RADWIMPS(ラッドウィンプス)が歌う「おしゃかしゃま」という歌の歌詞をご存知でしょうか?
RADWIMPSといえば、映画『君の名は。』の主題歌である『前前前世』、挿入歌『スパークル』でも知られる人気バンドですが、単に楽曲が心地いいだけでなく、それに輪をかけたのが、広い世界観を持つ「歌詞」のすばらしさ。宗教にもつながる深い歌詞がより、映画の世界観を広げてくれました。
さて、そんなRADWIMPSの楽曲の中でも興味深いのが、人間の傲慢さが先行して行き詰まりを見せる現世界、そして、その世界に失望し、愚かな人間社会を批判する見事な歌『<おしゃかしゃま』。
松村嘉浩さんの著書「【増補版】なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?」でも取り上げられている本ですが、歌詞を担当する野田洋次郎さんが、人間が作り出した最も大きな架空・虚構ともいえる宗教を織り込みながら人間の愚かさを強い言葉で批判し訴えかけています。
新型コロナウイルス、株式市場クラッシュで世界がほころびを見せる2020年3月に今一度、振り返ってみたい曲なので、ご紹介したいと思います。
目次
歌われているのは「自分勝手で傲慢な人類に対する批判」
地球上のヒエラルキーのトップに君臨する「人間。
RADWIMPSの「おしゃかしゃま」はその歌詞の中で、人間の都合のいい判断で、動物(生物)の生死をもコントロールしようとしている傲慢さに対し、「まるで神にでもなったつもりなのか?」と問いかけます。
おしゃかしゃま」の歌詞の意味
「おしゃかしゃま」というタイトルの通り、この歌詞には、宗教にまつわる内容で、歌詞が展開されてきます。
では、歌詞を見てみましょう(赤字はコメント)
カラスが増えたから殺します
さらに猿が増えたから減らします
でもパンダは減ったから増やします
けど人類は増えても増やします ←傲慢な人類に対する批判
僕らはいつでも神様に
願って拝んでても いつしか
そうさ僕ら人類が 神様に
気付いたらなってたの 何様なのさ
←「神」をしのぎ、ヒエラルキーのトップに立つ人類への批判
僕は見たことはないんだ
あちらこちらの絵画で見るんだ
さらに話で聞いてる神様
はどれもこれも人の形なんだ
←神様の形も結局は「人間」「偶像崇拝」
偶然の一致か 運命の合致
はたまた 自分勝手スケッチ
あっち こっちそっちってどっち
一体どうなってるんダ・ヴィンチ
←キリスト宗教画を多数描いたレオナルド・ダ・ヴィンチへの問い
来世があったって 仮に無くたって だから何だって言うんだ
生まれ変わったって 変わらなくたって んなこたぁどうだっていいんだ
人はいつだって 全て好き勝手 なんとかって言った連鎖の
上に立ったって なおもてっぺんが あるんだって言い張んだよ
←「来世・輪廻」は仏教思想
もしもこの僕が神様ならば 全てを決めてもいいなら
7日間で世界を作るような 真似はきっと僕はしないだろう
←キリスト旧約聖書の「天地創造」
きっともっとちゃんと時間をかけて また きちっとした計画を立てて
だって焦って急いで 作ったせいで 切って張って 作って壊して
←地上に増えた堕落した人間を滅ぼした「ノアの箱舟&大洪水」by 旧約聖書『創世記』
増やして減らして 減らしたら増やして
なして どうして ってなんでかって?
「?」出したフリして 分かってるくせして
「話して 聞かせて なんでなんで」
だって馬鹿なんだって人類なんて
そりゃそうなんだって分かってるって
だから1、2、3で減んじゃえばいいんだって
だって なんてったって
馬鹿は死なないと治らない なら考えたって仕方がない
さぁ来世のおいらに期待大 でも待って じゃあ現世はどうすんだい
さぁ無茶しよう そんで苦茶しよう 二つ合わさって無茶苦茶にしよう
さぁ有耶しよう そんで無耶しよう 二つ合わさって有耶無耶にしよう
だからなんだって ダメになったって 先があんだって言うんだ
なぜになんだって ポイしちゃっといて 次はなんだって言うんだ
だがしかしbut けどけれどyet 何をどうやっていいんだ
何を言ったって 何をやったって ダメだダメだって言うんだ
ならば どうすればいい? どこに向かえばいい
いてもいなくなっても いけないならば どこに
来世があったって 仮に無くたって だから何だって言うんだ
生まれ変わったって 変わらなくたって んなこたあぁどうだっていいんだ
天国行ったって 地獄だったって だからなんだって言うんだ
上じゃなくたって 下じゃなくたって 横にだって道はあんだ
←「輪廻転生」「天国・地獄」は仏教思想
「おしゃかしゃま」と「いえすしゃま」
タイトル「おしゃかしゃま」の歌詞には、実は、「キリスト教」と「仏教」の二つの登場しています。「おきゃかしゃま」だけでなく「いえすしゃま」も登場しているのです。
キリスト教:天地創造・ノアの箱舟
キリスト教(ユダヤ教)が関わっているのがわかるのが、以下の歌詞のくだり。
7日間で世界を作るような 真似はきっと僕はしないだろう」
