「いいものさえ作れば売れる」と考えモノづくりをしてきた日本。
結果、国内では受け入れられても海外では評価されず、ガラパゴス化し、結果、電気家電産業をはじめ、多くの産業が力を失ってきました。
素晴らしい技術を持った製品でも、人々のニーズと結びついていなければ買ってもらえない。
そう語るのが本書「戦略インサイト」の著者桶谷さん。
では、どうすれば、そんなニーズを掘り起こし、爆発的なヒットとなる商品を生み出せるのか?
今回は、桶谷 功さんの著書「戦略インサイト」に、消費者の商品を買ってもらう、消費者の心のくすぐり方を学びます。
大企業~中小・ベンチャー企業まで、「マーケター」「商品企画」「経営層」「新製品開発」「事業戦略」「経営企画」「リサーチャー」は必読です。
目次
インサイトとは
インサイトとは、人々の潜在的なニーズのこと。
まだ顕在化していない、人々自身も気づいていないようなニーズのことです。
この消費者が気づいていないニーズを掘り起こし、上手に商品化できれば、爆発的なヒットとなります。
以下では、インサイトやマーケティングの事例を見ていきましょう。
【事例】フレーバーウォーターはなぜ売れたのか?
今では当たり前になった商品で、コンビニでも定番のフレーバーウォーター。
例えば、
・コカコーラのいろはすシリーズ
・サントリーのヨーグリーナ&サントリー天然水
などの透明なウォーターがその代表です。
では、なぜ、コンビニの棚の勢力図を入れ替えるぐらいに売れたのでしょう?どんな新たな需要を開拓したのでしょうか?
一部のコア層のみが買っていた「ミネラルウォーター」
今では、水を買うのも当たり前となりましたが、一昔前のことを思い出してみてください。
ある時から、ペットボトルの「ミネラルウォーター」を買って飲む人を見かけるようになりましたが、一昔前まで、ミネラルウォーターを買っている人は、一部の人だけじゃありませんでしたか?
特に日本の軟水が今のように大手をふるっていなかったころ、ミネラルウォーターといえば、エビアン、ボルビックなど海外輸入品で、「オフィスで飲んでいて様になるカッコいい飲料」でした。
デスクでも会議中でも飲むことに抵抗感がなく、むしろ、飲んでいる人は、できるビジネスパーソンといったイメージもありました。
これは、すなわち、ミネラルウォーターを常時買う人は限られていて、市場が頭打ちしている状態でした。
ミネラルウォーターを買わない人、その理由は?
ミネラルウォーターにはヘビーユーザがいる一方、ユーザは頭打ち。その理由は何でしょうか?
水道水を飲めばタダじゃん
ミネラルウォーターは健康に良くても、味もなくて物足りない
こんな風に考える人は、仕事中にちょっと疲れた時、コーヒーのようにリフレッシュできるとか、ご褒美のおやつのように「自分を甘やかす甘い飲料」が欲しかったのです。
しかし、会議中、オレンジジュースを飲んだりするのって、ちょっと子供っぽくて恥ずかしい。若い人から見ると「いいおやじがオレンジジュース?」って感じです。
オフィスでも様になるフレーバーウォーター
さて、そんなところに登場したのが、フレーバーウォーター。
無色で見た目はミネラルウォーター。オフィスでも甘いものを堂々と口にしてもかっこ悪くない。
これが、フレーバーウォーターが売れた理由です。まさに、オフィスワーカーの潜在的なニーズを掘り起こし商品化した商品だったのです。
グリコのチョコレート「GABA」もインサイトに基づいた商品
さて、オフィスで食べていてかっこ悪いものの一つ「おかし」。
しかし、菓子メーカーとしては、子供人口減少でマーケットは縮小。では、どうやって大人に食べてもらえばいいのか?
そこで考え出されたのが、グリコのチョコレート「GABA」。キャッチフレーズは「ストレス社会で闘うあなたに」。
「ストレスを軽減する機能」を訴求していますが、実は機能以上に、オフィスで大人の男性がチョコレートを食べられる言い訳をうまく与えてくれました。
ストレスに良いと訴えることで、機能性食品として商品単価もUPし、メーカーとしては一石二鳥です。
消費者アンケートの罠に注意
さて、人口減少国日本では、ますますモノを売ることが難しくなります。そんな消費者のニーズを掘り起こそうと行われる「アンケート」。これを読み説くには注意が必要です。
潜在ニーズの掘り起こしでよく行われるアンケートがありますが、日本人にアンケートを取ると「どちらでもない」といった中途半端な意見が多く、潜在ニーズが見えづらい。また、日本人は、「否定が苦手」なので、「よい」と評価する傾向もみられます。
これでは潜在ニーズを見誤ります。この点を注意して、消費者アンケート結果を分析しないと、新商品開発の方向性、既存商品改良の方向性を見誤ることになります。
最後に
今回は、桶谷 功さんの著書「戦略インサイト」に、思わず買ってしまう、消費者の心をくすぐるヒントを学びました。
最近の若者はかつてよりも「所有欲求が小さく、また、高級志向もありません。モノを売るのが益々難しくなる中でも、消費者は何か面白いもの・便利なものを求めています。本書は、潜在ユーザの掘り起こしに役立つヒントを与えてくれると思います。是非、本書を読んで、何かをつかんでみてください。
以下、マーケティング関連本で学びが多かった本を紹介して、書評を終えたいと思います。