【書評/要約】ジムに通う人の栄養学(岡村浩嗣 著)(★4) 食事で運動効果は変わる!スポーツ栄養学を学ぼう

運動の効果を高めるにはどんな栄養・食事が良いのか―。

「栄養・食事」と「体を動かす」ことの2つの効果は相互に影響しあいます。運動の2大目的は、❶筋肉を増やす ❷体脂肪を減らす(痩せる)ですが、これら運動の目的をより確実に達成ためにも、栄養・食事法の知識は必要です。

岡村浩嗣さんの「ジムに通う人の栄養学」は、アスリートではない健康のために体を動かしている方が、日頃の運動と栄養・食事の効果を高めるのに役立つことを、科学的なエビデンスに基づいて紹介する「スポーツ栄養学の入門書です。研究の成果・効果が科学データと共に紹介されています。

今回は、本書からの学びを紹介します。

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食事で変わる!運動効果

【書評/要約】ジムに通う人の栄養学(岡村浩嗣 著):食事で変わる運動効果

健康に大事な「食事✕運動」。食事は生存に必須ですが、運動は必須ではありません。しかし、長く健康でいるには大事です。

ジム運動で効果を実感するときは、「筋肉がついた」「瘦せた」「体力がついた」ときですが、運動しても正しく食べないと、運動がしんどい割には、運動の効果な十分に得られません。運動で失われるのは「エネルギー」と「水分」。これらを適切なタイミングで摂取するのが大事です。

水分補給

成人の体重の60%は水分です。水分の多くは細胞内と細胞間質(細胞と細胞の間)に存在しています。

運動すると「体温が上昇」します。体温の上昇を防ぐ体の仕組みが「発汗」です。

この時、十分な水分を摂取しないとどうなるか―。

汗が出なくなり、体温が上昇し、結果、運動ができなくなります。トレーニングを継続するためにも、運動中の水分補給は大事です。五大栄養素を細胞間質を介して体の組織に運ぶのも「水」です。大事な水が不足しないように、こまめな水分補給が大事です。

栄養・エネルギー補給

人の主なエネルギー源は「炭水化物」と「脂肪」です。スポーツ栄養学においては、重要なエネルギー源は血中の「ブドウ糖」(グルコース)と筋肉や肝臓の「グリコーゲン」(エネルギー源として体に保存されている炭水化物)です。

ブドウ糖脳はの唯一のエネルギー源が血中ブドウ糖
脂肪がエネルギー源として利用されるためにも炭水化物は必要
グリコーゲン運動前の筋肉グリコーゲン量が多いほど疲労困憊しにくい
⇒運動の後半でも強度の高いトレーニングメニューをこなせる
・運動後に炭水化物を十分に摂ると翌日のトレーニングまでに体が回復
⇒回復ができないと、メニューをこなせる量が減っていく

運動効果を高めるためにも、運動中の血中ブドウ糖・グリコーゲンを不足させないこと大事です。しかし、体に貯蔵される「炭水化物」は多くありません。そのため、運動中に炭水化物を補給しないと血糖値が低下、運動の持続力にも影響を与えます。一方、脂肪(無駄な贅肉)を燃やすためにも炭水化物は必要です。

昨今、ご飯などの主食を食べない低炭水化物な食事がいいとされますが、しっかりトレーニングメニューをこなすには、炭水化物を食べない「高たんぱ高脂肪の食事」がいいということにはなりません。

栄養補給のタイミング

グリコーゲン回復のための炭水化物と、筋肉合成のためのタンパク質は、運動後の摂取タイミングによって効果が異なります。
どちらも運動後早めに摂取したほうが回復に効果的。これは、研究結果からも明らかです。

栄養素の基礎知識:五大栄養素と水はなぜ必要か

【書評/要約】ジムに通う人の栄養学(岡村浩嗣 著):栄養素の基礎知識

生物が成長・生存するには、五大栄養素が必要です。
五大栄養素は「体の構成成分」「エネルギーを作る」ことのどちらかに関わります

栄養素を「車」の構成部品に例えると

タンパク質   :車体 1g=4kca
炭水化物(糖質):燃料 1g=4kcal
脂質(脂肪)  :燃料 1g=9kcal
ビタミン    :エンジンオイル
ミネラル    :エンジンオイルおよび車体
水       :エンジンの冷却水

