人は必ず老いる。人間は老いから逃れられません。「人生100年時代」が現実となった現代では、「いつまでも動ける」ことの重要性がますます高まっています。
超有名ダンサーTRFのSAMさんと言えば、まだまだお若い印象がありますが、 1962年生まれで「60歳」を超えていらっしゃいます。そんなSAMさんが自分の健康に不安を感じつつある中で出会ったのが、「ジェロントロジー」。
健康は1日にしてならず。これからの時代は、老後の健康も二極化。若くして健康・加齢について学んでおくことが、将来の幸せにつながります。
今回は、SAMさんの著書「いつまでも動ける。」からの学びを紹介します。
目次
運動・ダンスの本ではない。加齢とともに生きるための本
ダンサーSAMさんのイメージから、本書は「動ける体を維持するための運動本」と思われたかもしれません。確かに、「読者限定:運動動画」などもついていますが、メインテーマは人間がポジティブに年をとるために大切な学問「ジェロントロジー」です。
ジェロントロジーとは
ジェロントロジーは、自分らしく、かつ、健康に生き続けるための学問「加齢学」です。老化による体の衰えを知るとともに、何歳になっても楽しく・輝いて生きる生き方を知る学問です。
人生100年時代(高齢化社会)では、商品・サービスを企画するにあたっても、「人はどのように年を取るか」を知ることが大事になります。
これは、単に、建築のバリアフリー設計などにとどまりません。日本では、このような学びが遅れています。早く学ぶことが、ビジネスマンとしても、一人の人間としても、より幸せに生きるための助けとなります。
長寿の秘訣
現在、「人間の生物学的な寿命の限界」は120歳ぐらいと考えられています。ジェロントロジーでも長寿なお年寄りの研究、「長寿の秘訣」が重要視されます。
① 適度な運動を続ける
② 腹八分目に抑える
③ 植物性食品を食べる
④ 適度に赤ワインを飲む
⑤ 目的意識(生きがい)を持つ
⑥ 人生を上手にスローダウンする
⑦ なんらかの信仰心を持つ
⑧ 家族を優先する
⑨ 人とのつながりを大切にする
これらをさらにまとめると、ポイントは2点に集約できます。
❶健康的な生活習慣を保つ(「運動」「食事」「睡眠」の習慣がカギ)
❷健康的な生活習慣を送る「コミュニティ」の一員となる
つまり、「運動」「食事」「睡眠」「コミュニティ」の4つを制することができれば、ポジティブに年齢を重ねられるのです。
【わたくし事】ダンスで体・心・脳の幸せを実感
私は、運動が好きで、週6日はジムに通っています。「健康のため!」と自分に鞭打って運動しているわけではなく、単純に、ダンスが心から楽しいからです。カッコよく踊れる云々出なく、楽しい。楽しいからやることで、体も心もポジティブな状況を維持できます。
人は太古より、皆で輪になってダンスを楽しんできましたが、「人が幸せに生きるために必要だったから」だと、腹落ちして理解できます。
人はなぜ年をとるのか
人は、なぜ、年をとるのでしょうか。
老化のスピードは遅くできる
人が年を取る説として、代表的なものが4つあります。
❶生活代謝説 : 酸素代謝が速いほど寿命が短くなる
❷体細胞突然変異説: 誤ってコピーされたDNAが蓄積する
❸フリーラジカル説: 体内の分子レベルの損傷が蓄積
❹カロリー制限説 : カロリー制限で寿命が延びる
学者でもない私たちが、これら4つの説から学ぶべきことは、「体が衰えていくスピードは、環境次第で大きく変わる」ということです。以下の本でも、「長寿は環境次第」であることが力説されています。
もちろん、遺伝的な要素からの影響はありあすが、食生活を改めたり、ストレスを減らしたり、老化のスピードを遅くするためにできることはたくさんあります。若いうちから、スピードが遅くなるように生活することが大事です。
「心も年をとる」と知る
体と共に、心も年をとります。若い人と年配者で、どのような志向・思考を持ちやすいかを理解しておくことも大事です。知ることで、生きやすくなりなす。
未来志向型:新しいことへのチャレンジ。若い人たちに多い思考
現在志向型:守り重視。新しいことより、今ある環境・関係を大切にする
現代社会では「守り重視な志向・思考」は、意欲減退でチャレンジしなくなるからよくないとされますが、そういう傾向があると知っておけば、老後も「年老いて、やる気もなくてダメ…」と自分を卑下することなく、「意識的にチャレンジしよう」と考え直すこともできます。
脳も年を取る。なぜ、忘れっぽくなるのか
体・心以外に脳も年をとります。忘れっぽくなります。
「忘れっぽくなる」というと、「一度インプットした記憶が消えてしまう」ようなイメージがあります。しかし、 実は、インプットする時点で問題がある場合が多いと言われます。
