食べ過ぎをやめれば、健康的に瘦せられる。生活習慣病のリスクも低くなる──
そんなことわかっています。しかし、食べることをやめられない!止まらない! なぜって、「食べることが、〝快楽〟」だからです。美味しいと感じると、脳内で 幸せホルモン「β‐エンドルフィン」が放出され、多幸感を感じてしまうからです。
著者の岡嵜順子さんは肥満専門外来の医師。多くの患者さんを診てわかったことは「食べ過ぎてしまうのは、意志が弱いからではない。〝瘦せられないのは、適切な方法を知らないから」と力説します。
今回は、岡嵜順子さんの『なぜあなたは食べ過ぎてしまうのか』に、9割以上の方を減量成功に導いた方法を学びます。
目次
あなたが食べ過ぎてしまうわけ
食べ過ぎとは、「その人が、1日に消費する以上のカロリーを摂取すること」です。まずは、1日に必要なカロリー、そして、なぜ食べ過ぎてしまうのかを知ることが大切です。
1日に必要な摂取カロリー
人が1日に必要な摂取カロリーは以下の式で計算されます。
=基礎代謝量(生きているだけで消費するエネルギー)+運動などに使うエネルギー
=標準体重(kg)✕30 kcal
=身長✕身長(m)✕ 22 ✕ 30 kcal
上記計算式を用いると、身長160cmの方が一日に必要な摂取カロリー=1.6✕1.6✕22✕30=1689.6=約1,700kcal となります。
ただ、「運動などに使うエネルギー」は人によって異なるので、日々の活動量を知ることは大事です。また、遺伝子的に太りやすい人もいます。まずは「自分を知ること」です。
食べ過ぎてしまう原因:3パターン
食べ過ぎは、単に「おなかが空いている」という身体の反応だけで起きるのではありません。食行動と心理には密接な関係があり、脳への刺激や感情の変化によって、食欲はかなり影響を受けています。
食べ過ぎに大きく影響しているパターン3つあります。
原因 | 特徴 | パターン/th> |
---|---|---|
❶食べ方 | 主に食行動を原因とする食べ過ぎ | ・口寂しくて間食する ・早食いでたくさん食べる ・食後のデザートは別腹 ・片付け食いをする ・食べ始めると止まらない ・お酒を飲むと食べ過ぎる ・1日1食でドカ食い ・夕食を摂る時間が遅い ・コンビニの誘惑に負ける ・旅行に行くと食べ過ぎる ・食べ物を多く買い過ぎる |
❷ストレス | 主に心の問題を原因とする食べ過ぎ。 | ・嫌なことがあると「やけ食い」 ・残すことに罪悪感がある ・疲れると甘いものに手が伸びる ・人に勧められると断れない ・悩み事があると食ベてしまう ・ダイエット中に反動で食べ過ぎる |
❸環境や身体の変化 | 主に環境の変化や身体の変化を原因とする食べ過ぎ | ・一人暮らしを始めたら太った ・タバコをやめたら食欲が増進 ・生理前になると食べ過ぎる ・出産後、体重増加が止まらない ・更年期障害で太り始めた |
まず、あなたが、どのパターンで太っているかを知ることが大事です。
食べ過ぎを防ぐ3ステップ+α
本書には、一つ一つの太る原因に対して、どのように「食べ過ぎを防ぐか」詳細解説されています。詳細は本書に委ねますが、ただ、そのパターンであっても、食べ過ぎ改善の3ステップは変わりません。
運動より前に、「なぜ食べて過ぎてしまうのか」原因を知り、「それをどう対処したらいいか」を知り、「自分の行動を変える」ことが求められます。
❶食べ過ぎの「きっかけ」に気づく
❷生活習慣の中で、自分にピッタリの食べ過ぎ解決方法を見つける
❸行動を少しだけ増やす
そして、「食べたい衝動」が押さえられなくなったとき、以下の2つを行うことです。
・本当に空腹なのか?ただ、口さみしいだけなのか、認識する
・ただ口さみしいだけの時は、その感じ方(認知)を少し変える