タンパク質と炭水化物

タンパク質は体を作りますが、必要量以上に食べれば消費できず、体脂肪として蓄。特に、運動しないでタンパク質の摂取量を増やすだけでは筋肉づくりは刺激されません。タンパク質だから…と食べ過ぎてはいけません。

一方、カロリー制限ダイエットなどでブドウ糖不足になると、筋肉や内臓のタンパク質が分解。アミノ酸からブドウ糖が合成(糖新生)することでエネルギーを確保します。これがダイエットしたときに起こる筋肉減少⇒基礎代謝の低下⇒食べると太りやすい体になる原因です。

ミネラル

ミネラルは、ビタミン同様、エネルギーはありません。ビタミンとの大きな違いは、ビタミンが化合物であるのに対し、ミネラルは「元素」。ミネラルは体内で作れないので食事で摂取が必須です。

ミネラルが豊富に存在するのが「海の水」です。海水で作られた「天然塩」を調味料に使えば、最もコスパよくミネラルを摂取できます。すごい塩」(白澤卓二 著)でおすすめの天然塩は、以下の2つです。

体にいいものを食べる簡単な方法

人の胃の大きさは大昔も今も変わりません。一方、現代は、太る食品が溢れています。

そもそも、人が昔から食べてきた食べ物に、体に悪い食べ物はあまりありません。体に悪いとすれば、食べ過ぎなど食べ方が良くないだけ。摂取カロリーを抑えればいいだけです。

現代では、健康のために「何かを食べるか」より、「何を食べないか」の方が大事です。

なぜ、太るのか?

【書評/要約】ジムに通う人の栄養学(岡村浩嗣 著):なぜ太るのか

私たちが1日に使うエネルギーの中で、最も大きいのは、新陳代謝、体温維持で使われる基礎代謝。これに加え、活動量が増えれば「消費カロリー」が増え、痩せやすくなります。

お正月太り、計算すれば明らか

「活動日」と家でゴロゴロ過ごす「非活動日」で、500kcalの消費エネルギーの差がある日が続くとどうなるでしょうか。

2週間のカロリー差は500kcal✕14日=7,000kcal。一方、脂肪1kg=7,200kcal。
年末から年始明けは飲食を伴うイベントラッシュ。普段より動かず、一方でカロリー増では、簡単に1kg太ります。

本書には、運動強度に応じた、具体的な消費カロリーの計算方法なども記載されています。詳細は、本書にてご確認ください。

運動で脂肪はどれだけ減るか

体重60kgが5km走ると約300kcalのエネルギーを消費します。この消費エネルギーの半分の150kcalが体脂肪から供給されたとすると、体脂肪はどれだけ減るか?

実は、たったの17gに過ぎません。脂肪1g=9Kcalなので、150/9 = 16.6g となるからです。

このように、一度の運動でエネルギー源として消費される体脂肪は数十グラム。運動は継続しないと意味がありません。

小食・運動なしダイエットの弊害

私たちの身体の仕組みは狩猟採集時代と同じです。狩猟採集時代は「飢餓」との闘いです。そのため、飢えた時、生き延びるためにはエネルギー消費が多い筋肉を、生存可能な量まで減少・萎縮するのが合理的だったと考えられます。これを活かしたダイエットが「パレオダイエット」です。

食べないダイエットをすると、脂肪より先に筋肉が落ちます。食べないことで痩せますが、基礎代謝量が低下した「省エネ型」に。つまり太りやすくなります。故、筋肉を落とさないことが大事ですが、「筋肉を落とさずに脂肪を落とす」には、食べて、エネルギー消費量を増やす⇒運動するしかありません。

「中年太り」も計算すれば、明らか

中年太りも基礎代謝が減ることが原因です。基礎代謝基準値は40代で20代時より7%低下。この場合、同じ食事をしていれば、以下の計算で玲かのように確実に太ります。

体重60kgの場合、20代⇒40代の比較

体重60㎏の場合:
基礎代謝は 20代 1,440Kcal/日⇒1,338Kcal/日(-102Kcal/日)
低下する基礎代謝を年換算すると、-36,312Kcal
脂肪組織は1㎏あたり約7,000kcal。 36,312 ÷ 7,000 ≈ 5.19 kg 太る!

