【書評/要約】近未来ノベル 東京大地震2023(柘植 久慶 著)(★4) 東京直下型地震→プレート地震が発生で東京はどうなる?リスクを知ることが生存確率を高める

3.11東日本大震災 から12年目。
そして、2023年は 関東大震災から100年目に当たります。

2023年3月11日 朝にも東京では地震の揺れを感じましたが、地震に対して鈍感になっている自分がいます。防災リュック・保存食・飲料・トイレットペーパーなど、最低限は常備しているものの、被災に関しては「他人事感」が否めません。

個人的に最も恐れているのは、「首都圏直下型地震」ですが、関東大震災から100年が経過し、地下深くでプレート間のひずみは確実にたまっています。

そんな危機意識の低下を反省し、柘植久慶さんの近未来ノベル「東京大震災2023」を読みました。

防災ブックではなく、あえて、小説で読む利点は、「人々の不安・恐怖」が描かれることで、被災時の恐怖が自分事として追体験できることです。これにより、危機意識を高めることができました。

本小説は、単なるパニック小説ではありません。自分事として読むことで、巨大災害に対する備え(住居、避難、防災グッズ、心構え 等)ができる1冊です。

今回は、柘植久慶さんの近未来ノベル「東京大震災2023」からの学びを記します。

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東京大地震2023:あらすじ

【書評/要約】東京大地震2023(柘植 久慶 著)

2023年12月15日17時15分、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.9の直下型地震が発生。そして、その30分後に房総沖を震源とするマグニチュード8.2のプレート型地震が関東一帯を襲う。

東京湾に10メートル超の大津波が押し寄せ、荒川の堤防は決壊。高速道路では大規模な車輌火災が発生、それが木造の民家に燃え移って延焼!巨大津波は横浜、銀座、浦安などの首都圏を飲み込んでゆく。

未曾有の大震災に直面した時、どのような行動が明暗を分けるのか? 
巨大津波、広がる火災から、生き残る術はあるのか!? 

「想定外」の連動地震に人々がいかに行動し、サバイバルに結びつけるかをシミュレートした衝撃の近未来ノベル。
これは、遠い未来のことではなく、明日起こってもおかしくない出来事である。
―――Amazon解説

東京大地震:舞台設定(発生状況、規模など)

戦後80年。戦争もなければ大災害もなかったのは世界史上の奇跡。今、我々はそれに甘えて現代を生きています。

本小説では、東京で以下の2つの地震が連続して発生することを想定しています。

直下型は破壊と火災。プレート型は大津波

東京湾北部を震源とするマグニチュード7.9の大地震 ⇒首都の機能が殆ど麻痺
❷30分後に、東京湾の外でフィリピン・プレートを震源とするマグニチュード8.6の大地震が発生⇒大津波が東京湾岸を襲う

あえて、実際の地名を出して、被害状況が描かれています。具体的な地名が出てくるため、被害状況がリアルに感じられ、「自分事」としてリスクを認識できます。

地震はいつなんどきにやってくるか分からない。自分がどこで地震に遭遇するかが「生死の分岐点」を分けます。もしかしたら、自分が普段は行かない(=よく知らない)場所にいるとき起こるかもしれません。

また、地震は被災地だけの問題ではありません。特に、首都東京が破壊されてしまうと、その時、日本経済・日本の将来に与える影響は甚大です。

本小説は、地震の最悪シミュレーションで私たちのリスク感覚を高めてくれます。以下、本書からの学びを、私なりにまとめてメモします。

地震と被害:東京の東は水、西は火

地震と被害:東京の東は水、西は火:【書評/要約】東京大地震2023(柘植 久慶 著)

東京湾岸エリアは埋め立て地。津波がくれば沈む

湾岸の高層マンションは、揺れ自体には耐えても、3階ぐらいまでは完全に津波でやられる

自動車での脱出を選んだ時点で、すべて終わっている。必ず交通渋滞に巻き込まれる。
ドアより更に20cmか30cm上に水がきたらもう開かない。その後は、下からどんどん水が入ってくる。
ドアの上端まで達すれば開くが、天井近くに残ったわずかな空気を吸いながら、一体何人が耐えられるか。仮に、そこから脱出できても、汚れた津波の水で生きていられるか?!

