堀江貴文さんと言えば、IT、ロケットなどITの最先端を行く先導者のイメージがあります。
しかし、その一方で、
焼肉「WAGYUMAFIA」:世界に進出
ベーカリー「小麦の奴隷」:パン職人にならずともパン屋が開業できるFCチェーン
を展開するなど、飲食店経営者しても成功を納めていらっしゃいます。
さて、本書のタイトルは『キャリア不要の時代~僕が飲食店で成功を続ける理由』。タイトル通り、キャリア、修行なんて不要と唱える一冊です。
一方で、昨日、紹介した著書『2040年「仕事とキャリア」年表』(書評)は、20年後には、日本から「サラリーマン」が消滅するとしたうえで、それまでに想定される雇用の変化とそれへの対処法をアドバイスするしています。
タイトル、および、メインテーマだけを見ると全く真逆のことを主張しているように見える2冊ですが、私は、これら2冊の根底にある「キャリア形成の考えは共通」していると感じました。
今回は堀江貴文さんの著書「キャリア不要の時代」のポイントとキャリア形成についてまとめてみたいと思います。
目次
2冊の著書に見る「キャリア形成」の違い
冒頭で取り上げた2冊にの「キャリア形成の考え方」。すこし乱暴ですが、誤解を恐れずまとめると次のようになります。
著書「キャリア不要の時代」の取扱うキャリア
・自分の頭で考えるのが楽しいと思っている、行動力のある人へのメッセージ色が強い
・飲食業界はビジネスのやり方が、他業種より立ち遅れている
・ビジネス感覚を持って古い業態・慣習に変化をもたらせる人ならキャリアなんて不要
著書「2040年「仕事とキャリア」年表」が取扱うキャリア
・自分の頭で考えない人・行動しない人向けのメッセージ色が強い
・働き方の主流は、サラリーマン※
・サラリーマンは今後消滅傾の流れにあるので、これから先20年に起こることを理解せよ
・一度決めた仕事も一生ものではない。自分のやりたいことをもとに、軌道修正せよ
※決して、サラリーマン全員が考えない人だと言っているわけではありません。「現在の会社勤めにしがみついて、安定した暮らしのまま、逃げ切りたい」と思っているサラリーマンに、強い警鐘を鳴らしています。
2冊が暗に示すこと
2冊とも、暗に「自分が面白いと思える(頑張れる)仕事ができるように、考え、軌道修正して進め!」とアドバイスしていると思います。
なぜ、キャリアは不要なのか
さて、ここからは、今回紹介の著書「キャリア不要の時代」にフォーカスします。なぜ、堀江さんはキャリア不要論を唱えるのでしょうか。
おいしさを追求すれば飲食ビジネスは成功するか
開業の人気「パン屋」。パン屋になるような人は、もともとこだわりが強い。「パン愛」が半端ありません。しかし、パン愛を追求して「おいしさを求めること」と「ビジネスの成功」は別の話です。
例えば、パンが好きなパン職人が作った店は、開店に当たって電気代等光熱費も考えずに、すっごくいいオーブンを導入したりする。そして、いいパンを作るためにはコストは「仕方がない」と考える。
しかし、異業種で、コスト経営バリバリでビジネスをしてきた人から見ると、このような状況はどう目に映るのか?
改善点が山ほどある!ビジネスチャンスありまくり!ブルーオーシャンがあっちにもこっちにも広がっている!と見えたりするわけです。
食への強すぎる愛は×
例えば、カレーでビジネスとして成功している「CoCo壱番屋」。「ココイチカレー」には、見事に個性がありません。誰が食べても〝まあまあうまい〟しかし、「カレー職人」であの味を目指したいという人はいないでしょう。
つまり、こだわりがない。自分の世界に入っておいしさを追求しすぎては、ビジネスでは成功できない。あまりに「愛」が強すぎると成功できないのです。
では、どこを目指すのか。
ココイチの場合、狙っているのは「味の最大公約数」。だれが食べてもそこそこうまい味。もちろん、コスト感覚も大事です。
本気でビジネスのストライクゾーンを目指さない限り、「最大公約数」はつかめません。単なる「おいしい」ではダメなのです。
飲食ビジネスに修行は必要か
同じ職人でも、寿司・蕎麦の場合は、一人前になるには長い修行が必要と言われます。例えば、焼き鳥のように「焼き方」が問われるグルメも修行が必要だと言われます。
堀江さんは、従来より「修行」という考え方には否定的です。とにかく「修業しないとダメ」と思っていたら進めない。「バイトでもうまくできるような仕組み」と考えます。
例えば、ベーカリー「小麦の奴隷」のフランチャイズにしても、職人の技術が必要な一次発酵までの行程、および、原価圧縮のための原材料の大量仕入れなどは本部が実行。そのうえで、フランチャイズ店には冷凍生地を各店舗に出荷。各店舗ではその後の行程のみ対応するなどの方法で、何年も修行をせずとも、ベーカリーが開業できるような仕組みを作っています。
・いかに(修行も含めて)人件費を抑えるか
・誰でもオペレーションを回せるか
(個人の力量ではなく、いかにいい仕組み・システム・技術で解決する)
を、軸に、ビジネスを組み立てるのです。おいしさを損なわず、誰でもできる工程を残すギリギリをシステム化することが大事です。
大事なのは、食ビジネスの見直し
大事なのは、常に「こう考えたらもっと楽しくなる」、「こうすればもっとうまくいく」という視点を持って、ビジネスそのものを見直すことです。
職人をはじめ、下手に業界キャリアがあると、業界常識が足枷となって、発想の転換ができません。つまり、このような盲点をついてビジネスを仕掛けられる人にはその業界のキャリアは不要。異業種から参入し、業界にイノベーションを起こせばいいのです。
最後に
今回は、堀江貴文さんの著書「キャリア不要の時代」のポイントをキャリア形成やビジネス展開の観点からまとめました。
本書には、飲食ビジネスに携わる面白いトピックもいろいろ記載されています。以下について、なるほど、と思いながら読みました。
・今後、肉の生産量が環境問題・SDGs的な観点から増やせなくなる中で、
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