【書評/要約】怖くて眠れなくなる植物学(稲垣 栄洋 著)(★4) 植物の生存戦略、人間との共存・戦いなど、面白トピック満載!
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殺しても、蘇るゾンビ。ちぎれても再生する怪物… こんなのがいたら身近にいたら恐怖です。
しかし、そんな再生する生き物が身近にいる。
それが「植物」です。

人は事故で手足を失うと再生されることはありません。しかし、ベランダガーデニングしているハーブ等を剪定して花瓶にさしておくと、あれよあれよと根っこが生えてきます。人ができない組織の再生を難なくやり遂げる。これはすごい!と思いながら、日々、デスク上に飾った花瓶を楽しく観察しています。

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さて、今回紹介の稲垣栄洋さんの「怖くて眠れなくなる植物学」は、植物を「怖さ」をテーマに面白く解説してくれる一冊。身近の内容が多いながらも、生態系、進化学、経済、歴史に纏わる話題があって、大変面白く読めます。

今回は、本書から、面白いなと思ったトピックのごく一部を紹介します。

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植物に対する恐怖

【書評/要約】怖くて眠れなくなる植物学(稲垣 栄洋 著)(★4):植物に対する恐怖

うっそうとした深く暗い森の中に分け入ったとき、私たちは言い知れない恐怖に襲われます。「森には魔物が住む」と言ったりしますが、古来より人は、深い森に人間を寄せ付けない「異世界」を感てきました。

一方、両脇が木々で茂った参道を歩いて、神社を参拝すると、心に「静寂」が訪れます。特に、一際大きい大木「ご神木」を前にすると、古(いにしえ)を感じたりもします。

このような大木・森林に対する感情は何なのか?

これを感情を表すのにピッタリな言葉が「畏怖」。 「畏」は恐れる、「怖」はズバリ怖いという意味ですが、これらの言葉には「敬い、かしこまる」という意味もあります。

人類は太古の昔から、植物に対して、測り知しれない、どこか人智の届かないものを感じていたということなのでしょうね。

植物の生存戦略

【書評/要約】怖くて眠れなくなる植物学(稲垣 栄洋 著)(★4):植物の生存戦略

幹を折っても、根元から倒しても、何事もなかったかのように再生してくる。これは、植物の「再分化という生存戦略」です。

何度でも蘇る 不老不死の生き物

生き物は、生物の基本構造である「細胞」で構成されていますが、人間の場合、各細胞には脳・手・臓器といった役割を持っています。これが「分化」です。

しかし、植物は、あらゆる器官になるための情報をDNAに備えた細胞を持っています。そして、傷つくと「カルス」と呼ばれる分化していない細胞が、「脱分化」により傷を修復します。そして、「再分化」により芽・根・枝などを再生させます。まさに、植物は不老不死な生き物なのです。

植物クローン!?

植物は一般的に「タネ」から育てます(種子繁殖、有性生殖)が、中には体の一部を分離させて増えるのを得意とする植物もいます。「挿し木」などで増える植物ですが、これはまさに、植物クローン。この分身の術による増殖を「栄養繁殖」「無性生殖」と言います。

「個」が明確にある人間と違って、植物は「命」「寿命」という概念がはっきりしないということです。これはなかなか面白いです。

無性生殖はコストが安いが…

さて、分身の術で増えることができる植物もいますが、一般的には、植物は、花を咲かせて有性生殖をおこないます。ではなぜ、無性生殖に比べてコストがかかる有性生殖を行うのか?

それは、分身して細胞分裂を繰り返す(遺伝子のコピーを繰り返す)と、コピーの質が悪くなっていく=遺伝子の情報が失われたり、性質が衰退してしまったりするからです。

自家培養ヨーグルトの菌の劣化

適切な例かわかりませんが、内では、ヨーグルト1個で牛乳1本✕2回 でヨーグルト自家培養をして、ヨーグルト代の節約をしていますが、2回、3回とヨーグルト菌を使い回すとヨーグルトが固まらなくなるんですね。これは菌の劣化ですよね。

有性生殖のもう一つのメリット

さらに、無性生殖は大きなデメリットがあります。クローンはすべて同じ性質のため、苦手とする環境下に置かれると、一気に全滅するリスクがあるからです。

しかし、有性生殖は、個✕個の遺伝子交配で子孫を作るため、それぞれ微妙な個性が生まれます。人間が一人一人違うのと同じです。これにより、環境が変化したとき、全部は生き残れなくとも、一部が生き残る可能性が高まります。

先日、著書「多様性の科学」を読んで、いろんな人がいることの重要性を腹落ちして理解しましたが、人も植物も生き残り戦略の観点からも「多様性」が極めて大事なことがよくわかりました。

大木と草、どちらが進化系?

では、大木になるような植物と、小さな草では、どちらがより進化した形なのでしょうか。

100年、1000年と生き続ける大木の方が進化した形と思った方も多いと思いますが、実は、小さな草である一年草の方が、進化の過程では比較的新しく出現した植物なのだそうです。

では、なぜ、一年以内に枯れるように進化する必要があったのか?

