【書評/要約】月の満ち欠け(佐藤 正午 著)(★4) 逢いたい気持ちが輪廻し引き継がれる数奇な甘くないラブストーリー。 第157回直木賞受賞作
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月の満ち欠けのように、何度も生まれ変わり、あなたに逢いに行く

小説「月の満ち欠け」は、生まれ変わっても愛するあなたに逢いたいという思いが、数十年の時を経てつながっていく、決して甘くはないけどラブストーリー。作者は佐藤正午さんで、2017年に第157回直木賞受賞、2022年には大泉洋を主演に廣木隆一監督が映画化され、こちらは日本アカデミー賞作品賞他9部門受しています。

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偶突然の死で終わってしまった、正木瑠璃(るり)の許されざる恋。
るりの想いは、時を超え、生まれ変わっても引き継がれていく。
果たして、るりの願いは叶うのか―――

読み始めると、ストーリーに引きこまれること間違いなしです。

今回は、佐藤正午さんの小説「月の満ち欠け」のあらすじと、読んだ感想をまとめたいと思います。

月の満ち欠け:あらすじ

あたしは、月のように死んで、生まれ変わる――
この七歳の娘が、いまは亡き我が子? いまは亡き妻? いまは亡き恋人? そうでないなら、はたしてこの子は何者なのか?

三人の男と一人の女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく、この数奇なる愛の軌跡。

プロフェッショナルの仕事であると選考委員たちを唸らせた第一五七回直木賞受賞作、待望の文庫化。
―――Amazon紹介文

生まれ変わる「るり」

物語の中で「るり」は3回、生まれ変わります。

最初の発端となった「るり」は、正木瑠璃。夫のある身ではありましたが、年下の大学生・三角哲彦と恋に落ちます。しかし、熱い愛を交わしてからまもなく、瑠璃は不慮の事故に巻き込まれ、三角への想いを残しつつ、命を落としてしまいます。

2人目の「るり」は、物語の主人公・小山内堅の娘・瑠璃。7歳の時に高熱を出して以降、「1人目のるり」の記憶が覚醒。
前世から慕う三角哲彦に会いたい気持ちのあまり、一人で電車にも乗ったことのない7歳の子どもが千葉から東京まで電車に乗って出かけ、交番に補導されるという事件を起こします。その後、父小山内との約束で、高校生卒業まで、人探しに出かけないことを約束しそれを守り切りましたが、高校卒業後、妻の運転する車で交通事故で亡くなってしまいます。

3人目の「るり」は、正木竜之介の先生だった小沼夫妻の娘として生を受けます。名前は「希美」。「るり」ではありませんが、同じく7歳で高熱に苦しんだ後、瑠璃の記憶が覚醒。妻として愛されることがなかった正木竜之介とのマイナスの記憶が蘇り、希美は、それまで慕っていた正木竜之介を避けるようになります。

最後4人目の「るり」は小山内瑠璃の幼なじみ・ゆいの娘「緑坂るり」として生を受けます。3人の「るり」の記憶をもつ「緑坂るり」は7歳の少女。小山内と初対面時に、以前から小山内のことを知っていたような話をする。そして、「だって、私はあなたの娘だった瑠璃の記憶があるから」と小山内に告げるのです。

1人目の正木瑠璃の死から30年。小山内瑠璃、小沼希美、緑坂るりと3度の転生。周囲の一部の人は、その「生まれ変わり」、その因果に気づいていきます。果たして「るり」は三角と再び巡り逢うことができるのか―――

是非、ラストシーンまでの奇跡・軌跡は、小説を読んで楽しんでみてください。結末は甘いラブストーリーとは違いますが、素敵です。

月の満ち欠け:感想

本作のストーリーに関する感想は、様々な方がSNS、ブログ等で発信しています。そこで、私は、本ストーリーのキーとなる言葉などから、私なりの考察をしてみたいと思います。

満ち欠けを繰り返す「月」。脆くはかない「人の命」

人の命はものすごくはかない。歯車が狂って、突然、死を迎えてしまいます。生まれ変わりの「るり」たちはまさにそんなは儚さの象徴です。

一方の、月の持つイメージも脆くて儚い。太陽光に比べ、月光ははかなげで弱々しく見えます。
しかし、その実、月の満ち欠けは永遠。光は弱そうに見えて、太陽以上に海の底を照らします。そして、何より、月は地球の海面を何メートルも満ち引きさせる巨大なパワーを持っています。

人はそんな月に魅せられて、人は月に魅了されるのでしょうか。月を見上げると、思い出される小説が増えました。

輪廻転生と因果

輪廻転生――― 仏教などで、生命体が死を迎えると、その魂が新たな生命体として再生するという、生命の永遠性を信じる考え方です。生まれ変わる際には、生前の行いや因果関係が次の再生に影響を及ぼします。そして循環の中で、生まれ変わるたびに魂が成長していくことで、最終的には最終的な目的である解脱(生死の苦しみから自由になること)へ至ると考えられています。

本作品でも、「るり」は転生する度に、最終的な目的「愛する人にもう一度巡り合う」を達成するために、成長を遂げいるように見えます。4人目の「るり」は、前世の記憶も鮮明、また、愛する人に巡り合うために起こすアクションも、7歳の子どもとは思えない、着実性・確実性を持っているように思えるからです。

本作では、成就したい思いは「恋」ですが、これは、どんな夢だって同じ。強い思いスタートに、より、明確に行動に落とし込んで、想いを遂げていきたいですね。

魂と肉体

「肉体は消えても、魂は存在しつづける。そして、私たちを見守っていてくれる」

仏教国で育った日本人は、仏教の輪廻転生の考えが、心に染み入っています。そして、

・私たちの本質は肉体ではなく、魂(意識)であること
・意識は肉体という制約を超えてお互いにつながっていること
・死後も生前の絆は続き、ご縁が継続していくこと

など、「非科学的である」と思う反面、すんなり受け入れていたりします。

本書を読み終えて考えたのは、輪廻転生・因果の法則に従うならば、新しいご縁に巡り合ったとき、幸せな気持ちになったときは、過去にどのような素晴らしいご縁があったのだろうと、思いを馳せて接すると、もっと良き縁・関係が築けるのではなかろうかと。

また、新しいご縁で気持ちがマイナスに傾いたときは、過去によくない出来事があったかもしれないと思いつつも、今回のご縁をマイナスで終わらせないため、お互いの関係を見直せたら、人間関係の悩みも少しは減って、人生がよきご縁で満ち溢れていくのではなかろうか、と。

最後に

今回は、佐藤正午さんの小説「月の満ち欠け」のあらすじと、読んだ感想を紹介しました。

小説は面白いばかりか、少し視点を変えて読むと、実に学びが多いと感じずにはいられません。
人の痛みを知るには、小説が一番。想像力も膨らみます。ビジネス書ばかり読んでいる方は、是非、小説も読んでみてください。

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