【書評/要約】気弱な人が成功する株式投資(岩崎日出俊 著)(★4) 成長株投資の父 フィッシャーの長期投資をわかりやすく解説

バフェットにも大きな影響を与えた成長株投資の開祖であるフィリップ・フィッシャー
スタンフォード大学ビジネススクールの株式投資論の講座でも40年以上にわたってフィリップ・フィッシャーが書いた本が利用されています。

彼は、「保守的な投資とは、減らさない投資、保持する投資ある」と定義しています。これは言葉を変えると「チキン/臆病/気弱な投資」です。

この投資スタイルをわかりやすくまとめた著書「気弱な人が成功する株式投資」(岩崎日出俊 著)には、このフィッシャーの投資スタイルをまとめた本です。

本書が発刊されたのは2014年ですが、2011年の東日本大震災後でアベノミクス相場で株価は上昇はしていたものの、2020年3月のコロナショックの最安値16339円よりも株価は低い時期にありました。

2020年4月、株価大暴落後、今なお二番底形成の可能性が十分ある状況下ですが、長期投資するべき時であるのは間違いありません。本書は今後の資産形成に関わる投資の参考本として、是非とも読んでおいて頂きたい1冊です。

日経平均長期チャート
日経平均長期チャート(クリックで拡大)

チキン・気弱な人の株式投資:「買い」の極意

チキンな投資気弱な投資とは、けなし言葉ではありません。非常にまじめで慎重な投資のこと。慎重であるがゆえに、リスクを減らした効果的な投資ができます。

それではそんな人のための「買い」の極意は何でしょうか?

チキン・気弱な人の株式投資:「買い」の3つ極意

  • 個人投資家が機関投資家に対して優位に立ちうるのは、長期投資ができること
  • 健全な投資には、「知識」「経験」「感情の制御」の3つの要素が不可欠
  • マクロ的に見て、マーケットがかなりの確度で全般的に上がっていくと思われるときはには、いたずらに個別株を吟味して時間を浪費するよりも、手っ取り早く、マーケット全体が上がること(ETF等)に賭けて相場を張ったほうがいい

チキン・気弱な人の株式投資:「利食い」と「損切り」

チキン・気弱な人の株式投資:「利食い」と「損切り」

  • 株式投資で難しいのは「買い」よりも「売り」。特に「損切り」
    買いが間違っていたと判明した時には売らなければならない。これは投資家が感情のセルフコントロールができるかにかかっている。
  • 投資家の適切な処置を狂わせるセイラーの「所有効果」
    自分が所有に対して、人はより高い価値を勝手に与えてしまう。保有する株式の売りは、この「所得効果」に抵抗することから始まる。
  • 「所有効果の罠」に陥らないためには、どうしたらいいのか?
    投資家が持っている株に対して、「今、余分な金があったら、もっと購入するか?」を確認してみよ。

チキン・気弱な人の株式投資:「損切り」の3つのルール

それでは、どのように「損切り」をしたらよいのでしょうか?
損切には3つのルールがあります。大事なのは「事前準備」です。

損切りの3つのルール ~利食いは遅く、損切りは早

  • 買った値段に比べて何%下がったら即刻売るとあらかじめ決めておく。
    その水準まで落ちたら有無を言わさず切る。
  • 今、その値段で持っていることは、その値段でその株を今新たに買うのと同じと考える。
    今日の株価を見て、もしその銘柄を買い増す気が起きないのであれば、持ち株の売却を考える。
  • 買った値段を忘れる。
    重要なのはこれから株価が上がっていくか、それとも下がるかであり、過去いくらで買ったかは関係ない。むしろそういったことにとらわれると、これから先の冷静な判断ができない。

チキン・気弱な人の株式投資:売らなければならないとき

上がると思って買った株も、時に、状況が変わり、ずっと持っていることが損失につながることがあります。それを見極めるには、「売り見極めのルール」を持つ必要があります。

売らなければならないとき

  • そもそも当初の買いが間違っていた時
    フィッシャーによると、株式投資の醍醐味は大きな利益を上げることができること。大きな利益とは数年のうちに5倍、10倍になること。少ない利益で満足してはいけない。間違った株を買ってしまった場合は、損がわずかばかりの利益になることを時間をかけて待つようなことをしてはならない。固執することは大きな魚を逃すことにつながる。
  • 時とともに投資した先の企業が変遷してしまう場合
    フィッシャーの15原則から外れた場合。大きなのは、経営陣の劣化。

チキン・気弱な人の株式投資:売ってはならないとき

個人投資家の悪い癖は、利益がでるとすぐに売却してしまいたくなることです。そのため、「損大利小」(損切りできないが故に損ばかり大きくなり、一方で、利益確定を急ぐため利益が小さい)となってしまいます。

フィッシャーは株価が高くなり過ぎたと思って売り急いではいけない。と提案。「株を買う時にやるきことをちゃんと行ってさえいれば、その株を売るべき時期というのは、ほとんど永遠に来ない」と指摘しています。

最後に

今回は、岩崎日出俊さんの「気弱な人が成功する株式投資」から、フィッシャーの重要な売り買いルールを要約して紹介しました。

きちんとした投資の理論を学ぶには、フィッシャー自身の原書を読むのが一番です。しかし、ボリュームもあり少し難解かもしれません。そんな時は、優れた投資家の投資スタイルをわかりやすく解説してくれる岩崎日出俊さんの本がおすすめです。

なお、フィッシャー氏自身の著書「株式投資で普通でない利益を得る」については以下の記事に要点をまとめているので合わせてご確認ください。長期投資を始めるべき、暴落後の今、知っておくべき内容が記載されています。合わせてご確認を。

上記は以下の本でより詳しく紹介されています。おススメ良書です。