日本では、義務教育で「文書を論理的かつ簡潔に記述する」という、当たり前のテクニックを学ぶ機会がありません。文章を書く「センス」を磨くことは難しいですが、「相手に伝わる実用文を書く技術」は学んで努力すれば向上できます。
今回紹介の髙橋慈子著『技術者のためのテクニカルライティング入門講座』は、分かりやすく伝わる実用文を書くための指南書。タイトルには「技術者のための」とありますが、すべてのビジネスパーソンに役立つ内容となっています。わかりやすい説明は、自己の評価UPの武器にもなります。
今回は、著書『技術者のためのテクニカルライティング入門講座』から、「わかりやすく、簡潔な文章を、短い時間で書き上げるテクニック」に関する学びを紹介します。
目次
なぜあなたの文章はわかりくいのか
文章がわかりにくい理由は主に3つあります。
❶一文が長く、情報量が多い
❷読み手を意識せず、自分視点で書いている
❸基本的なライティング技術を活用していない
これらを改善する具体的なポイントを知る前に、まず、論理的に文章をまとめる「ロジカルライティング」から見ていくことにしましょう。
筋道を立ててわかりやすく「ロジカルライティング」
ロジカルライティングとは、筋が通った論理的な文章のことです。
ビジネスにおいて、筋道を立てて書くことが大事な理由は、「なぜ、よいのか」、「どうして、そうするのか」を論理的に説明できなければ、相手は動いてくれないからです。筋が通っていない文章では、とるべきアクションがわからず、行動につながりません。
大事なことは、「自分視点」ではなく、「読み手視点」で情報を整理して書くことです。読み手立場に立って、筋道を見える化し、漏れやダブりがないように組み上げることです。
書き始める前に、フレームを使って情報を整理する
ロジカルに書くために便利なのが、ロジカルシンキングの「フレーム」を使った情報整理です。文章を書き始める前に、情報を整理して、ロジックツリーを組み立てます。
思いついたままに書き始めると、筋道の通った内容にはなりません。文章完成までに時間も要します。さらに、書き手は自分が関心の高い内容に力を入れてしまうため、ダブりや必要事項の抜けが生じやすくなります。
また、文章作成に時間がかかる人の多くは、いきなり書き始めて、書いては修正を繰り返します。まずは情報を内容しましょう。
最も簡単なロジックツリーの組み立て方
最も簡単なロジカルな文章の作り方=ロジックツリーの組み立て方は、トップに主題を置き、上から下へと組み立てていく「トップダウン」の方法です。
例えば、障害報告書であれば、以下のように組み立てます。
1階層目:主題
2階層目:「何が起こったのか?」、「原因は何なのか?」、「どう対処したのか?」、
「今後はどう取り組むのか?」といった読み手の視点での項目
3階層目:具体的な情報
書き味の悪いペン、まとめるのに適さないノートを使っていませんか?脳は、このようなことに簡単にハックされるので、ペン・ノートを気遣うことは非常に大事です。数百円の自己投資で効率がUPします。
わかりやすく、簡潔な文章を書くテクニック
ここからは、具体的な簡潔な文章を書くテクニックを見ていきましょう。
一文を短く。50字以内に
一文が長くと、読み手は理解しにくくなります。エッセイなどと異なり、実用文は相手に簡潔にわかりやすく伝えることが大事。
簡潔な文というのは、内容がない短い文とは異なります。短い文にこそ、文章力が問われます。以下に気をつけ、一文を短くしましょう。
・「〜だが」「〜ので」で文をつながない(最も伝えたいことが不明瞭になる)
・理解しやすい文の長さは50字。A4判の文書なら、1行+10字程度
5W2Hを盛り込み、曖昧な文章にしない
相手にポイントが伝わらない文章は、文章が自分目線で書かれている可能性があります。自分にとっては当たり前なため、分かりにくい言葉を使ったり、省略してしまうのです。簡潔に書くことは、情報量を減らすことではありません。
・省いてはいけない情報が何かを意識する。行動につながる具体的な情報を漏らさない
・5W2Hを盛り込む
・タイトルから目的がわかるように表現(キーワードを盛り込むなど)
・メールの件名の場合は、[要返信][依頼]といった目的を盛り込むのもよい
・過剰な敬語表現、話し言葉になっていないか注意
文章を簡潔に仕上げるコツ
文章を簡潔&短時間で仕上げるコツは、「最初は 多めに書いて削ること」です。
まずは書き上げて、それから文を区切ったり、順番を変えたりして再構成する方が、文章がよくなります。
この時、一文一義を吟味し、接続詞の使用は最小限に抑えるようにしましょう。例えば、複数の事項を伝えたい時、番号で表現したり、箇条書きにすれば、接続詞は省けます。
読み手に伝わる文章を書くテクニック
前節では、「簡潔に書くための技術」を紹介しましたが、ここからは「読み手に伝わる文章を書く技術」についてです。
文章を簡潔に仕上げる8つのコツ
ビジネス文章では、仕事を正確にかつスピーディーに進められるように書くことが大事です。ポイントは、以下の8点です。
❶最も重要な内容を先に書く
❷形容詞や名詞句でなく、動詞でズバリと書く(行動につながる動詞を使う)
❸否定表現に気を付ける
❹受動態と能動態を使い分ける
❺具体的に情報を盛り込んで書く
❻「など」を多用しない
❼プレゼンテーション資料では、次へのアクションや双方向性を意識してまとめる
❽最後の文でしっかりと締めくくる(最後の締めくくり次第で、読み手が受ける印象が変わる)
注意したい表現
「❷同士でズバリと書く」に当たって注意したいフレーズが、「〜が必要です」という表現です。
特に、丁寧な文章を書く方は、断定表現を避け、婉曲な表現をしがちです。しかし、相手に行動を促すことが目的なら「~してください」とした方が、読み手に何をすべきかが明確に伝わります。
「〜し ない とは 限らない」といった「二重否定」は、どのぐらい危険なのか程度が曖昧になりますし、「など」も具体的に何を指すのか曖昧になります。例えば、今後の取り組みや目標を示すときに「など」を多用すると、やるべきこと・なすべきことが曖昧になり、読み手の気持ちが鼓舞されません。
読みやすさを高める表現・表記のルール
ビジネスでは、いかに素早くまとめるか、「短い時間で書き上げる」スキルも問われます。
本書では、時短・読みやすさUPにつながる表現・表記の8つのルールが紹介されています。
❶文章に必須の要素を適切に書く
❷要素の配置と書式には意味がある(特に冒頭は大事)
❸ブロック化して要素を区切る
❹カッコは2種類を基本として使う
❺フォントの使い分けのセオリーを知る
❻階層構造を数字や記号で示す(情報量が多い場合は階層化。構造は3階層程度に)
❼箇条書きを効果的に使う(7項目までが基本)
❽カタカナ語と英字表記の基本的なルールを使い分ける
具体的な内容は、是非、本書でチェックしてみてください。
最後に
本記事では、髙橋慈子さんの著書『技術者のためのテクニカルライティング入門講座』からの学びを紹介しました。
本書では、上記、簡潔で相手に伝わるわかりやすい文章の技術を深めるに当たって、取扱説明書、生涯報告書といった、実務に直結する事例も取り上げ、書き方のコツや注意点を指南してくれます。また、紙面の都合で書籍本体の中では紹介しきれなかったコンテンツをPDF形式でダウンロードできる特典もついています。
是非、本書を手に取り、分かりやすく簡潔な文章を書くテクニック、読み手に伝わる文章を書くテクニックを学んでください。