、どこまでも楽をしたがり、身勝手になれる生き物です。今日では楽をすることや身勝手が、自由であり個性であるとはき違えている人も少なくないのが現状です。しかし一方で、ひとたび志を持てば、目標に向かってたゆまぬ努力ができる生き物でもあります。

礼法は体と心を健やかにします。物事の本質に根ざした立ち振る舞いにより、人の品格を高めることができます。他者を敬い、気遣うことで人間関係を円滑にすることもできます。すなわち礼法を知るとは、自身の生活を平穏で心豊かなものにする術を身につけることなのです。