荒川の堤防決壊

津波4メートルまでが限界。5メートルで決壊。最初の地震で堤防が数メートル下がることも。
決壊すれば、江東区、葛飾区、墨田区、荒川区、足立区まで急速に伝播。
脱出しようにも主たる交通機関は停止。自動車も幹線道路は大渋滞。逃れる手段は皆無。
住宅密集地では家屋の倒壊。出火したら最後、強風によりたちどころに延焼
東京の下町は全滅。水と火のエリアに地域が二分される。

東京沿岸には多数の発電所

横浜の磯子から対岸の千葉県 袖ヶ浦 を結ぶ線より北に、実に10ヶ所余りの火力発電所
磯子、大井、品川、千葉、 五井、 姉崎、そして袖ヶ浦など
大津波にでも襲われたら最後。東京湾岸が真っ暗になってしまうのは明らか

羽田空港の南──川崎側に大規模な石油関係の施設。原油・液化ガスなどのタンク類
倒壊すれば、重油は津波と共に街に流れる。そこに引火すれば…広範囲で💥🔥

東京西側は倒壊&火災

JR中央線の中野~荻窪は、東京で一番激しく火災が生じる地域と見られている
古い木造住宅が多い地域は倒壊→火が延焼のリスクが高い
行政がいくら指導に乗り出しても、最終的に居住者や地権者の利害関係から、一歩も前進しないのが現状

とにかく避難

とにかく避難:【書評/要約】東京大地震2023(柘植 久慶 著)

交通渋滞で消防車は火災沈下に出向けない。本格的な救助活動は翌日、火災が収拾しないとできないと考えられる。
消火の望みがない状況下では、安全な場所に脱出するしかありません。そんな時、普段からの備えがあるかないかが、その後を二分します。

防災リュクを持って、逃げる

防災リュックは玄関近くに備えておきたい
持ち出す場合は、水必須。500mlの水を複数、重心が偏らないようにリュックに入れること(重心が偏ると逃げるのに支障)

キャッシュカードやクレジットカード、預金通帳や 印鑑 などが、すぐに持ち出せるようにまとまっているか?

消火活動より、自分の現在地に水

避難場所に放水し、自分にも水。乾燥していると火がやってくる。
風は熱気のある方に吹くので風向きも変わる。サバイバル術を知っておくことは大事

火の中を逃げる

50度??湿度は限りなく0%。長い髪の人は危険極まりない。ひとつ間違えると火が点く
帽子や布を巻き、水をかけて行動。首までスッポリ入る、防災頭巾が理想

普段からの運動が大事

普段かから、動きやすいスポーツシューズを持っておきたい。足首まで守れるハイキング用シューズなら瓦礫からの防御力UP

普段から運動が、災害時にはたたる。
足腰が悪い人だけでなく、健常者も、杖(ステッキ)一本あるだけで、歩行は楽になる

住居&資産&家族を守れるか

とにかく避難:【書評/要約】東京大地震2023(柘植 久慶 著)

防災ばっちりの要塞も完ぺきではない

要塞のような防護建物を立てていても、運用のミスで燃える。例えば、窓が1カ所でも空いていて火が室内に入り込めば、火に飲み込まれてアウト。我が家は大丈夫と過信は禁物

自宅でのタンス預金が裏目に

資産持ちで自宅に現金をしこたま管理している場合、地震後にリュックに詰めていると時間ばかりが浪費される。
札束が大量にある場合、リュックに詰めても重くて持ち出せない。高齢ならなおさら。キャッシュ大事さにお金と共に火に飲み込まれては元も子もない。

家族を守る

大黒柱となる人間の態度は大事。彼の動作・発言次第で、家族は励まされもすれば、悲観的にも大きくぶれる
ただし、逃げるときは津波でんでんこ。家族も逃げていると信じて、とにかく逃げろ!

自宅でいつも風呂の水を貯水しておけば、生活用水に使える。トイレも使用可能になる

カセットコンロガスボンベのストックは大事。大惨事ではすぐに救援物資は届かない。家族✕1週間分の食料・飲料の備え

日本経済はどうなるか

日本経済はどうなるか:【書評/要約】東京大地震2023(柘植 久慶 著)

地震で日経平均は暴落

大地震時で株価は大暴落。東日本大震災時に何が起こったかは、以下の本に詳しい。

増える赤字国債

首都圏直下型地震が起きたときの被害はいくらかかる?100兆円?200兆円?
赤字国債発行で、国の借金は益々増える。少子化も相まって、次の世代は、どんな税制の下に生きなければならないのか?消費税、復興税は何%に??

最後に

今回は、strong>柘植久慶さんの近未来ノベル「東京大震災2023」からの学びを紹介しました。

「近未来小説」は、単なる空想ではなく、「現実の問題」と何らかの形でリンクしています。

「近未来小説」中でもディストピア小説は、将来的に起こる最悪なケースを想定し、その時、何が起こるのか、世界・人類はどうなるかを、感情まで含めて、生々しく、切迫した形で教えてくれます。

リスクを知っておくことが、あなたを救うかもしれません。お手に取って読んでみられることをおすすめします。