これも、変化への対応のため。長生きをするよりも、早く次の世代にバトンを渡す方が確実だからです。それが一年草の生存戦略です。「死ぬ」ことで、永遠の命を手に入れたわけです。

生命の進化って、とても、哲学的で面白いと思いませんか!?

人と植物栽培(農業)

【書評/要約】怖くて眠れなくなる植物学(稲垣 栄洋 著)(★4):人と植物栽培

世界でもっとも栽培されている植物はトウモロコシ

世界でもっとも栽培されている植物は「トウモロコシ」。

いやいやそんなにトウモロコシ食べてないって!と思われた方も多いと思いますが、現代人の体の40%は、トウモロコシから作られていると言われているのだとか。それは、食糧だけでなく、家畜のえさ、ダイエット食品のて難消化性デキストリン、工業用のアルコール、工業用糊、プラスチック、バイオエタノールなど、様々なものがトウモロコシから作られているからです。

私たちの生活はトウモロコシなしには成立しません。2022年現在、ロシア・ウクライナ戦争で、世界各国で食糧危機が深刻な問題になっています。このまま戦争が継続すると、さらに問題は深刻化します。

人間と栽培植物のGive&Take

人間は、欲望に任せてさまざまに植物を改良してきました。一方的に、人間の欲望で植物が操られているようにも見えますが、実は植物にとっても人間は役立っています。

それは、人間は船や飛行機を使って、難なく種子を運び、世界中に分布を広げてくれるからです。さらに、種子をまき、水を与え、肥料を与え、害虫や雑草を取り除いて、世話をしてくれます。その効果は、昆虫・鳥以上です。

自然界を生き抜き、分布を広げようと進化を重ねる苦労に比べれば、人間の欲求に合わせて、姿や形を変えることなど、植物にとっては何でもないことだったのかもしれないと稲垣さんは言います。人間が植物を利用しているという考えは、思い上がり。人間の方がまんまと利用されているかもしれません。

農業の進化のきっかけ

人類史では、農耕が「貧富の差」を生む原因となりましたが、ここには、種子の落ちない植物が極めて大きく関与しています。

自然界では、種子ができて実が熟したり種子が育つとそれらは落下してしまいます(脱粒性)。種子がそのまま残っていれば、収穫が簡単ですが、実が落ちると農耕上は極めて不利です。しかし、人類は、突然変異で生まれた、種子の落ちない非脱粒性種子を見つけました。これが「人類の農業の始まり」と言われています。

雑草は抜くほど増える

抜いても抜いても生えてくる雑草。実は、抜くほど増えるって知ってました?

雑草と呼ばれる植物は、他の植物との競争に弱い植物です。そのため、植物がたくさん生えているような場所では生存できません。代わり、雑草は他の植物が生えないところ、例えば、草取りが行われる庭や畑で生きることを選びました。

では、なぜ、抜くと増えるのか。それは、草刈りは根を再生させるからです。また、雑草の種子は光が当たると芽を出すものが多い。結果、草むしりをするとお日様が当たってさらに増えてくるわけです。

とはいっても、庭・畑の場合は、草取りをしないわけにはいきません。人類は、もうこうやって一万年以上も雑草と戦い続けているわけです。「人類の農耕の歴史は、雑草との戦いの歴史」。なかなか、壮絶な闘いですね。

最後に

今回は、稲垣栄洋さんの「怖くて眠れなくなる植物学」からの学びを紹介しました。
しかし、紹介したのは、ごく一部に過ぎません。以下の通り、面白いトピックが並んでいます。

・アサガオの成長が早いのはなぜか(これも生存戦略)
・ガジュマルの下にツルを伸ばす生存戦略
・ホテイアオイが「ビューティフル・デビル(美しき悪魔)」と呼ばれる理由
・植物は逆立ちした人間(口ともいえる根を土に突っ込み、生殖器と言える花が上にある)
・植物に存在する感情
・墓場に彼岸花が多い理由(実は、ヒガンバナには種子がない、ということは…)
・なぜ、柳の下には幽霊?(生命力が高く、湿った場所を好む。江戸で植えられた理由は)
・四つ葉のクローバーはなぜ出現する?
・伝説のケセランパサランの正体
・実は森は、ナウシカの腐海のように毒を出している(フィトンチッド)
・トリカブトの毒による暗殺は世界中で行われてきた歴史がある
・人間を魅力する魅惑の味(コーヒー、紅茶、ココア、唐辛子)。なぜやめられない?
・ナス科植物には毒がある
・ミツバチがいなくなったとしたら、人類は4年以内に滅ぶ

身近な植物がたくさん出てくるので面白く読めます。ただ面白く読めるだけでなく、進化学、経済学、心理学、歴史、生態系など、様々な分野に通ずる内容で、さらなる興味を沸き立たせます。他分野にわたるということは、人間は植物なしでは生きられない証とも言えます。

そもそも、植物は、「光と水と土」だけで、生命活動をし、そして、私たちに多くの恵みをもたらしてくれます。そして、食べ物を摂取し続けなければならない動物に対して、植物は、とても高度な生き方をしているとも言えます。こんな風に考えると、植物に興味がもてませんか?そんな興味をくすぐる一冊になれる本だと思います。

是非、実際に本書を手に取ってたのしんでみてください。

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