記憶のプロセスは、以下の3プロセスがありますが、❶覚える段階でつまづいてしまうのです。
❶記銘:覚える。脳への情報のインプット 年を取ると、ここでつまづく
❷保持:脳がその情報を維持し続けること
❸想起:脳の中にある情報を引き出す「思い出す」こと
❷の保持力そのものは、一般的に脳卒中やアルツハイマー病など脳に問題がある場合をのぞいて、年齢の影響を受けないといわれています。
では、❶記銘でのつまづきを減らすにはどうしたらいいのか?それは、「ストレス」を溜めないことです。頭がストレスでいっぱいだと、大事なことも上の空になりませんか?年を取ると、若い時以上に「ストレスは大敵」です。
まだ、老人という年齢ではなくとも、「最近、大事なことまで忘れてしまう……」と感じる方は、自分のストレスと向き合ってみましょう。
心・体・美のバランスを保つ
いつまでも若くいるヒントは、「心・体・美のバランス」です。
これらは連動しています。太った人が痩せると、心もアクティブになりますが、これは3つが連動しているからです。バランスを保つように心がければ、周囲の人からも若く見られます。
鍛え、心を育み、いつまでも動き続ける
高齢になると、体・心・脳も若い時のようには動きません。でも、気持ちの持ちようでポジティブでいることはできます。
大事な考え方が、「一人ひとりが社会を支える一員として、今の自分に何ができるのかを考え生きる」ことです。つまり「働き続ける」ことです。
若い時のように働く必要はありません。よりよく年を取るには、世の中の役に立つこと考える。「働く」を単なる収入源と見るのではなく、コミュニティに参加し、社会とのつながりをもつための手段としてとらえればいいのです。
健康・長寿に「コミュニティ」
「長寿の秘訣」では、、ポジティブに年齢を重ねるには、「運動」「食事」「睡眠」「コミュニティ」の4つが大事と述べました。ジェロントロジーでは、仕事を引退した後に住んでいる地域・コミュニティとつながる必要性を強調しています。
社会とのつながりを持ち続けることはなぜ大事か
ジェロントロジーでは、コミュニティに定期的に(週に1回程度)参加することを勧めています。
コミュニティで誰かと接し続けることは、以下のような「長生き作用」をもたらします。
・会話で脳を使える。発声でお腹・表情などの筋肉を使う
・コミュニティに出かけることこと自体が、体を動かすことにつながる
・コミュニティから情報を得ることで、行動の選択肢が増える
・自身の健康を維持することを気にかけるきっかけになる
・不安があればそのコミュニティのなかの身近な人に相談できる
日本の老人は孤独化しやすい傾向があるので、特に注意が必要です。現役時代、真面目過ぎるビジネスパーソンは趣味すら持っていない人も多いですが、これでは、出かけるきっかけがつかめません。若いうちから趣味を持つことは大切です。趣味にチャレンジしていくことで、新しい出会いや広がりが生まれます。
自分の加齢を受け入れる
自分の加齢を受け入れることも大切です。年をとることは悪いことだけではありません。年をとることで伸びていく能力もあります。
流動性知能 | 新しい情報を獲得し、それをスピーディーに処理する知能 年をとるにつれて衰える |
結晶性知能 | これまで経験したことや勉強したことから獲得していく能力のこと 60歳頃まで上昇し続け、その後もほとんど低下しない |
若い頃には理解できなかったことが、年をとって初めて理解できたことはないでしょうか?
ジェロントロジーでは、この結晶性知能を活かして、創造性のある活動をすることが、心身の健康につながるのではないかと唱えています。
自信が美しさをつくる
年をとることにネガティブなイメージがあるのは、若さを基準とした理想的な「美」から遠ざかるからです。しかし、「美」は外見的な美しさだけではありません。性格、行儀作法、生き方と「美」は多方面に及びます。
外見=表面だけの美は、いずれほころびが出ます。しかし、素敵に年齢を重ねた人には、身体からにじみ出る「美」や「カッコよさ」があります。歳をとって諦めるのではなく、そのような美を追求していけばそれでいいのです。なお、この「カッコよさ」の追求のためには、時代の流れに追いつく意識も大事です。
最後に
今回は、SAMさんの著書「いつまでも動ける。」からの学びを紹介しました。
どう頑張っても、人の体・心・脳は衰えます。しかし、楽しく無理のない範囲で老化に抗う=社会とつながり、チャレンジしている人は、たとえ「美」は衰えようと、カッコよくて素敵です。
そんな人を目指すなら、若い時からの運動・食事・睡眠の習慣を整えることが必須です。これ前読んだ本の中から、運動・食事・睡眠に関するおすすめ本を1冊ずつセレクトしました。合わせて読んでみることをおすすめします。