【書評/要約】仕掛学 ―人を動かすアイデアのつくり方(松村真宏 著)(★4) ~思わず反応してしまう仕掛けをつくるヒント

日々の生活の中で、「無意識のうちにそうしていた」「思わず反応してしまった」といった経験が少なからずありますよね。それは、誰かの「仕掛け」によって意図的に引き起こされたものかもしれません。

松村真宏さんの著書「仕掛学」は、日常生活にある「つい、したくなる戦略的仕掛け」と、そのアイデアの仕方をまとめた一冊。

食べ過ぎや整理整頓ができないといった、「した方がいい」とわかっていてもできないことを「ついしたくなる」ようにする様々な「仕掛け」は、無理なく行動を変えることで自分をよき方法に導いてくれます。

今回は、「仕掛学」から、「よき仕掛け」とはどのようなものなのか、そのような仕掛けはどのように生み出したらいいのか(発想したらいいのか)について紹介します。

[スポンサーリンク]

「仕掛け」の重要性

「仕掛け」の重要性:仕掛学

人は怠惰な生き物。整理整頓した方がいい、運動した方がいいと自ら改善するのはもちろんのこと、人から言われてもなかなか改善できないものです。
しかし、巧みな仕掛けで「ついしたくなる」ように間接的に伝えて結果的に問題を解決することを狙うのが「仕掛学です。

おもわず反応してしまう仕掛け

例えば、ファイルボックス。斜めの線が描かれていると、つい一直線になるように順番に並べたくなります。これで整理・整頓を意識することなく、整理ができてしまう。

また、男性の小便器。的があるとその的を狙いたくなるという人の習性を利用すれば、トイレのおしっこの飛散を防ぎ、トイレをきれいに保つことができます。

よい仕掛けは社会的問題解決になる

上記の例に共通するのは、無理やり行動を変えさせようとするのではなく、つい行動を変えたくなるように仕向けられてしまうこと。「ついしたくなる」ように仕向けることは不確実性を含むので遠回りに見えますが、一個人の問題だけでなく、社会問題にも使える有望なアプローチになります。

「良い仕掛け」と「悪い仕掛け」

「良い仕掛け」と「悪い仕掛け」:仕掛学

仕掛けは悪用することもできます。では、「良い仕掛け」と「悪い仕掛け」とはどう違うのでしょうか。

良い仕掛は笑顔になれる

「良い仕掛け」と「悪い仕掛け」の区別は簡単です。仕掛ける側と仕掛けられる側の双方が目的を知ったときに「素晴らしい、こりゃ一本取られた」と笑顔になるのが良い仕掛けです。一方、「だまされた、もう二度と引っかからないぞ」と仕掛けられた側が不快になってしまうのが悪い仕掛けです。

良い仕掛は、以下のように定義できます。

良い仕掛けの3定義

公平性(Fairness)   :誰も不利益を被らない
誘引性(Attractiveness):行動が誘われる
目的の二重性(Dualityofpurpose):仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる

良い仕掛の例

❶早起きのための「ホームベーカリー タイマーでの起床」
ホームベーカリーでパンが焼きあがると、おいしく頂くにはすぐにパンを取り出す必要がありますよね。これを活かして、「がんばって起きた結果、焼きたてのパンが食べられ、目覚まし時計」とできます。

❷毎日1万歩達成のために、「歩きながら稼げるアプリを利用」
私の例ですが、自宅で仕事をする私にとって、たとえ健康・ダイエットのためだと分かっていても、「毎日1万歩達成」はかなり高い目標です。
そこで、歩いて稼げるアプリMoveToEarn)を導入して、気持ちを高めています。

負担が小さいほど良い仕掛け

良い仕掛がうまくWorkするために大事なのが、仕掛けの「実行&心理負担」です。

行動を変えるときに必要な負担が大きければ、「それに見合う便益が得られない」と関上げてしまうため、と人の行動は変わりません。一方、負担が小さければ、たとえ、便益が小さくても人の行動は変えやすい。仕掛けは負担が小さいほど良い仕掛けと言えます。

いかに、心理・時間など、コストのかからない方法を考えられるかが非常に大事になります。

仕掛けの作り方

仕掛けの作り方:仕掛学

仕掛けの有効性はよくわかったものの、いざ、新しい仕掛けのアイデアを考えようと思っても、なかなか難しいものです。では、どうしたらアイデアが浮かぶのでしょうか?

アイデアとは既存の要素の組み合わせ

仕掛けのアイデアは、基本的には「アイデアとは既存の要素の組み合わせ」以外の何者でもありません。対象とする問題と類似した仕掛けの事例が見つかるのであれば、その仕掛けの一部を変えてみることが一番簡単かつ確実な方法です。

そこで使えるのが、アイデア発想法です。以下で有名な2つの発想法を紹介します。

オズボーンのチェックリスト

アイデア発想につまったときは視点を切り替えるのが良い。そのときによく使われるのが以下の9カ条からなるオズボーンのチェックリストです。

オズボーンのチェックリスト

1.他の使い道は?(Puttootheruses?)
2.他に似たものは?(Adapt?)
3.変えてみたら?(Modify?)
4.大きくしてみたら?(Magnify?)
5.小さくしてみたら?(Minify?)
6.他のもので代用したら?(Substitute?)
7.入れ替えてみたら?(Rearrange?)
8.逆にしてみたら?(Reverse?)
9.組み合わせてみたら?(Combine)

このチェックリストの覚え方は「ださく似たおち
代用・逆さま・組み合わせ・似たもの・他の用途・大きく・小さくの頭文字をつなげたもの という意味で覚えましょう。

SCAMPER法

オズボーンのチェックリストを改変版がSCAMPER法です。SCAMPERは以下の7つの要件の頭文字をつなげたものです。

SCAMPER法のチェックリスト

1.入れ替えたら?(Substitute?)
2.組み合わせたら?(Combine?)
3.他に似たものは?(Adapt?)
4.変えてみたら?(Modify?)
5.他の使い道は?(Puttootheruses?)
6.取り除いたら?(Eliminate?)
7.並び替えたら? 逆にしたら?(Rearrange)

「ハンマーを持てば、全てが釘に見える」という「マズローのハンマーの法則」がありますが、どんな問題にでも固定概念や自分の得意な手法を使うことにこだわってしまうと広い発想で物事を考えられなくなります。広い視野で物事を考えましょう。

最後に

今回は、松村真宏さんの「仕掛学 ―人を動かすアイデアのつくり方」を紹介しました。わかっているけどできない自分を動かす仕掛け、或いは、社会的に意義のある仕掛けづくりに本書の考え方を活かすといろんなメリットが得られそうですね。日頃から意識していると、ふとした時にアイデアが思いつくかもしれません。

以下の本も参考になるので、合わせてご確認を!