【書評/要約】ビジネスZEN入門(松山大耕 著)(★4) ジョブズが愛した禅はLoose、マインドフルネスはGainが目的

スティーブ・ジョブズが愛した、東洋の思想「禅」。禅の思想は、ジョブズの生き方、そして、製品開発にも大きな影響を与えたことで知られています。

その後、「ジョブズの禅」に触発された米国のIT企業は、禅から宗教色をた「マインドフルネス」を開発し、社員プログラムに取り入れました。現在ではそのメリットを享受するため、世界中のビジネスマンがマインドフルネスを取り入れています。

禅もマインドフルネスも、静かに座り、過去・未来のことを考えずに、今に集中するというスタイルはよく似ています。しかし、今回紹介の、松山大耕さんの著書「ビジネスZEN入門」を読んで、その根本となる思想が全く違うことに、大きく感銘を受けました。

禅とマインドフルネスは何が違うのか。

今回は、著書「ビジネスZEN入門」の学びを紹介します。

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禅、マインドフルネスのルーツ(歴史)

禅、マインドフルネスのルーツ

マインドフルネスはルーツが全く異なります。

禅のルーツ

禅のルーツは、2000年前にインドで生まれた仏教。その後、中国を経て、鎌倉時代に日本に伝わった大乗仏教の禅宗が、日本で新たな形で「禅」として大成したものです。

この禅は、時代のリーダー、武将、侍、さらに近代では政治家、経営者、アスリートなどに趣向されて来ましたが、現代ではスティーブ・ジョブズ氏が禅に傾倒していたのは有名なお話です。

マインドフルネスのルーツ

一方、瞑想は、あぐらをかいて、目を閉じて心を落ち着けるなどの行為全般で、これはブッダの時代からありました。

これがマインフルネス瞑想として、注目を浴びるようになったのは、Googleがっ社員研修に導入し、社員の脳疲労、ストレス緩和、集中力の強化などで高い成果を出したことが、世に広まったからです。姿勢もあぐらである必要はなく、より実践しやすくなっています。

禅とマインドフルネス、違いは何か?

禅とマインドフルネス、違いは何か?

禅もマインドフルネスも、初心者からみると、心を無にする行為としては同じに見えます。しかし、その目的・本質は全く異なります。

禅はLoose、マインドフルネスはGainが目的

ビジネスZENの著者松山さん曰く、禅は「ゲイン(gain)」、つまり、何かを得るための手段ではなく、「ルーズ(loose)」、失うためのものだと言います。

マインドフルネスは、脳疲労、ストレス緩和、パフォーマンスを上げたいなど、何かを「得る」ために行いますが、禅は「何かを得よう」と思ってするものありません。やりつづけても何も得るものはありません。

座禅という実践を重んじて、今まで築いてきた余計なものを削ぎ落すことで、最も大切な「本質」に目を向ける。

禅を信奉したスティーブジョブスが作り出したiPhoneをはじめとする製品も、まさに、究極まで無駄をそぎ落とし、コミュニケーションツールとしての本質を追求した製品です。禅と通ずるものを感じます。

やり尽つくすことで得られるもの

中国禅僧の開祖とされる達磨(だるま)は、9年坐禅を続けたとされていますが、坐禅をしようが、寺を作ろうが、仏教に対して何をしようが、ご利益もなければ、功徳もない。しかし、やり尽くせば、もはや何もいらないという気持ちに至る。それが一番のごちそうであり、功徳なのだ、とおっしゃったそうです。

納得、なるほどです。

功徳、無功徳

禅は「無功徳」。マインドフルネスは「功徳」

禅は何かを得るためにするものではありません。無功徳です。一方、マインドフルネスは脳疲労、ストレス緩和、パフォーマンスを上げたいといったメリットを得るために行うもの、つまり、「功徳」です。言葉を変えていうなら、「欧米的功利主義的」がベースにあります。

瞑想する場合、どちらをベースとして臨むのか、はっきりさせて挑むのがよいと思った次第。ちなみに、今求めるのは「禅的思想」。結果的に、脳疲労、ストレス緩和、パフォーマンスは得られるのですが、根本的な姿勢としては「禅的姿勢」を大事にしたいです。

禅的思想で一歩一歩積み重ねる大事さ

禅的思想で一歩一歩積み重ねる大事さ

上述の通り、「禅」は何かを得るためにするものではありません。利益追求が必要なビジネスとは相性が悪そうにも思えます。でもそれは違う。ビジネスにも禅的な取り組みが必要だと松山さんは語ります。

なんでも「即」の弊害

現代社会では、「すぐわかる」「1時間で●●できる」といった本や情報が流行るように、とにかく楽をして苦労せずに何かを得ようとする傾向が益々強まっています。とりあえず、ググって、SNSを見て、Youtubeを見て解を求める傾向に拍車がかかっており、自分で考えることすらしない人も多い。また、考えてると自身は思っていても、それは単に「悩んでいる」だけで、何も行動が伴ってないものが多いと思います。

しかし、個人のスキルもビジネスの成功も、一朝一夕では決して身につくものではありません。どちらも、すぐに利益を追求することなく、毎日、コツコツ努力(行動・実践)を積み重ねることあってこそ、最後に成果や成功が待っています。

コツコツ努力(行動)を積み上げた先に、はっきりとした成果がある

例えば、お寺の庭掃除。常に葉っぱが落ちてくるのに毎日やる意味があるのか?1週間ごとでもいいのでは?という考えもありますよね。しかし、それではダメ。

常にきれいに保つことを続けていくことで、空間はもちろんのこと、人も含めてお寺全体の雰囲気がビシッと引き締まる。そして、お寺の雰囲気や印象が作りあがり、いつしかそれが「お寺そのもの」となっていく。

これは、人の成長に当てはめても同じ。スキルは一日で身につくことはありませんし、ましてや「人格・風格」というものは時間と経験を伴わない限り生まれません。ビジネスも同様、人から支持されるブランドが1日にしてできることはありません。

努力をしている最中は、誰でも、それが無駄に感じるときがあります。しかし、地道な一歩一歩の積み重ねているうちに自然と身についていったものは、すぐにはっきりとした成果や結果をもたらしてくれることはなかったとしても、長い目でみると必ず大きな力となります。

それは、例えていうなら 螺旋階段のようなもの。上から見みると、ぐるぐる同じ場所を回っているだけで、一見、成長がないように見るけ。しかし、横から見ると一歩一歩確実に上がっている。

こんなふうに考えると、毎日大変だなーと思っている努力も、毎日続ける意義を少しは感じられるのではないでしょうか。

最後に

今回は、松山大耕さんの著書「ビジネスZEN入門」を紹介しました。「禅とマインドフルネス瞑想の根本思想に大きな違いがあること」がわかったのは、私にとって、大きな学びとなりました。

読書も、運動も、サウナも毎日コツコツやる。禅的思考に根差した「コツコツとした積み重ねる」を大切に実践していきたい。

人によっては、これら3つの習慣は「苦行」です。これらが「幸せの根源」である、私は、幸せだ。心からそう思えます。