我慢に我慢を重ねるダイエットは長続きしません。途中で必ず挫折します。続いている良い生活主観は、「無理がない」「楽しい」「心地がよい」など、必ず脳の喜びと関係して言えるはずです。そんな行動を身につけていくことによって、ダイエットの成功率は高まります。
【ケース別】太る食行動とその対処策
ココからは、本書で紹介されている太る食行動に対する対処法からいくつかを取り上げ、紹介します。
【食べ方】カロリーは十分でも、何か口に入れたくなる
口寂しさからくる食欲は、〝まやかし〟です。口寂しさの波は、大体5分経つと消えてなくなっている場合がほとんどです。食べたいと思ったら、5分間を、上手に乗り切ることです。
例)
・立って窓際に行き、窓を開けて深呼吸
・ノンシュガーのガムを嚙む
・約80kcalの間食で済ます
80kcalの間食を用意しよう
なぜ、80kcalの間食なのか。それは、80kcalは、成人女性の平均的な1時間あたりのエネルギー消費量相当です。1時間でエネルギー消費できると分かって食べれば、食べ過ぎが防止できます(160kcal, 240kcalと増えるとエネルギー消費に2時間、3時間とかかると分かると、食べたい気持ちのセーブになる)。80kcalの間食の目安を知っておきましょう。
・板チョコ5切れ(33g)
・加糖ヨーグルト1個(90g)
・クッキー2枚(15g)
・ポッキー8本(16g)
・おせんべい 2枚(40g)
※0kcalのお菓子 低カロリーのおやつ
カップスープもお勧め。出汁の利いた汁物に含まれている、イノシン酸やグルタミン酸、アミノ酸は、脳にβ‐エンドルフィンを分泌させ鎮静効果と多幸感を与えます。温かい汁物なら、飲んだ後の満足感もが高くなり、リラックス効果もあります。一度にがぶ飲みもできません。
私は、噛み応えもあってカロリーが低い春雨スープを重宝しています。以下の商品の場合、1袋50kcal前後で、5つの味を楽しめます。
【食べ方】カロリー摂取していても「栄養」が足りていない
カロリーは摂取していても、「栄養」が足りていないケースが多々あります。ありがちなのが「炭水化物」に偏っているケースです。体を作っている「タンパク質」が足りないと、栄養を求めて食べたくなります。脳が求めるので、さらに「炭水化物」を」食べて太ってしまうのです。しかし、これでは、脳は満たされません。太る悪循環ループに陥りいます。
タンパク質を手軽に摂る
私は、「今日はタンパク質が足りない」と思ったら、プロテイン、或いは、調理する場合は、「おからパウダー」を入れて、タンパク質を摂るようにしています。おからパウダーは腹持ちもUPさせてくれるので、常備しています。小麦粉は自宅に置かず、代わりに、おからパウダーを使用しています。
【食べ方】ポテチが止まらない
ポテトチップスを一袋食べきってしまう…。理由は、「噛むことが快楽だから」です。
人はイライラしていると、知らないうちに奥歯をかみしめます。ポテトチップスなどのスナック菓子に手を伸ばしてしまうのも、リラックスしたいから。食べ始めると、パリパリとした噛み応えが心地よくて、一袋食べきってしまうのです。さらに、油脂や甘みは、生きていくうえで活動の基になるカロリーを容易に摂取しやすいので、ついクセになってしまいます。
対策法は、イライラの緊張感を解放を解放するために、「カロリーの低い食べ物を嚙んで口を動かす」こと。生野菜やスルメ、シュガーレスのガムなど、嚙み応えのある物を選んで〝嚙む快感〟だけ味わいましょう。
ちなみに、嚙むことは、アゴからこめかみの辺りの筋肉を使う「小さな有酸素運動」です。脳が活発に機能する効果もあります。表情筋まで鍛えられてアンチエイジングにもなります。
【ストレス】疲れると甘いものが欲しくなるわけ
疲れたとき、ストレスで脳が疲弊したとき、甘いものが食べたくなります。それは甘いものを食べると、脳内ホルモン「セロトニン」が分泌され、ホッとするからです。
