じいさんとまご ふたりが、巨悪を切る!
痛快な娯楽ストーリーを読みたい方におすすめな本のご紹介です。
本作は、本のサナギ賞受受賞作。この賞は、「本の虫」である書店員が「世に出したい」小説=「本のサナギ」を見つけ、ベストセラーという「蝶」に育て羽ばたかせたい、という思いから生まれた文学賞です。
テレビドラマになった「3匹のおっさん」のような痛快さがあるストーリー。ストーリーがリズミカルなので、最後まで一気読みしました。
今回は香住泰さんの小説「稲荷山誠造 明日は晴れか」の感想です。
稲荷山誠造 明日は晴れか:あらすじ
かみ合わない爺孫(じじまご)コンビは、桃代を見つけ出すことができるのか!?
翔の母の失踪をきっかけに、次々と事件が発生。
税務調査、殺人事件、ヤクザ、拉致、そして官僚・政治家の不正へと話が展開していきます。
稲荷山誠造 明日は晴れか:感想
久しぶりに、この手の小説を読みました。ただただ、痛快です。
じじいパワーに圧巻
本書に溢れるのは、誠造の「老人パワー」です。
関西の金融会社会長で、切った張ったの世界で生きてきた人物だけあって、たとえ、体力・頭の衰えを日々感じていたとしても、やっぱり、頭が回る。特に、巻き込まれた事件・危機の土壇場で、素晴らしい頭の回転を見せます。歳をとっても、頭の回る老人って、いいなぁ。自分もそうありたいなぁと思った次第です。
いやいや、そんなうまくはいかんだろう、というストーリーもありますが、そこがこの小説の良さとなっています。
また、ストーリーのところどころに、ケチケチ思考がでてくるのですが、それが、またいいです。
まごの成長
あすじの中にもあるように、とつぜん現れた孫の翔は、最初はとても頼りない青年。しかし、爺さんパワーに接しているうちに、たった数日の間の出来事ですが、翔を強くしていきます。
人生には「自分を飛躍させる出来事」があるものですが、翔が変容していく姿が描かれています。
また、最初は、互いの人生が全く理解できない、愛情を感じない爺さんと孫息子の間に、生まれてくる愛情も見どころです。
著者の香住さんの狙い通り、「人は何歳になっても変われる」というメッセージが伝わってきました。
最後に
今回は、香住泰さんの「稲荷山誠造 明日は晴れか」を紹介しました。
このストーリー、テレビドラマにすると、どの俳優さんが適任か、などと考えて読むと、さらに面白いかもしれません。
過去、文学賞「本のサナギ賞」を受けた作品では、清水カルマ著「禁じられた遊び」を読みましたが、こちらは、2023年に映画化予定。こちらはぞっとするホラーですが、引き込まれました。