【書評/要約】0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書(落合陽一 著)(★5)

人生100年時代には、これまでとは違う「生き方」が求められ、それにあった「学び」が必要になります。

特に、デジタルネイチャーな世代の幼児期の教育方法は、これまでと学校教育と異なる額手法が求められます。なぜなら今の学校教育に則った学び方では、彼らが大人になる時代に通用する人材とはなり得ず、AIに駆逐される側と化してしまうからです。

本書「0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書」は、メディアアーティストとしてだけでなく、経営者、さらには筑波大学准教授という教育者としての顔をもつ落合陽一さんが、これからの人生100年時代に対して、学び続ける人をどうやって育てるかを提案する一冊。タイトルに「0才から100才まで」とあるように、学生、社会人、生涯教育など、あらゆる世代に対し、学び方を提案しています。

特に、現在のデジタルネイチャー時代の幼児期の教育方法や、さらには、今の大学の選び方・学び方など、これからの時代の教育について、親世代が学び意義は大きい!

中でも、これからの時代を生きる子どもをどう育てるのか?子どもの教育に戸惑っている親御さん、これから大学受験を迎えるお子様をお持ちの親御さんは必読の書。もちろん、親世代の古い価値観を変えるために、すべての大人が読むべき良書です。

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人生100年時代の「新しい学び方」とは

人生100年時代の「新しい学び方」とは

小さなお子さんをお持ちの親御さんは、子供をどう学ばせれば幸せになれるか考え、十分な教育をさせてあげたいとお考えでしょう。
しかし、親世代の古い頭で親の子供の教育を考えると、子供のためにならない可能性があります。

今の学校教育はいらない:親に求められる価値観変化

時代が変われば、学び方も変わる。

と言われて、そんなこと当たり前でしょと思う方は多いはずです。しかし、そう思っている当の本人が、古い頭(価値観)でAIと共存して生きていかなければならないデジタルネイチャー世代の子供の教育を考えているが実態です。

今の学校教育はいらない

落合さんは、今の学校教育には否定的です。ただ真面目に勉強して優秀な成績をとるためだけの勉強を続けている限り、子供が大人になるころには、AI時代で駆逐される側に回ってしまうからです。そんなことはすべてコンピューターがやってしまいます。

故、親は、デジタルネイチャーキッズに適した「新しい学び方」を子供に与えてあげる必要があります。

大事なのは「戦略」と「柔軟な思考訓練」

学ぶために必要なのは、こて手先の「戦術」ではなく、基本となる「戦略」。そして、タダ覚えるだけの学習ではなく、「柔軟な思考訓練」です。

本書では、落合さん自身が親にどのように育てられ、結果、どのように育ったか紹介されていますが、それは大きな気づきを与えてくれます。「勉強しなさい!」と声を張り上げなくても、自ら勝手に好きなことを学んでくれるような子供を育てるヒントが詰まっています。このスキルは、何歳になっても好奇心旺盛に学び続ける人になる素地をも作ってくれます。

若いうちにどれだけ学び、実践したか

若いうちにどれだけ学び、実践したか

何歳になっても新しいことを身に着けられるスキルは、若い時にいかにたくさん新しいことを習得しようとし、実践したかにある

ただ学ぶだけではだめです。実践=行動を起こすことが大事です。行動を起こせば、さらに学びたいことが沸いてきます。このループが何歳になっても新しいことを学び、身に着けるスキルとなります。

人間が持っている「本当の能力」に大差はありません。差が生まれたのは、「学ぶ⇒実践する」のループをどれだけたくさん経験したか。この経験により物事の取得が速くなった結果が、大きな差になるのです。

いろんなことに疑問を持って調べ、それを日々の血肉としたか。人間の能力の差の大部分は、経験によってもたらされる

幼少期、これができる環境が与えられていたかは、「親」に依存します。

STEAM(スティーム)教育が目指すもの

STEAM(スティーム):STEMにアート(Arts)を追加した教育

本書では、STEAM(スティーム)という教育方針が紹介されています。

STEAM(スティーム)とは

STEAM(スティーム)とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)のそれぞれの単語の頭文字をとって名付けられた教育概念です。

技術革新が進み人工知能AIの影響で世の中が大きく変化する中で生まれた教育概念で、2013年にオバマ大統領がアメリカの国家戦略として掲げたことで話題にもなりました。

アートが必要な理由

では、科学、技術、工学、数学に芸術が加えられ5科目となっているのはなぜでしょうか。

STEAM:各科目のもつ役割

科学:子どもがさまざまな物事に好奇心を持つための役割を担う
技術:ログラミング学習等によって「論理的思考力や課題解決力」を養う
工学:産業で必要となる「生産力」や「空間的把握能力」の育成に役立つ
数学:公式などの法則に触れ、「論理的思考力」を養いう
芸術:自由な発想力や想像力を育み、作品を生み出すことで「創造力」を育てる

科学、技術、工学、数学の学問は論理的な学問です。論理(ロジック)がベースとなる学問やそれを活かしたプロダクツはAI時代においてはAIやロボットで代替が可能になっていきます。

こんな時代に大事なのが、「発想力」や「想像力」

そこで必要となるのが「芸術」で、自由な発想力や想像力を育み、作品を生み出すことで「創造力」を養います。そして、自分のイメージや考えを言語化し、表現する・伝える力をも養うのです。

これら5つの科目が相互に結びついて、今後のIT社会に順応した競争力のある人材に育てていくことが可能になります。このような学びは、子供だけでなく、大人にも求められます。

アートをどう学ぶか?

では、アートな発想力・想像力はどのように学べばよいでしょうか?

落合さんは以下のように提案しています。

僕は学生にアートを鑑賞する時は、まず最初に、とにかくまっさらな心で見ることを指導しています。そこで得られた印象や感覚を 「これはなんだろう?」「これはこういうことかな?」と言語化して解釈します。

この時に大事なのは、自分の中に、自分なりのコンテクストを持つことです。鑑賞したアートを、自分の中の文脈と照らし合わせて考えて、論理的に言語化することと、五感を使って感じたことをバランスよくすることが大切です。

日本の教育は「詰め込み教育」。受験教育がメインで、「覚えること」「正解すること」が重視されます。しかし、アートには正解も不正解もありません。

今後の教育に必要なのは、「何を覚えるか」ではなく「どう学ぶか」。

社会に出てしまうと、事前に正解のある問題などありません。自ら課題を発見し、その課題に実践的に取り込み、学び続けるためには、「どう学ぶか」が大事です。

最後に

今回は、落合陽一さんの「0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書」の要点を書評としてまとめました。

時代がめまぐるしく移り変わっていく現代、教育のスタイルも時流に合ったスタイルへ変更していかなければならないのはごく自然なこと。これからのAI時代においては、論理的な思考と共に自由な発想力・創造力が必要であり、そのためには、前後関係を読み取ったり、状況・環境に依存してどんな意味があるのかを感じ取っていく学びが必要です。

なんとなく状況を見て、「わかった」と簡単に片づけてしまわないように意識したいです。

子供の教育のための良書

上記以外にもおすすめの本をの書評を紹介しておきます。この本を読んで、正直、いろいろ驚きました。親なら読むべき一冊です。

自分を変えたい働き世代向け良書

本書は、子育て世代の幼児教育論が中心でしたが、20~30代、40~50代をどう過ごすか、どう学ぶかについて深い洞察を得たかったら山口周さんの以下の本がおすすめです。劣化する社会をつくるオッサンにならないために、若いうちにどうすべきか、年代的にはオッサン世代になっても、どう学ぶべきか、参考になる提言が満載です。