日本を代表する大企業「トヨタ」
そのトヨタが2009年からの5年間、法人税を払っていなかったという。トヨタは最高収益を更新するほど儲かっていた期間なのにである。

その理由は何なのかを明らかにするのが本書。著者の大村さんは、トヨタの法人税未払いのからくりを「パナマ文章を超える日本経済最大のタブー」だと言い、「極論をすれば、デフレ不況もトヨタが起こした」とも発言します。

ではなぜ、トヨタのやっていることが見えてこず、批判されないのか?理由は、「トヨタは日本最大の企業であり、巨大な広告主でもあるので、普通のマスメディアではトヨタを批判することは非常に難しいから」です。

では、そのトヨタの実態はどうなのか?

受取配当の非課税化
研究開発減税
消費税の導入/消費税増税の推進
輸出戻し税
消費税
エコカー減税
労働派遣法の改正    等

著者は、トヨタに有利な制度が次々と導入されている実態を明らかにしています。

かなり衝撃的な内容で、本書を読んで、トヨタに関する見方が変わりました・・・
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トヨタが5年間も税金を払っていなかった最大の理由

トヨタが2009年より5年間も税金を払っていなかった最大の理由は、2009年に始まった「外国子会社からの受取配当の益金不算入」という制度にあります。

本制度は、現地国と日本での二重課税を防ぐという建前のもとに成立しています。しかし、一般的に法人税が20~30%程度であるのに対し、配当課税は10%程度と安いのが実態。つまり、海外で稼いだ利益に対する実質的な税金が少なくて済むのです。

トヨタはこれまで生産拠点を次々と海外に移し、「受取配当の非課税」の恩恵を受けてきました。これにより、トヨタ本社の営業だけによる収支は赤字でも、海外子会社からの配当で黒字化しています。
この制度は多国籍企業とっては税逃しがしやすくなる制度であるが故、企業の海外移転を加速させることにもつながっています。これは、国内の雇用が奪われ、日本経済の縮小にもつながっています。

これだけでなく、トヨタは税金逃れのためにタックスヘイブンをうまく利用しています。例えば、トヨタのヨーロッパの統括本部は、配当所得やロイヤリティー収入などに関する税金が非常に安いタックスヘイブンであるベルギーにあります。ちなみに、ベルギーには生産拠点はありません。

研究開発減税というトヨタ優遇制度

現在もトヨタの実質税負担は通常より小さいのが現状です。その最大の要因は2003年に導入された「研究開発費の減税」です。これは、研究開発をした企業はその費用の10%分の税金を削減しますよという制度です。

2014年、トヨタはこの制度により1201億円の減税を受けており、本減税利用額の全体の20%をトヨタ一社で使用しています。これは、まさにトヨタのための制度と言われても仕方ない状況です。

研究開発減税を行えば、投資が積極的に行われるというのが導入の理由ですが、企業によって大事な支出は他にもたくさんあります。経済全体にとってみると、研究よりも雇用の方が大切なはずです。しかし、雇用については、2003年からもともと非課税であった「退職給与引当金」に課税が行われるなどなど、増税が行われています。これにより企業は退職給与のための積立を減少・廃止しています。これは、雇用者の老後を不安定にしているといえます。

エコカー補助金で4000億円の恩恵

景気対策として行われてきたエコカー減税に、国は9300億円もの補助金を出してきました。これは待機児童予算の2倍にも当たります。
中でもトヨタのハイブリッド車の販売台数が多かったことを考えると、約半分の4000億円程度はトヨタ車購入に支払われたといえます。しかも、トヨタはこの特需終了とともに、期間工11,000人を解雇しています。

消費税増税によりUPする「輸出戻し税」

消費税の導入とともに、従来、高かった自動車に関する税が相次いで廃止。縮小され、結果的に自動車に関する税金は総額で減っています。

経団連は消費税増税にも賛成しています。その理由の一つには、消費税増税と引き換えに法人税減税がが見込まれるからですが、それだけではありません。「輸出戻し税」による益税が見込めるのです。
輸出戻し税とは、企業の売上の内、外国への輸出では消費税は取れないので、その分の仕入れ原価に掛かる消費税分が国から還付される仕組みです。トヨタは年間3000億円もの戻し税を受け取っています。

雇用や賃金の面でも非情なトヨタ、非正規社員は利益調整弁に

アベノミクスでトヨタがベアアップに応じたことで称賛されたかのように見えますが、実際は、従業員の賃金を安く抑え込み、非正規従業員を自社の都合によって増減させ、経営を維持してきました。

労働派遣法の改正で恩恵を受けたのもトヨタです。トヨタは非正規雇用者を利益調整弁としてきました。

正規雇用者のほとんどは、厚生年金に加入していないため、年金も少ない。人によっては、国民保険も支払っておらず、そうなると年金がもらえません。現在非正規雇用者は1900万人にものぼり、20年後には、2000万人を突破するとも言われています。

なぜ、トヨタがここまでトヨタ優遇税制の恩恵を受けられたか?

トヨタは日本の経済政策や税制に大きな発言力を持ちます。政治献金も大きく、自民党献金の1位と4位がトヨタ関連で占められています。たかだか1億数千万円の献金で、日本全体の税制を変えているといえます。

確かに、本書の内容は日本人にとってはパナマ文章よりインパクトがありました。是非、読んでみてください。

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