暗さが付きまとう「日本の老後」。
著書「孤独こそ最高の老後」では、老後を楽しめない理由には「日本人の国民性」、具体的には、若い時から培われた生き方、老後の考え方が大きく影響を受けているという指摘がありました。
では、老後を楽しんでいる国民は、どのように老後を捉え、楽しんでいるのか知りたくて手に取ってみたのが著書「フランス人は「老い」を愛する」。
フランスに旅行に行った際、オシャレなお召し物を着た紳士・淑女がカフェを楽しんでいる姿は、とても素敵で、私もあんな風に歳を重ねられたら…と思いました。
今回は、著書「フランス人は「老い」を愛する」から得た、老後を美しく楽しく過ごすためのヒント・考え方をまとめます。タイトルを見ると老後が迫った人が読む本と思われがちですが、是非、若い方にもすすめたい1冊です。
目次
老後の人生もプラス思考で前向きなフランス人
老後を楽しむフランスの高齢者と孤独が付きまとい十分楽しんでいるようには見えない日本の高齢者。この差は一体どこから生まれるのでしょうか?
フランス人はおいても前向き
フランスは、人生を「一年の四季」にたとえ、老いを「人生の実りと収穫の秋」と考える文化あります。「老いても人生は美しい」と口にし、「人生を楽しく有意義なものとするために、自分自身で考え、自分独自の道を切り拓こう」とします。
その原点ともなるのが老いに対するプラス思考です。フランスの高齢者たちは、高齢者であることの3つの利点を挙げて、今を楽しもうとします。
❶〝幼少期〟のように親に依存する必要がないこと
❷〝青年期〟のような落ち着かないソワソワした気持ちを抱かずにいられること
❸〝壮年期〟の上下関係や競争の支配する職場の苦労から解放されていること
「もうこんな年」(悲観主義者の感じ方)ではなく、「まだこんな年」(楽観主義者の感じ方)と考える。そうすれば、高齢期を生きる姿勢も自ずと変わり、生きる士気も高まり、若い気持ちでい続けられるわけです。
フランスの高齢者たちは孤独にどう向き合っているのか
フランスの高齢者たちも、老いの時期には、病気や孤独感や金銭の不安などを感じ、悩むこともあります。これは日仏同じです。
しかし、フランス革命の「自由・平等・博愛」の精神に生き、徹底した個人主義者で合理主義者であるフランスの高齢者たちは、自分の境遇を他者のものと比較して、悲観したりやっかみを感じたりはしません。自分よりももっと恵まれない人々のことを常に忘れない心の余裕というか心の優しさがあります。
また、だから、フランス人は孤独を感じた時、信頼できる他の人に自分の孤独感を率直に口に出して訴えます。これは極めて大事なことです。
フランス人の若さの秘訣
人とよく話をする高齢者は、相対的に孤独を感じにくく、生き生きと日々を過ごすことができます。こんな時に上手に使われているのが「カフェ」です。
カフェは楽しみと癒しの場
フランスにはテラスのあるカフェが多数ありますが、このような場所で、頻繁に多くの時間を過ごすことが、フランスの日常の楽しみであり、一期一会を楽しむ場となり、孤独の癒しにもなっています。
おしゃれが若さを保つ
フランス人はオシャレと言われますが、老人になってもいつまでもおしゃれで、美しくありたいという強い思いを持っています。
カフェなどへのお出かけにも、しっかりオシャレします。また、老人ホームで暮らす人たちも、日本人のように寝間着やスリッパで公共空間でうろついたりしません。食堂ではオシャレな服を着て皆と楽しみながら食事します。
毎朝、起きてオシャレをして背筋を延ばして出かけることは、心にもプラスの影響が大きいです。容姿の衰えを悲観することなく、おしゃれをすることで、生きる喜びと生きる士気を得たいものです。
過去フランスに行ったことがありますが、多くの年配の方が「カフェ」での時間を楽しんでいました。一人でカフェをしている方が多かったですが、男性も女性もオシャレなので、その姿が様になってかっこいい。日本のカフェでは見かけない光景だったので、すごく新鮮でした。本書を読んでこれが若さの秘訣であることがよくわかりました。
テレビとの付き合い方
日本の老後の楽しみの一つとなりがちな「テレビ」。しかし、フランスでは「漫然と一日中テレビばかりを見ている」高齢者の生活習慣は、心と体の老化を加速させると警告されています。そのため、フランスでは、「テレビをよく見ている」と公言する人はほとんどいません。むしろ恥ずかしいと思っています。
フランスの知識階級の間には、「テレビを見て多くの時間を過ごすのは知識階級や教養のある人のすることではない」と考えるような文化的風土があります。リタイアしても、国や社会の問題に常に高い関心を持ち続け、積極的に情報を求め、物事を自分で判断・議論しようとします。
日仏の老人の思考の違い
ここまで読んできて、フランスの老人と日本の老人は随分違うのはご理解いただけたと思いますが、あえて、まとめてみます。