故、意識して、日常生活で筋肉を使い、筋肉現象を防ぐ必要があるのです。

なお、筋肉には、赤筋(遅筋、瞬発力、エネルギー源として脂肪を利用)と白筋(速筋、瞬発力、エネルギー源として炭水化物を使用)がありますが、加齢につれて白筋の割合が増えます。

よって、中年太りを防ぐには、白筋を鍛える「強度の高い短時間の運動」よりも、赤筋を鍛える「強度は低くても長時間の運動」をした方がよいかもしれません。

太る体質の遺伝子

遺伝的に太りやすい人もいます。その一つが脂肪組織の「β3‐アドレナリン受容体の遺伝子」です。

アドレナリンは運動時に血中濃度が高まるホルモンで、心拍や血圧、血糖値を高めたり、脂肪組織に貯蔵されている脂肪を分解してエネルギー源の脂肪を筋肉へ供給する作用があります。β3‐アドレナリン受容体は、アドレナリンの刺激を受けて貯蔵脂肪を分解します。

この受容体の遺伝子変異があると、脂肪組織がアドレナリンの作用を受けにくくなり、貯蔵脂肪が分解しにくいため、痩せにくい&太りやすくなります。

日本人は、この遺伝子に変異のある人が多いという研究報告もあります。遺伝子は検査キットで調べらられます。自身の状態を知っている方が、ダイエット対策はしやすいでしょう。

太りにくい体・健康な体を手に入れる

【書評/要約】ジムに通う人の栄養学(岡村浩嗣 著):太りにくい体・健康な体を手に入れる

【私の努力】活動量の増加に「スタンディングデスク」

私はジムに通っていますが、一方で、1日の最も長い時間を「デスクワーク」に費やしています。デスクワークでただ座っていると、消費カロリーはほぼ「基礎代謝」のみです。そこで、私は健康を考えて「スタンディングデスク」を使用しています。

座る⇒立つデスクワークに変えると、カロリー消費が約2倍になります。スタンディングデスクを使用すると分かりますが、座り仕事では、ちょっとした「書類を取りに行く」「コーヒーを入れる」といった行動をいかに避けていたかがわかります。

【運動前・中】必要な栄養と摂取法

❶水分(+塩分
・運動前・運動中に適宜
・運動中は500~1000ml/時。一度に飲まず、コップ1杯程度を小分けで
飲み過ぎはNG。血液中のナトリウム濃度が低下し過ぎる低ナトリウム血症の危険性あり
運動後も水分補給。運動中に体内で生産された代謝物などの尿中への排泄を促進するため

❷炭水化物
体脂肪を減らすのが目的なら、空腹時に運動した方が痩せやすい
 先に、脂肪細胞のエネルギーが消費が促される
・ただし、お腹がすき過ぎると運動ができないので注意を
・運動後は、体タンパク質の合成(体づくり)にも、タンパク質と炭水化物の両方が必要

【運動後】必要な栄養と摂取法:食事・サプリメント

目的によって、ベターな食事のとり方は大きく異なります。運動✕食事で、体づくりだけでなく、疲労回復の仕方も変わるからです。

本書には、「ダイエット」「体力増強」「持久力向上」が目的の場合、どのように食べるかについて、詳細に解説されています。

サプリメントについても同様です。サプリメントの場合も、❶食事の不足を補うもの、❷運動能力を高める物質を含むもの の2つがあり、理解して利用しないと効果が半減します。本書には、こちらについて解説されています。

体力をつけるために「心肺能力」を高めよう

最後に、標準体重だから運動しなくてもいいか?そんなことはありません。標準体重でも心肺能力が低いと、健康のリスクは高くなります。

心肺能力とは、簡単にいえば「体力」のことです。健康に置いては、「太っていること自体」より、「体力がない」ことのほうが大きな問題です。ただ、太っているとどうしても、動くことがしんどい⇒動かない⇒太るというループにつながるので、やはり、痩せることは大事です。

以下の本では、痩せれば、走れるようになることが、著者の体験談としても語られています。

最後に

今回は、岡村浩嗣さんの「ジムに通う人の栄養学」からの学びを紹介しました。

運動はロジカルにやらないと辛さの割に効果が出ない⇒継続できません。
また、一方で、運動する人の栄養・食事法を知らないと、これまた、運動の効果が出にくくなります。

できるだけ、苦労少なく痩せる・筋肉をつけるためにも、是非、本書を手に取って、学んでみてはいかがでしょうか。