【書評/要約】劣化するオッサン社会の処方箋~なぜ一流は三流に牛耳られるのか(山口周 著)(★5)

「最近の若いもんはどうなっているのか」とは、昔からよく聞くフレーズ。
でも、世の中を騒がす大きな不祥事の根源はいずれも「オッサン」です。

本書「劣化するオッサン社会の処方箋」の著者は、ビジネス書大賞2018年で対象を受賞した著書「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか」の 山口周さん。

本書でも、三流オッサンにより一流が駆逐される現代社会で進行する社会構造の闇に警鐘。この問題の根源とその処方箋を解説しています。

オッサンは、本書が指摘する問題のあるオッサンでないか知るために、若者は劣化したオッサンによって自分の将来をダメにさせられないためにも読んでくべき一冊。オッサンにも、若い人も理解すべき重要な気づきを与えてくれること間違いなしです。

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オッサンとは?

山口さんが本書でテーマとする「オッサン」とは、以下のような行動様式・思考様式を持った人のこと。古い体質の企業にいがちなオッサンたちです。

①古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
②過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
③階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
④よそ者や異質なものに不寛容で、排他的

事実、このような行動様式・思考様式を持った人たちが、隠ぺい、粉飾、パワハラ、暴力といった不祥事を次々起こしています。

組織トップは宿命的に劣化する

では、なぜ、オッサンによる不祥事が次から次へと起こるのでしょうか?

山口さんは、組織や社会で劣化が起こるのは、構造的に「必然」だと指摘。
組織は世代交代を繰り返しますが、その過程で、一旦、二流の人間が社会的な権力を手に入れると最後。二流のリーダーは三流のフォロワーで脇を固める一方で、一流、及び、自分よりできる二流を排除・抹殺。以降、優れた人がトップに就くことがなくなります。
ここでさらに世代交代が続き、二流リーダーに媚を売って信頼の貯金をしてきた三流のフォロワーがリーダーとしての権力を持つようになると、さらにレベルの低い三流のフォロワーが注意を固めるようになる…

組織はビジョンを失い、モラルは崩壊し、組織は劣化

かくして、組織はビジョンを失い、モラルは崩壊し、組織は劣化。組織の劣化は不可逆的に進行し、世代が変わるごとにリーダーのクオリティは劣化してくことになります。

これはまさに、現在の日本の多くの組織に起きていることです。

オッサン尊重の幻想

我々は、社会通念として「年長者を敬いましょう」と教えられます。事実、かつて、長く生きている人々の経験や知識は重要なものであり、それを持ち備えている年長者は尊重すべき対象でした。

しかし、山口さんは変化のスピードが早い現代においては「オッサン尊重は幻想」と指摘。現代では、年長者の生きるデータベースとしてのオッサンの価値は下がり、むしろ、新しい問題解決に長けているのはむしろ若者の方が優れていると指摘します。

確かに、現代では、生き字引の役割はgoogleの方が上。イノベーションを起こす発想を持っているのはオッサンより若者です。出世したから優秀なんだろうという考えは危険です。

オッサンかしないための処方箋

著者は、若い世代は、「良い学校を卒業して大企業に就職すれば一生豊かで幸福に暮らせると言う昭和後期の幻想とともにキャリアの階段を上ったオッサンたち」のようにならないために、そして、オッサンに対抗するために、40代以下の世代に以下のようにアドバイスします。

・オピニオン、エグジットをもつ
・「人的資本」+「社会資本」を厚くし、「モビリティ」を高める
・サーバントリーダーシップ~支配型リーダーシップからの脱却
・教養を磨く
・経験の「量」よりも「質」を重視して学び続ける
・何歳になっても挑戦し続ける

劣化したオッサン社会に革命を起こすには、おかしいと思うことはおかしいと意見する「オピニオン」、権力者の影響下から脱却する「エグジット」が必要です。さらに、汎用的なスキルや知識などの「人的資本」と信用や評判といった「社会資本」を厚くすることで、柔軟でしたたかなキャリアを歩む「モビリティ」を高めていく必要があります。

本書では、上記処方箋がページを割いて解説されています。是非とも読んでくべきでしょう。

感想

仕事を通じて、意義や達成感を感じられる状態であり続けるためには、結局のところ、どのような場所でも生きていけるために、スキル・知識を獲得し、今いる場所を「いつでも出ていける」といったしたたかなキャリア形成が必要です。

そのためには、「教養」や「質の高い経験」が必要です。

つまり、「学び続けること」、「チャレンジし続けること」が大切です。

しかし、今、20~30代の若者の4~5割が1ヵ月に1冊の本も読まない危機的な状況。さらに、ゆとり世代に代表されるようにチャレンジより安定を求める風潮があります。これでは、日本はさらにダメな国になってきます。

山口さんの本から学ぶことは多いです。是非、多くの気づきを得るために、オッサンはもちろん、若者にも読んでほしいです。