人間の三大欲求、「睡眠欲」、「食欲」、「性欲」。
この中で、悩みを持っていても相談しにくいのが「性欲」。特に、中高年になると「性の話」は憚られるものです。
しかし、時代は「人生100年時代」。年相応に、正しく付き合うことが必要。特に年齢を重ねると、SEXレスの問題だけでなく、ホルモンバランスの変化により、女性の場合は、更年期障害、ニオイ、痛み など、健康に影響を及ぼします。
本書の著者の富永喜代先生は、ご自身がデリケートゾーンの匂いなどの健康障害を抱えたのをきっかけに、性関連の診療にも注力。多くの性交痛外来、性的機能不全 他、性に関する様々な診断治療をされてきた実績の持ち主です。本書でも、結構突っ込んだ「性の悩み相談アドバイス」が多数紹介されています。
今回は、著書「女医が教える性のトリセツ」から、性に関わる健康・病気・アンチエイジングに関わる学びを紹介します。
目次
歳をとっても悦びを諦めないためには、正しい知識が必要
人生100年時代、パートナーと上手にセックスを楽しんでいきたいと思っても、身体がそれを許さないという問題を抱えるカップルは多いのではないでしょうか。
男性の場合は大事な時に立たない、体力が衰えてしんどい、女性の場合は、デリケートゾーンのニオイ・ヒリヒリ感・違和感・性交痛など、若い時は気にしなかった様々な違和感が出てきます。さらに、男女ともホルモンバランスの変化による障害も出でてきます。しかし、性に関する悩みは、誰にも相談できず、ひとりで悩みを抱えている場合が多いです。
男女とも、適切なケアをしなければ、中高年以降は性機能が低下するのは当たり前。人生100年時代、悦びを諦めないためにも、性に関する体系化した医学的論拠、統計的な指針を知っておくことが大事と、先生はアドバイスします。
【膣活】気になるニオイの正しいケアと処方箋
ママのアソコ、くさいよ
40代のある日、先生は息子に突然、衝撃の一言を浴びせられたそうです。「そんなことはないでしょ!」と言葉では否定したものの、忠告前からデリケートゾーンのニオイ問題を自覚。しかし、恥ずかしくて真正面から受け止めきれぬまま、日々過ごしていたと、先生はご自身の恥ずかしい話を赤裸々に告白します。
デリケートゾーンのニオイが気になりだしたのは、加齢が関係しています。
エストロゲン低下は デリケートゾーンに影響
女性が更年期を迎え、エストロゲン分泌が低下したときの弊害としてよく知られているのは「更年期障害」ですが、実は、デリケートゾーン(陰部)全般にも大きな影響を及ぼします。
人の体では、血流によって酸素やたんぱく質などの栄養が運ばれています。更年期以降はエストロゲンの低下により血流が悪くなり、栄養が行きわたりにくくなります。結果 腟粘膜が薄くなり、分泌腺能力が低下。さらに保水力も失われ、性交の際にも濡れづらくなり性交痛を起こすなど、様々な影響が出てくるのです。
腟の自浄作用が衰え、ニオイの原因に
さらに、おりものや粘液が減って腟の自浄作用も弱まります。その結果、腟内の善玉菌も減ることで、いやなニオイを発しやすくなります。また、細菌感染や炎症に弱くなり、かゆみやかぶれが慢性化しやすい状況になります。
最近は「腸活」で「腸内フローラの環境(善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランス)を整えよう」と言われますが、膣にも「膣内フローラ」があり、通常、デーデルライン桿菌 という常在菌(乳酸菌の一種の善玉菌)によって守られています。
この菌が腟内を常に酸性(pH値3.8~4.5)に保ち、外からの雑菌の混入を防いでくれているのですが、この機能が加齢とともに衰えて、腟内がアルカリ性に傾き、自浄作用が弱まってしまう。これが、ニオイやかゆみにつながります。
【膣活】ニオイが気になる人は専用ソープ・ジェルの利用を
膣の浄化作用を促すデーデルライン桿菌は、普通のボディシャンプーなど弱アルカリ性のせっけんで洗うと死滅します。ニオイを断とうとしっかり洗うと逆効果!
