
たくさんの本を読みたいと思う読書家にとって、本はどう読むかは重要な問題です。
本書のタイトル「乱読のセレンディピティ」の「セレンディピティ(serendipity)」とは、聞きなれない言葉ですが、「予測していなかった偶然によってもたらされた幸運」あるいは「幸運な偶然を手に入れる力」のこと。
東大・京大で超読まれた本「思考の整理学」で有名な著者の外山滋比古さんは、幸運な偶然=面白い発見や新しい発想をもたらす「乱読」を重視した読書を薦めます。
今回は、「乱読のセレンディピティ」から、外山さんがすすめる乱読法とそのメリットを紹介します。
目次
外山流、セレンディピティな乱読 6ヶ条
最初に結論ですが、本書で外山さんは、セレンディピティな乱読法として、以下の方法を勧めます。
- 本は手当たり次第に読み、面白くなければ途中で投げ出せ。偶然手に取った本からひらめきが生まれる。
- 難しい本をじっくり丁寧によみ、知識ばかりを身につけても思考力は磨かれない。知識を持つだけなら、人間はコンピューターにかなわない。人間だけができる活動が「思考すること」だ。そのためには、思考の飛躍が必要だ。「乱読」はそれを助ける。
- せまい専門分野の本ばかり読んでいると、頭はいつしか不活発になり、クリエイティヴでなくなる。
- 自分の力で本を選べ。あふれるほどの本の中から何を求めて読むかを決めるのも「知的活動」になる。
- 忘却は重要な効果を持つ。記憶は忘却の力を借りて代謝をおこし、再生される(少しずつ変化する。記憶の新陳代謝)。
知識をすべて蓄えていると頭の中がいっぱいになってしまう。本を読んで、大事だと思ったことは自然と心に刻まれる。心に刻まれなかったことをノートに書き留めても、結局はあまり意味がない。 - 朝の頭は1日でもっともよい状態。睡眠により得られる「忘却による浄化」で、頭が最もよく働く。
乱読のよさとは
乱読にいいイメージを持たない人が多いと思いますが、外山さんの見方は違います。
乱読が嫌われる理由
そもそも、なぜ、我々は、乱読を嫌うのでしょうか。
ひとつは乱読では失敗が多いからです。名著を読むのに比べれば、失敗ははるかに多い。「失敗はいけない、失敗するな、という常識からすれば、乱読は賢明ではない読み方」となってしまいます。
しかし、人間は失敗によって多くのものを学びます。そして、ときとして成功より大きなものが得られることもあります。そう考えると、乱読がより実り多きものであるとも言えそうです。
ただ、まだ、この説明では多くの人はピンときませんよね。
乱読のよさに気づくこと自体が、セレンディピティ
偶然にも駄作を読んで「何かに気付く」ことってありますよね。例えば、反面教師になったり、或いは、良書の良書たることを再認識して、改めて本を見返したり…
外山さん曰く、「乱読のよさに気づくこと自体が、思いがけない発見=セレンディピティ」なのです。
特定分野の本ばかり読む弊害
私は、かつて「ビジネス書」、しかも、経済、経営、マーケティング、投資といったような「金融」、もっと平たく言えば「お金」に関する本ばかり読み漁っていた時期がありました。
しかし、外山さんは言います。
せまい専門分野の本ばかり読んでいると、われわれの頭はいつしか不活発になり、クリエイティヴでなくなる。模倣的に傾くように思われる。
それにひきかえ、軽い気持ちで読み飛ばしたものの中に、意外なアイディアやヒントがかくれていることが多い。乱読の効用であるように思われる。
確かに。事実、「クリエイティブでなくなる」「本の内容を参考に動く=模倣的になる」傾向があったように思います。いわゆる、頭でっかちな感じです。一方、乱読で広く学ぶと思考はあちらこちらに飛ぶものの、「広がり」が実感できます。
忘却も大事。消化し記憶の新陳代謝をしよう
今の時代、知識や情報を詰め込むための多読は意味がありません。なぜなら、情報はあふれており、ググれば知識・情報はいくらでも手に入るからです。
そんな知識を取り込みすぎて、使うこともない状態を外山さんは「知的メタボ」と名付けています。知識は有用ですが、消化し切れない知識をいつまでもかかえこんでいると、頭は不健康な肥満になるおそれがあると。
だからこそ、自然忘却は重要です。
知識を食べものとすれば、忘却は消化、排泄に当る。ものを食べて消化、吸収する。その残りカスは体外へ出す。食べるだけ食べて、消化も排泄もしなければ、不健康な満腹、糞づまりとなって危険である。づまりを放置することはあり得ないが、知的メタボリック・シンドロームによる糞づまりは、うっかりすれば見逃されかねない。
「記憶はいつまでももとのままであるのではなく、忘却によって、少しずつ変化する。しかも、よりよく変化する。」これこそが銃です。
よい忘却で頭&思考をUpdateするのは「良質な睡眠」
一日のうちで、朝がもっとも頭のよくはたらくのは、朝ですよね。理由は、朝は睡眠で頭が掃除=忘却&整理された状態だからです。記憶の新陳代謝を計るためにも「快眠」がとても大事です。
「脳にとって、睡眠は超大事。早寝早起き、しっかり睡眠」
睡眠は疲れを取るだけのものではありません。夜、ダラダラ、ブルーライト満載のスマホを見続けたり、不毛なテレビを見続けるのはやめて、良質な睡眠ですっかり目覚めましょう。
最後に
今回は、外山滋比古さんの「乱読のセレンディピティ」を紹介しました。
本書ではたくさんの読書法に関する本の書評をUPしています。「脳」「記憶」「思考」「読書法」といった言葉で検索してみてください。