「7日間で世界を作るような~」から推測すると、本宗教はキリスト教かユダヤ教であり、「この僕が神様ならば」の「神」は「イエス・キリスト」です。
だって焦って急いで 作ったせいで 切って張って 作って壊して」
その後に続く歌詞も、旧約聖書『創世記』に描かれる「ノアの箱舟&大洪水」を表してると思える歌詞があります。ノアの箱舟と大洪水は、地上に増えた堕落した出来損ないの人間を一掃するために神が仕掛けた一掃作戦です。
本歌詞で謳われるのは、「ユダヤ教」でなく「キリスト教」と思われる理由
宗教がでは、人の姿をした「神」がよく表現されます。これは「偶像崇拝」と呼ばれ、神を形にしてわかりやすく表して崇拝することです。
以下の絵画は、レオナルド・ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』という作品ですが、ここでも、聖母マリアと幼児キリスト、そして幼い洗礼者ヨハネと天使が「人間」の形で表現されいます。
しかし、もともとは、ユダヤ教、さらにそこから発展したキリスト教も、もともとは、「偶像崇拝」は禁止です。偶像は人間が作ったものにすぎず、神そのものではないから、それを崇拝することは間違えている、として厳しく禁止されてきました。
しかし、キリスト教は、ある時から、他民族の異教徒に布教し、勢力を拡大するに当たり、教育を受けていない下層民衆もわかりやすいように、「人の姿をした神」を偶像支配し、利用するようになります。教育のない下等なモノにもわかるように、人っぽいものを神として形作り、拝ませる。まさに、キリスト教勢力を伸ばすための人間の勝手な行いであり、偶像崇拝については、上記歌詞内のの部分で、野田さんがおかしくない?と否定をしています。
こう考えると、ここで表現されている宗教は、やっぱり「キリスト教」ということになります。
仏教思想は歌詞のどこに表現されているのか?
さて、今回の歌詞のタイトルは「おしゃかしゃま」でしたよね。お釈迦様といえば本名を「ゴータマ・シッダッタ」、「仏教」の開祖ですです。「神」ではなく「仏」です。
この仏教思想が表れていると思われるのが、歌詞のところどころに出てくる、来世・現世という言葉。
生まれ変わったって 変わらなくたって んなこたあぁどうだっていいんだ
天国行ったって 地獄だったって だからなんだって言うんだ
上じゃなくたって 下じゃなくたって 横にだって道はあんだ
輪廻転生という言葉を聞いたことがあると思いますが、仏教において、死んであの世に還った霊魂(魂)が、この世に何度も生まれ変わってくることです。現世での生き方によって、天界、人間界、修羅界、畜生界、餓鬼界、地獄界の6つの世界(六道)をぐるぐると回りながら生まれ変わります。
そして、「おしゃかしゃま」の歌詞では、傲慢な人間が死んで天国に行こうが、地獄に行こうが何だっていうんだと、現在の人間社会を批判しているように見えます。
なぜ、「いえすしゃま」でなく「おしゃかしゃま」?
では、イエスもお釈迦様も批判しているように読める歌詞ですが、なぜ、「いえすしゃま」でなく「おしゃかしゃま」なんでしょうか?
以下は私の全くの独自解釈ですが、以下の言葉で「おしゃかしゃま」に救いを求めているようにも思えるのです。
いてもいなくなっても いけないならば どこに
万物を創造した「神」と、悟りを開いた「仏」。宗教的には「神がすべてを創造した」とする「キリスト教」の方が、傲慢であるように思います。
それ故、仏であるお釈迦様の方が、まだ救いがあるのではないか?
そんな風に、勝手に解釈してみました。
いや~、実にRADWIMPSの「おしゃかしゃま」の歌詞は意味深いですね。
野田洋次郎さんは神様・仏教観がお好き!?
作詞作曲、ボーカル、ギターを担当する野田洋次郎さんですが、「おしゃかしゃま」以外にも、神様や仏教の思想を組んだ曲を複数発表してます。
これ以外にも「救世主」「最後の晩餐」といったタイトルの歌もあります。
野田洋次郎さんは、宗教的な思想がお好きなんでしょうね。
こんな、他のアーティストにはない野田さん独特の思想がRADWIMPSの人気だったりするのかな、と思ったりします。
ある意味、ファンはRADWINPS宗教の信者!?(笑)
ちなみに、野田洋次郎さん自身は無宗教のようです。
最後に
今回は、傲慢な人間を批判するRADWIMPSの「おしゃかしゃま」の歌詞の意味が超深いという件に関して、自分の考えをまとめてみました。
人間は非常に身勝手で傲慢な生き物です。傲慢は争いの種になりますから、傲慢が行き過ぎると幸せには生きられないだろうことは容易に想像がつきます。
若いうちは、宗教なんて関係ないと思ってきました。しかし、宗教、哲学は歳を重ねるごとに、大事なものであると感じるようになりました。幸せに生きるためにも、宗教・哲学についてもっと学んできたいと考えています。
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