デリケートゾーンのニオイを防ぐために、先生はデリケートゾーン専用のソープの利用を勧めます。本書では具体的な商品は紹介されていなかったので、Amazonで調べたところ、以下の「サマーズイブ フェミニンウォッシュ」が最も評価が高い人気品でした。
また、減ってしまう乳酸菌をを補充し、ニオイを断つためのおすすめ品として、先生は膣用保湿ジェルクリーム「Dr.ESTRA エストラジェル」をおすすめしています。
更年期障害と女性
日本人の女性が閉経を迎える年齢はおおよそ50歳ごろ。閉経を挟んで、前後5年、合計10年間を更年期といいます。
この時期は、女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌が急激に減少することでホルモンバランスが乱れ、心身の変化や不調が生じます。これが「更年期障害」です。
閉経でエストロゲンが分泌されない弊害
女性の卵巣で作られる女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があります。このうち、エストロゲンは、妊娠・出産に関わるだけでなく、関節、骨筋肉、肺、心臓、血管など全身の機能を調整する作用があります。また、脂質の代謝にも深く関わり、コレステロールの分解を担っています。
閉経をしてエストロゲンが分泌されなくなると血液中のコレステロールが余ってしまうため、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が急に増えて、動脈硬化になりやすくなります。また、骨密度が減少する「骨粗しょう症」になりやすくなります。
エストロゲンは、女性の老化全般にかかわる(細胞を老化から守り、肌のハリ、つやを保ち、女性の美と健康と健康を維持する)ので、この機能を衰えさせないためにはアンチエイジングケアが望まれるわけです。
中高年カップルへのセックス・セルフプレジャーのススメ
子育てが一段落すると、「久々にセックスを…」と考える夫婦は多いそうです。しかし、ここで問題になるのが「性機能の衰え」です。
女性の性機能の衰え
女性の場合、加齢により、子宮、腟(入り口・奥)は小さく狭くなります。また、神経が集中するクリトリス、デリケートゾーンの皮膚・粘膜も薄く弱くなります。これが、加齢になって生じる性交痛の原因です。
また、性欲が低下し、オルガズムを感じにくくなることも痛みの原因。オルガズムを感じると、脳では「β エンドルフィン」という「痛み止め物質」 が放出されますが、これが出ないので、さらに痛みが増すことになります。
男性の性機能の衰え
男性の場合、キーになるのは男性ホルモンの「テストステロン」。テストステロンには筋肉の量を増やし強度を保つほか、男性としての機能の維持や、集中力やリスクをとる判断をするなどの高次精神機能、内臓脂肪やメタボリック症候群、骨密度にも関係しています。
このテストステロンは、20代前半をピークとして加齢とともに減少。40歳以降には、一般的に性欲の低下、勃起力の減退、性機能の低下などの変化が見られるようになります。
セルフプレジャーのススメ:その効果
先生は、身体の機能を維持するために、中高年になっても1か月2回ぐらいはセックスすることを勧めています。しかし、これは相手あってのこと。状況が許さない場合は、セルフプレジャーを勧めています。
セルフプレジャーとは聞きなれない言葉ですが、いわゆる、ひとりエッチ・オナニー・マスターベーション のことです。セルフプレジャーは単に性的欲求を満たす効果にとどまりません。
女性の場合、セルフプレジャーでオルガズムを得ると、大量のオキシトシン が分泌。不安な気持ちが低下し、緊張が緩和され、ストレス解消に直結します。さらにオキシトシンは セロトニン の分泌を促します。このセロトニンの働きにより、眠気と覚醒のリズムを整える メラトニン も分泌されます。
さらに、脳内麻薬βエンドルフィン も分泌されます。 β エンドルフィンには、鎮痛鎮静作用があり、その鎮静作用はモルヒネの6.5倍もあります。
まさに、セルフケアとしてのセルフプレジャーは、「薬に頼らない健康法」なのです。
歳をとっての自慰行為を憚る人は多いと思いますが、健康を考えれば「憚る必要なし」と考えを改める必要がありそうです。
βエンドルフィンで脳を気持ちよくするために、私が日々行っているのは【サ活】。
ジムとの運動との併用で、さらに脳が気持ちよくなって、ますますよく寝れます😄
【膣活】エストロゲンの最大活性物質「エストラジオール」
本書には、膣活、セルフプレジャーのためのマッサージ法も紹介されています。マッサージケアを8週間行ってもらうと98%の人にうるおいが出て性交痛が軽減といった研究もあるそうです。
なお、膣活マッサージに当たって、3つあるエストロゲンの中で最も力の活性力のある物質を含む エストラジオール配合オイルの利用を勧めています。
セルフプレージャーの道具も進化
セルフプレージャーの道具というと、卑猥なバイブレーターなどを思い浮かべてしまいますが、最近は女性のセルフプレジャーに特化したアイテムも増えてきています。
以下は、本書でも紹介されている女性用のセルフプレジャーブランド。ます。興味がある方は以下から商品をチェックしてみてください。見た目は卑猥ではないのでご安心を。
・iroha(イロハ)
・ウーマナイザー より高い悦びを得たい人向け
最後に
今回は、富永喜代先生の「女医が教える性のトリセツ」の中から、「健康にかかわる情報」にフォーカスして、私が学んだことを紹介しました。
今回の紹介した内容は、いつまでも若くイキイキ過ごすための情報ですが、本書はそれ以上、「中高年カップルの生のお悩み」や「中高年がよりセックスを楽しむための方法」「性の悦びをあきらめないための方法」に関する情報の方が多いです。カップルで共有した方がいい内容も多いです。
是非、お悩みのある方、誰もが避けられない中高年の性に興味がある方は本書を手に取ってみてください。