「車いすの天才物理学者」として知られ、2018年に亡くなったスティーヴン・ホーキング博士。彼が死の直前まで書き続けた遺作が今回紹介する「ビッグ・クエスチョン」。累計100万部突破、世界40か国で刊行された本です。
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技術科学的な本は数年経過すると古くなってしまうことが多いのですが、本書で取り上げる10個の「ビッグ・クエスチョン」は、「神は存在するのか?」「タイムトラベルは可能なのか?」など極めて壮大なテーマです(後述)。
本書を読みこなすには、多少、科学に対する理解が必要になりますが、それ以上に、科学・科学者の役割など、非常に興味深いことも教えてくれます。
今回は、「ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えよう」から、私が興味深いと思ったテーマを3つ取り上げて紹介します。
10のビッグ・クエスチョン
ホーキング博士が追い求めた10のビッグ・クエスチョンは以下の通り。極めて壮大なテーマで、今すぐ解決できるような内容でないところが特徴。
身体の自由が利かない病気に侵されていたホーキング博士ですが、体の不自由に反し、以下に、発想が自由であったか、また、科学者として挑むべき「問題」がいかに、壮大だったかには驚かされます。
物議を醸すような内容もあり、あえて彼が挑戦を挑んでいるように思えるところもあります。また、断定的に彼の考えを言い切る姿勢などには、ホーキング博士の「科学者としての強さ」も垣間見えます。
興味があるテーマだけでも、読んでみると面白いです。
1 神は存在するのか?
2 宇宙はどのように始まったのか?
3 宇宙には人間のほかにも知的生命が存在するのか?
4 未来を予言することはできるのか?
5 ブラックホールの内部には何があるのか?
6 タイムトラベルは可能なのか?
7 人間は地球で生きていくべきなのか?
8 宇宙に植民地を建設するべきなのか?
9 人工知能は人間より賢くなるのか?
10 より良い未来のために何ができるのか?
以下では、私が興味を持った3つのテーマを取り上げます。
神は存在するのか?
まず最初に、強く、興味を持ったのが「神は存在するのか?」というテーマです。
キリスト教の社会においては、神が万物を創造したとする「天地創造説」する人が未だに多い。キリスト教徒が少ない日本にいると、何を馬鹿げた..と一笑してしまうような考えですが、世論調査会社ギャラップ(Gallup)の2014年の調査では、「約1万年前に神が人類を今と同じ姿で創造した」と信じる米国人は42%に上っており、この割合は30年前に調査が開始されて以来ほとんど変動していないそうです(記事 )。
これほど強くキリスト教を信奉する人たちがいる中で、『宇宙ができる時に神の存在は必要ない』と言い切るのは、大変勇気のいることです。
科学者は「賢威」を前に、或いは、社会の混乱を恐れて、真の事実を語らなかったり、言葉を選んだりすることがあります。例えば、広島・長崎に落ちが原爆やその後に米ソで行われた原爆実験に関して、真実が語られてこなかったことなどはよく知られることです。
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先日、まんがで読破シリーズのダーウィンの「種の起源」を読みましたが、この中でも、神様を否定するような発言することがいかに危険だったかがよくわかります。ガリレオが地動説を発表(1543年)し、ローマ教皇庁の強権的圧迫を受け、不遇な人生を送ったことで知られていますが、ダーウィンの生きた時代も同様、神への冒涜と受け止められ、酷い目にあってもおかしくない時代で、多くの困難に遭遇しました。
しかし、ダーウィンは「真実が知りたい」「事実と向き合って生命の真実の姿を知りたい」と研究に人生を捧げます。神への冒涜への対策を含め、どんな質問にも回答できるよう病気の体を妻に心配されながらも研究を続けます。そして、1859年にダーウィンの進化論を発表しました。
ダーウィンの時代から160年以上経過していますが、ホーキング博士も同じく、「真実が知りたい」と、独特の知的洞察で向き合う。時には人を煽るような意見をすることで、人々に科学への興味・関心を向けさせるなど、凄い科学者だと改めて思わされます。
タイムトラベルは可能なのか?
ドラえもんの道具の中には、今の時代に実現してしまっているものもありますが、いまだ、全く実現に及ばないのが「タイムマシン」。
ホーキング氏いわく、スタートレックのようなタイムトラベルを実現させるには、「膨大(無限)なエネルギーが必要」としたうえで、不可能と述べています。うーん。残念。
ちなみに、SF小説の名著「宇宙戦争」で知られるH・G・ウェルズの「タイムマシン」を読みました。人類の進化した世界(成れの果て)にタイムトラベルするのですが、そこで描かれる人間の進化がなるほど…とジョージ・オーウェルの創造力の凄さ、人間を見る目に簡単させられます。現世でも既にその進化への予兆はあります。面白いので是非。
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より良い未来のために何ができるのか?
最終章の「より良い未来のために何ができるのか?」は、それまでの章を総括するような内容で、これからの時代を生きる私たちに科学技術の必要性を説いています。
人類はこの「地球」という惑星に、気候変動、汚染、気温上昇、極地の氷冠の減少、森林破壊、動物種の大量絶滅、核戦争の危機、恐ろしいペースで増える人口増、そして、物質資源は空恐ろしいほどの速さで枯渇を引き起こし、今なおそれは進行中です。
これらを直視するなら、指数関数的と言えるほどの人口増加や科学の真価が、がこれから千年も続くはずがないのは明らか。だからこそ、博士は以下のよう考えるのです。
目指すところが非常に壮大です。
現在、「宇宙旅行」がニュースをにぎわす機会が増えましたが、それはビジネス的な側面が大きい。
しかし、博士の目指すところは、隕石、核兵器、人口増などで住めなく/住みにくくなる地球から、ノアの箱舟に乗って繰り出す宇宙のどこかにあるかもしれない新天地です。
また、若い人たちに以下のようにも語ります。
(略)
最先端の科学技術とその応用を理解できるのは一握りのスーパーエリートだけだという世界は危険だし、貧しいのではないだろうか。
科学技術に関心を払うことがいかに大事か、改めて教えられました。
最後に
今回は、スティーヴン・ホーキング博士の「ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えよう」を紹介しました。
天才が考えることは凄い!体の不自由が効かなかった博士ですが、博士の頭の中の発想はどこまでも自由で挑戦的でした。
多くのことを考えさせられる1冊となりました。私はあまり、科学技術系の本を読んでこなかったのですが、これを機会に分野を広めたいと思います。
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