投資家なら押さえておくべき アフターコロナのニューノーマル(新常識)、 見えてきた7つのメガトレンドとは何か。

凶悪な新型コロナウイルスが最初に発見されて半年以上が経過。この現代人が経験したことのない猛威は、既存秩序を一瞬にして崩壊させ、ビジネス・日常生活の常識を変えました。

世界はもとには戻らない。生活は「ニューノーマル(新たな常識)」に置き換えられる。

では、アフターコロナの世界とは?具体的にどう変わるのか?

知っておきたくて、本書を手にとったムック本「アフターコロナ」。

テレビ・雑誌では「テレワーク」「在宅勤務」といった、万人にわかりやすい生活に密着したwithコロナ/Afterコロナ情報しか見えてこない。しかし、本書では、様々な分野の30人以上のキーパーソンの意見、そして、見えてきたアフターコロナ時代の「7つのメガトレンド」=ニューノーマルが語られる。

今回は本書「アフターコロナ」から、今後の生き方・働き方を模索するに当たって覚えておきたいことをメモします。

アフターコロナ時代の「7つのメガトレンド」

アフターコロナの時代でのニューノーマルとなる7つのメガトレンドを端的にまとめると以下のようになります。

7つのメガトレンド

分散型都市         :集中から分散へ、大都市化の終焉
ヒューマントレーサビリティー:「監視社会」か「救世主」か?
ニューリアリティー     :オンラインが揺るがすリアルの在り方
職住融合オフィス      :リモートワークの浸透で街が変わる
コンタクトレステック    :接客はロボット!?「密」会費社会のキーテクノロジー
デジタルレンディング    :新しい金融の形。非対面融資
フルーガルイノベーション  :ゼロイチではなく、1→10で新しい価値を創造

既存秩序を破壊して生まれる新しい動きは既に始まっています。
この波が後退することは、決してありません。

さて、上記、7つのキーワードの中で最も聞きなれない言葉は「フル―ガルイノベーション」ですよね。以下で解説しますね。

【解説】フル―ガルイノベーション

フル―ガルイノベーション(frugal innovation)とは、直訳すれば「倹約的なイノベーション」。人類が常識が覆されるようなショックが起こったとき、ショックは不景気をもたらします。不景気の状況では、企業が自らゼロからイチを生み出す余力がない。或いは、急激な変化を迫られます。つまり、お金も時間もない中でイノベーションを起こさなければなりません。

このような中では、ゼロイチで革新的なイノベーションを生み出そうとするのは無理がある。だから、今ある技術・サービスを持ち寄って、早急にショックに対応する新しい価値を生み出すことが大事とする考えです。

世界的危機年表(2001~2020年)

息つく暇なく訪れる世界的危機。しかし、あなたは、この20年間でどのような危機があったか覚えているでしょうか?

以下は、私が大好きなで様々なことを学ばせて頂いた本の著者でもある、立命館アジア太平洋大学学長の出口納明氏の言葉です。

パンデミックは人類史を前に進める。今、大切なのは歴史から学び、本質を理解せよ。

歴史から学ぶには、世界はどんな危機を経験・克服し、今に至るのか?
そこで、本書記載の危機年表を備忘録として記載します。

世界危機年表(2001~2020年)

2001~2020年に起こった危機
2001.09 米同時多発テロ
2001.10 アフガニスタン戦争
2002.11 SARSの流行
2003.03 イラク戦争
2004.03 マドリード列車爆破テロ
2004.12 スマトラ島沖地震
2006.10 北朝鮮の核実験
2008.09 リーマン・ショック
2009 春 新型インフルセンザの流行
2009.10 ギリシャ危機
2010.11 欧州債務危機
2011.01 ジャスミン革命
2011.03 東日本大震災
2011.07 タイの大洪水
2013.03 キプロス危機
2014.01 エボラ出血熱の流行
2015.11 パリ同時テロ
2016.06 Brexit国民投票
2018.03 米中貿易摩擦
2020.01 新型コロナウイルスの流行

このように見ると、正直、すっかり忘れてしまっているものが多数。結局、自分事にならないショックは「対岸の火事」なんです。これは、私に限ったことではないと思います。

世界中の人が出かけたくても自由に出かけられない、働きたくても働けない行動規制が布かれる…
第二次世界大戦後、これほどまで、世界の人が同時に経験した「試練」は一つとしてありませんでした。
新型コロナウイルスが、地球規模で与えたインパクトはあまりに大きい。

【2020年4月7日、「日本」が止まった。経済ロックダウン(緊急事態宣言)】

覚えておきたいと思います。

コロナ危機によるパラダイムシフト

コロナ危機は、以下のパラダイムシフトを起こしました。
パラダイムシフト(paradigm shift)とは、時代や社会において、常識的な考え方の枠組み(パラダイム)が、革命的、劇的に大きく転換(シフト)することですが、コロナ危機は、以下のパラダイムシフトをもたらしました。

コロナ危機によるパラダイムシフト

❶効率第一→安全第一
❷災害対策→感染対策
❸近距離→遠距離

これに関連して、様々な業界が変化を迫られています。

冒頭で述べた通り、本書では30人の専門家の取材記事がまとめられていますが、やっぱり、個人的には経済関係者の意見に強く目が留まりました。以下、その内容をまとめます。

DXの意識が乏しい会社は投資対象から外す

レオスキャピタル社長 藤野英人
コロナショックで明らかになったのは、企業経営では公衆衛生や社員の健康、取引先の安全などを真剣に考えていかなければならないということ。

企業というのは、単純に利益を上げればいいというものではありません。自社株買いをしたり、配当を増やしたりすることだけが、「よい経営」ではない。各社が負っている社会的責任を果たしてこそ、商品や製品、サービスなどが選ばれ、企業の存続が可能になるのです。

健康経営ができている企業とそうでない企業とでは、社員のロイヤルティー(忠誠心)に雲泥の差がある。社員のロイヤルティーが高ければ、企業の競争力は増し、企業は拡大します。

今後は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の意識が乏しい会社は投資対象から外す。SDGs(持続可能な開発目標)、SRI(社会的責任投資)の重要性が一層高まるでしょう。

次の革新はバイオ。デジタル時代にはない不確実性がカギ

元MITメディアラボ 伊藤穣一氏

過去、フィジカルからデジタルに移行した際に、コンピューターやインターネットの誕生などの革命がおこった。今はその次、デジタルからバイオ。

デジタルとバイオの一番大きな違いは、不確実性。デジタルは不確実性が少なく、コントロールしやすい。バイオはもともとちゃんと理解できない前提で動いている。だから、不確実性と突然変異でどんどん変化してしまう。統計的に考えて不確実性の中で判断することにコンピューター系の人は慣れていない。

その他

・新型コロナによって「資本主義の限界が明らかになった」(米ムーブン創業者 ブレットキング氏)
・分散化でレジリエンスな構造が求められる(京都大学大学院教授:藤井聡氏)
・「不確実性の時代」が新常識の姿(経済産業省:中野剛志氏)

最後に

今回はムック本「アフターコロナ」を紹介しました。アフターコロナの世界の価値観を広く浅く学ぶには良い本でしょう。

本書の最後のページに、アマゾンのジェフ・ベゾスの書簡に引用されたドクター・スースの言葉が記されています。

何か悪いことが起きた時、人には3つの選択肢がある。その出来事に縛られるか、打ちのめされるか、もしくは強くなるかだ。(ドクター・スース)

あなたは、どうしますか?
この言葉にあるように、私たちは、変化し強くなることが求められています。