「不倫」という言葉を聞いて、あなたはどうお感じになりますか?
不潔と感じる人もいれば、自身が当事者でドキッとする方もいることでしょう。
不倫は、発覚すれば、社会的信用、家庭崩壊を招く可能性もある危険な行為。社会的・経済的・精神的損失を考えると失うものが甚大だととわかっているはずなのに、ハマってしまう方はたくさんいます。
では、なぜ、男女とも社会から叩かれるリスクがあるにもかかわらず、なぜ不倫をやめないのでしょうか。
今回紹介の著書「不倫」は、不倫は危険とわかっているのに手を染めてしまう理由を脳科学者の中野信子さんが脳科学的知見から解き明かした一冊。その謎を解き明か面白い本です。
今回は、脳科学・遺伝子から「不倫の謎」を学びます。
目次
不倫は減らない・なくならない
不倫は危険です。しかし、不倫は減りません。その謎を解くカギは「脳」にあります。
不倫はなくならない理由
近年の脳科学の劇的な進歩によって、様々なことが解明されてきています。その一つとして明らかになったことは、人間は「一夫一婦型」ではない生き物だということです。
事実、人類の祖先を含む哺乳類の多くは「一夫多妻」や「乱婚」です。そしてそれをつかさどっているのは「遺伝子」です。
不倫遺伝子
俗に「不倫遺伝子」と呼ばれる遺伝的な変異があります。
アルギニンバソプレシン(AVP)という脳内物質の受容体の方で、私たちは「貞淑型」か「不倫型」かに分かれます。この違いは、たった1つ、塩基配列が違うだけなのですが、「貞淑型」か「不倫型」で、性的な振る舞いが大きく変わってしまいます。
なんと、私たち人類の約5割は「不倫型」の遺伝子を持っているのだそうです。
現代社会では、「不倫=悪」。このような社会倫理観が出来上がったのは、長い進化の歴史から見るとごく最近のことです。
不倫に対するバッシングはなぜ凄まじいのか
テレビ・雑誌では、絶えることなく、有名人の不倫が報じられています。当事者、関係者でもないのに、なぜ、有名人の不倫が発覚すると凄まじいバッシングが起きるのでしょうか。
フリーライダーを許さない
私たちは、フリーライダー、つまり、ズルをしておいしい思いをしている人に対して、「社会的な制裁を加えたい」という人間の本質的な欲望があります。
共同体を維持するには、規律を乱すズルする人を放置することはできません。共同体をうまく機能させるためにも、ズルい人を早期に見つけて、叩きのめすことが「正義」であると信じて、バッシングを繰り広げます。
バッシングという快楽
ズルはゆるさないという欲望以外に、私たちは、脳科学的にバッシングに快楽を感じることもわかっています。
さらに、日本人は不倫に対するバッシングが激しい傾向があることもわかっています。
私たちの社会では、「妬み」という感情が、ズルしている人をあぶりだす装置として機能していますが、この妬みの感情は脳内物質「オキシトシン」によって高まります。オキシトシンとは、「幸せホルモン」とも呼ばれる物質です。
日本人は、世界においてもオキシトシンへの感受性が高いため、結果的に、ズルしている人のあぶり出し機構が働きやすく、バッシングも強くなりがちなのです。
【参考】脳内物質について知るおすすめ本
オキシトシンなど、脳内物質について知るには、以下の書籍も非常に参考になります。
「幸せ体質」になるためにも読んでおいて損のない本です。どちらもおすすめです。
最後に
今回は、中野信子さんの著書「不倫」から、人類進化のミステリーに迫る「愛と背徳の脳科学」の真実を学びました。
本書では、これ以外にも不倫をめぐる謎が、科学的エビデンスとともにいろいろと紹介されています。私たちの思考・行動をつかさどる脳に興味を持つのによい本ではないでしょうか。