政治記者とは、ここまで政権に肉薄し、日本の行く末を決める大事な局面(駆け引き)で繰り広げられる人間ドラマに立ち会えるものだろうか・・・と驚く衝撃の一冊。
至近距離から重要局面を目撃した著者が、安倍晋三 元内閣総理大臣、および、安倍政権のキーマンたちの発言と行動をつまびらかにしています。
通常知ることのできない要人たちの、重要局面における息遣いまで聞こえてくるような内容は、ビジネス小説よりもドラマティックです。
安倍政権の舞台裏
本書で紹介される安倍政権の舞台裏は、以下の通り。
・第一次安倍政権、首相辞任の舞台裏
・盟友 中川昭一氏の死
・東北大震災発生時
・再出馬の決意
・麻生太郎氏との消費税をめぐる攻防
・日銀、財務省の駆け引き
・オバマとの駆け引き 安倍外交 等
政治の駆け引きとはこういうことか!と思わされる。ビジネス小説より面白い。
あの報道の裏で、こんな駆け引き・葛藤があったのか、と、阿部元首相、および、その側近たちの駆け引きがあったのかと、面白く読めます。
安倍晋三という人物
本書の最終章では、前章まででつまびらかにされた「安倍晋三という人物」、「安倍政権の運営」を元に、以下の2つの点について、著者の考えがまとめらえています。
「宰相にはどのような人物がふさわしいか」
「ポスト安倍には誰を選ぶべきか」
著者は、「世界観を固持している者でないと、この先、日本を背負う総理にはなれない」と言います。
日本の総理は、国会議員としてのキャリアハイのようなところがありました。しかし、「安倍晋三には、一定の世界観があり、世界観を達成するために、やりたいことがある。だから、不人気な案件にも決然と挑戦できる。」と分析しています。
あれこれ言われながらも、安倍首相がこれまで一定の支持を得て、比較的安定して続いたのも、この辺に理由があるのかもしれません。
もちろん、第二次安倍政権は、グローバル経済環境下で、経済が上向き時期に合致していたのは確かです。しかし、それを含めて、「運をつかむ力」があったともいえるのではないでしょうか。運は待っていてもやってきません。運をつかむ準備をしていてこそ、はじめて運はつかめます。
政治舞台に深く入り込む政治記者への驚き
冒頭でも記載しましたが、政治記者がこれほどまで、時の政権に至近距離に近づき、政治の舞台に出てこない要人らの駆け引きを目撃ということに、とにかく驚かされます。
もちろん、それは、政治記者の力量もあるでしょう。私は政治記者がどういう仕事なのかまるで知りませんが、普通の人がそこまで深く入っていける場所だとは思えません。
政治記者の記者魂
本書の著者は、元TBSの政治記者の山口敬之氏。
戦場記者などを経て、2000年に政治記者となった直後から見てきた安倍元総理と彼を取り巻く人間模様、日本政治の中枢にいる人物の人を見てこられたのだとか。
他の記者ではレポートできないスクープを誰よりも早く報じ、社内などで表彰される一方、社内では「政治家との距離が近すぎる」と陰で批判し続けられたと言います。
「取材対象に食い込め!」といわれるのに、いざ食い込んでみると「近すぎる」と批判されるとは納得いかない。
そんなジャーナリストとしての思いを、以下のように記しています。
これは政治取材も変わらない。
政治はその最も重要な局面において、主役である政治家の個性や信念が事態の展開を左右し、それが国民生活および社会の成り立ちに影響を与える。であるなら、その究極の人間ドラマに登場する人物に迫ることこそが、政治の実相を知るために必要欠くべからざる作業となる。政治家に肉薄した記者が、政権中枢における目撃と体験を公開することで、初めて政治のリアリティが国民に伝わる。
確かに、本書からは「政治のリアリティ」が伝わります。
執筆後の人生は波瀾万丈
厳しい政治の舞台に入りこむべく、多くの駆け引きをしただろう山口氏。
ただ、政治記者を辞めた後の話ですが、損賠償請訴訟で、世間を騒がせています。同じくジャーナリストの伊藤詩織さんから訴訟を起こされた、あの事件です…
最後に
今回は、山口敬之著の「総理」を紹介しました。
2022年7月8日、安倍元首相が演説中に銃撃されるという事件が起こっています。2発目が安倍元総理の左胸に命中し、心肺停止の状態だということ。
まさか、日本で銃で狙撃…
まずは、一命をとりとめていただくよう祈りたいです。