日本の老人
日本人の老人のイメージはおおよそ以下のようなものでしょう。
・孤独
・行動範囲が狭く、テレビばかり見てる
・おしゃれに無頓着
イメージだけでなく、事実、上記に該当する方は多いでしょう。
日本の老人は、孤独感や寂しさを抱えていても、これを友人や家族に打ち明けることを躊躇する人が多い。それどころか、「毎日が充実していて、楽しくて仕方がない」というふりをする人も少なくないように見えます。
著者は、これを、日本人の「恥の精神」、あるいは、「他の人に心配をかけたくないという気持ちの表れ」ではないかと分析していますが、孤独感を率直に認めて、人に心の支えを求める勇気は必要そうです。
日本人は老後の準備が遅すぎる
上記のような差が生じる原因の一つは、「今現在の楽しみ方」そして「老後の準備」の差が大きく影響しています。
日本人は、一般的に「老後になったら時間を楽しもう。人生を謳歌しよう」という考え方をしがちです。時間ができる老後まで楽しみはお預けという思考に基づきますが、これはすなわち〝今現在〟を楽しく生きることを犠牲にしていることを意味します。また、老後の準備といっても考えることは「お金のことだけ」です。
「今現在を生きる楽しみの連続の先に、定年後や老後の楽しみがある」と考えるフランス人は、30代、40代という現役時代の早い段階から周到に定年後の生活の準備を始めます。その準備は、貯蓄はもちろん、健康、趣味・活動、家族・友人との関係、心のあり方に至るまで多岐にわたります。
ただ老後資金を貯めるだけでは人生の幸せは最大化できない
私は著書「DIE WITH ZERO」を読んで大きな感銘を受けたのですが、そもそも、老後にお金があれば幸せというものではありません。「手遅れになるまでやりたいことを我慢し、ただただ金を節約」しても、人生の幸せは最大化できません。膨大な時間を費やして働いても、稼いだお金を全て使わずに死んでしまえば、人生の貴重な時間を無駄に働いて過ごしたことになります。その時間を取り戻す術はありません。
「富の最大化」から「人生の最大化」する生き方を目指すには、若いうちからの計画・準備が欠かせません。
高齢期を心穏やかに生きる方法
人は歳をとればとるほど、行動にする経験の種類は減り、お金の(自分にとっての)価値は減価します。体は不自由になり、刺激のある生活はできなくなります。でも、歳を重なるからこそわかる幸せがあります。
年を重ねたからこそ見える人生の素晴らしい景色がある
フランスの高齢者は、「年を重ねたからこそ見える人生の素晴らしい景色がある」ことをよく知っています。
フランスの高齢者たちは自分自身の老いをこよなく愛します。そして、それを大事に、楽しく、有意義に生きています。
では、どうしたら、体の自由が若い時のように効かなくなる中で、「年を重ねたからこそ見える人生の素晴らしい景色」や「穏やかな幸せ」を手に入れられるでしょうか?
歳を重ねるから得られること
著者は、年齢を重ねるとともに「時間に対する新しい姿勢」を身につけることが大事と説きます。それは「時間が早く過ぎて行く」と感じる中、生きている各瞬間を一層楽しむことができる力です。
人は歳を重ねると涙もろくなりますが、それは、若い時にはわからなかったことが理解でき、小さなことでも「感動」ができるということです。
若い時は、庭先に咲く花に感動を覚えず、刺激的な生活を求めます。しかし、歳をとると、遠出や旅行は徐々に難しくなる一方、庭先の花を見て「美しい」と感じたり「毎日咲いてくれてありがとう」と感謝できたりします。このように小さなことでも感動できるというのは素晴らしいことです。
だから、以前は見過ごしてきた日常生活の小さなことに喜びを感じ、感謝する。
「ちょっと近所に出かけること」「見ること」「人と話をすること」「食べること」「眠ること」「笑うこと」などの中に、生きている喜びを感じ、人間同士のつながりを楽しみ、自分の生きている周囲の自然の美しさを再発見できれば、人は老いても幸せに生きられます。
人間の本質的な幸せは、実は自分の足元にある。日常生活の〝一見何でもない小さなこと〟から大きな幸福感を得、感謝することができた人は、老後も幸せです。
最後に
今回は、賀来弓月さんの著書『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は「老い」を愛する』を紹介しました。
今既に老後世代にある人は、もっと身近に見過ごしてきた幸せを発見でき、若い人は現役世代からお金だけでない老後の準備の大切さを教えられるはずです。
タイトルを見て、老後が迫った人が読む本と思わず、是非、若い方にも読んでいただきたいです。
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