脳に関する著書を多数発刊されている東京大学・薬学部教授の池谷さん。私が好きな著者の一人です。

さて、本書は、池谷さんが週刊朝日で2011年12月から毎週続けている連載エッセイ「パテカルトの万能薬」をまとめたもの。日々の研究の中で目にする最先端のサイエンス論文・記事に中から、池谷さんが興味深く感じたものを取り上げ、脳の不思議と科学の最新知見を1話題数ページで紹介しています。

そんなトピックの中から、私も興味深く思った話題をいくつか紹介します。

不公平な世界の方が安定する

完全平等なトレードゲームをしても、トレードを繰り返すとごく一部の大金持ちとその他多数の貧乏人が生まれます。これは「ボルツマン分布」と呼ばれるもので、数学的に自明な結果です。

平等さを突き詰めると不平等になるのは自然なプロセス。しかし、多くの人は統計的事実に気付かずに平等主義や民主主義の理想像に憧れてしまうのです。

自分の話をすることは快楽

爆発に増えているSNSやブログ記事。本ブログもそんな中の一つなわけですが、なぜ、わざわざ自分のプライベートを暴露するのでしょうか?
それは、「自己暴露は快楽であるから」。これは、基本的な脳生理です。

上流階級ほどモラルが悪い

下流層の人は素直に真実を告げて志願者と交渉する傾向がある一方、社会的ステータスの高い上流層は事実を隠し自分に有利にことを進めたがる傾向があります。だましてでもいいから、自分に有利に交渉を進める。これがステータスの高い人の特徴。特にお金に関しては顕著にその結果が表れます。

人の心を動かす言葉とは?

同じことを表現していても、「言葉の使い方」で人は大きく心を動かされます。相手に自分の要望を聞いてほしかったら、できるだけ相手の言葉にヒットする言葉を選びたいものです。
例えば、以下のように表現すると、相手に強く伝わるようです。
・犯罪なんてしないで → 犯罪者にならないで
・怠けないで → 怠け者にならないで
・いつも笑って → にこやかな人になって
・無駄をしないで → 浪費家にならないで

手を握るだけで記憶力は上がる

左の前頭葉は「覚えること」、右の前頭葉は「思い出すこと」に関与します。
故、覚える前は右手、思い出すときは左手を握ると記憶力が高まります。

直感は正しい

自然界では直観的な判断は命に係わります。理詰めで熟考する暇はありません。長く厳しい自然淘汰を経て洗練されてきた直観は、進化的に正しさが保障されているに違いありません。
人はつい、自分の意思決定の能力に、動物とは異なる大層な「知性」を想定しがちですが、私たちの直感は生命進化の産物そのものです。

人は本来、「善」なのか「悪」なのか

人の善悪を考える前に、素早く動く時には「直感」と「反射」が関係しますが、どちらが反応が速いでしょうか。それは「直感」。わずかですが直感の方が速く反応します。「直感」は生命の本質に根差した瞬間的な判断でです。一方、「反射」は思慮する時間がある分、文化的要因や環境的要因が反映される余地があります。

実験から、直感的に決定すると自己中心的な行動よりも他人を利する行動が増えます。この結果から、人は生まれながらにして「善」であることが伺えるのだとか。一方、「悪」は直観的な結論を一歩踏みとどまって「考える」ことから生まれのです。

直感は善、反射は悪なのです。なるほど、思い当たる節が私にもあります。