脳が使える唯一の栄養素は、ブドウ糖です。人間の臓器の中で最もカロリー消費が大きいのが「脳」です。セロトニン濃度は「糖類」の摂取で上昇するので、脳が疲れると無意識で「ブドウ糖」を欲しがるのです。これがストレス太りを招きます。
なお、もし糖の補給が途絶えると、しばらくは肝臓のグリコーゲンをブドウ糖に分解して補います。しかし、10時間ほどで蓄えがなくなり、その後は筋肉のタンパク質をブドウ糖に分解して補います。私たちの身体は、必要な筋肉を落としてでも脳を守るシステムができあがっているのです。
ダイエットで脳にストレスをかけない方法
私たちは目標を設定するときに「○○をしない」などの否定的な表現を設定しがちです。しかし、「〇〇しない」はストレスです。
ダイエットの場合は、「夜8時以降は食べない」のではなく、「夜8時以降は、温かいノンカロリーの飲み物を飲もう」と言った具合に、肯定的な代替行動を設定すると、脳のストレスが減り、達成しやすくなります。
【体の変化・加齢】月経周期とダイエット
女性の月経周期は、体調管理、体重コントロールに大きく影響します。「生理前は食事療法や運動をいくら頑張っても体重が落ちにくい」理由を知っておくと、体重増でのストレスも緩和できます。
生理は、❶生理期間中 ❷生理終了後~排卵日 ❸排卵後~生理前の3つの生理周期に分かれます。この中で、一番瘦せやすいのが❷、一番落ちにくいのが❸です。生理前におなかが空いて食欲が増すのは、女性ホルモンの一種であるプロゲステロンの作用です。
生理の約2週間前から、女性の身体は受胎に備えてベストの状態に保つため、プロゲステロンが多量に分泌され始めます。プロゲステロンは赤ちゃんを育てる子宮内環境をよりよくしようと食欲を増大させます。同時にプロゲステロンには水分をためこむ性質があり、生理の1週間前から月経中は、むくみが生じやすく、結果として一時的に体重が増加したり、減量が停滞したりしがちになります。また、大腸の運動を低下させ、便秘しやすくなります。
【体の変化・加齢】更年期と肥満
人は歳をとると太りやすくなります。代謝を促す筋肉の量が減り、基礎代謝が落ちるからです。
さらに、女性の場合は、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」が閉経するとほとんどなくなってしまうことも原因です。結果、それまでと同じ食生活をし、運動量も変わらなければ、どうしても脂肪がつきやすくなります。
・丸みを帯びた女性らしい身体を作る
・髪をつややかに保つ
・血管を強くしなやかにし、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を防ぐ
・骨量を維持する
・身体の中で中性脂肪や血中コレステロール値を低く保ち、内臓脂肪がつきにくくしている
また、更年期障害軽減のために、ミネラルとビタミン摂取を心がけることも大事です。日本栄養士会は、良質の野菜と良質なタンパク質中心の食事を通し、積極的にミネラル(特に亜鉛、セレンなど)とビタミンB群、ビタミンEなどの微量栄養素の摂取によって、更年期障害が軽減されると伝えています。
なお、エストロゲン低下は、女性の体に様々なトラブルを引き起こします。「あそこがくさくなった」と感じている方も、更年期のせいかもしれません。以下、一読を。
最後に
今回は、岡嵜順子さんの『なぜあなたは食べ過ぎてしまうのか』から、9割以上の方を減量に導いた方法の一部を紹介しました。
食べ過ぎない=適性に食べる=腹八分目医者いらず。 by 貝原益軒が『養生訓』
自分の健康を自分で守るには「セルフコントロール力」が不可欠です。
『食』という漢字は『人』を『良くする』と書きます。人を良くする食事に努めましょう。美味しく優雅に味わって、また、食事に感謝しましょう。感謝しながら、ゆっくりかみしめて食べれば、食事量は減らせます。以下の本も食事に感謝し、健康に気づかう上で大切なことを教えてくれます。合わせて読んでみてください。