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海外で成功するために必要な「壁」とその乗り越え方とは?
ハリウッドセレブなどにも人気になったハローキティ。
ハローキティをグローバルブランドにまで成長させた立役者が本書の著者の鳩山氏。サンリオで海外戦略を担当し、2015年8月米国経済誌により、「今までもっとも成功したハーバード出身者31人」のひとりに選ばれた方です。
海外進出には多くの壁が行く手を立ち塞ぎます。しかし、鳩山氏は「世界の壁は思っているほど高くない」と述べます。
では、どんな壁があり、それをどのように克服したらいいのでしょうか?
本書では、以下の3つを軸に、世界で戦うハウツーを教えてくれます。
・働き方や価値観、コミュニケーションの壁
・現地化する際の壁
・自分自身の壁
まずは彼らのコンテクスト(背景)を理解せよ
そもそも、なぜ、世界展開は難しいのでしょうか?
それは、そもそも論として、進出先の背景が理解できないからです。
例えば、米国のコメディ映画を見ている米国人がゲラゲラ笑っているのに、自分は全く笑えないというようなこと、ありませんか?英語の意味は理解でも、おかしさがわからない。
これは、正に、コンテクスト(背景)の壁です。
英語だけでなく、お互いのコンテクストが理解できていないと、とんでもないミスコミュニケーションが生まれてしまうのです。
コミュニケーションの壁
厄介なのは、ビジネスにおける日本語の曖昧な「イエス」「ノー」の存在です。
例えば、以下のような表現は、外国人とコミュニケーションでトラブルを巻き起こすことがよくあります。日本人は断ったつもりでも、先方はそう思っていないからです。
- イエスとノーの中間にある「持ち帰って検討します」
- 実質的にノーな「考えます」「考えておきます」「検討します」
この辺の感覚は国によって異なります。
欧米人は比較的、イエス、ノーをはっきりいうことを好みますが、欧州に行くと必ずしもそうとも言えず、日本的なグレーな表現でノーを伝えることがあります。
また、イギリス、米国は感情が入ってくる度合いが低い一方、イタリア、フランスは感情が入りやすい特徴があります。また、中東やアジアも感情が入りやすい特徴があります。
このようなことを、前提となるコンテクストとして理解しておかないと、うまくいくものもいかなくなります。
まだまだある、コンテクストの壁
コンテクストの壁はまだまだあります。
例えば、意思決定。日本人は意思決定ルートの階層が厚く、その場で決定がされません。
また、働き方においては、米国では夕方5時半に変えるのが当たり前でも、日本の場合、「なんで、仕事があるのに帰るんだ!」となります。
このような価値観の違いは、「あなたの生き方や考えはリスペクトする。でも私はこう考える」と、受け入れてあきらめることが大切です。
グローバル感覚の壁
グローバルで成功するには現地の感覚をしっかり理解しなければいけません。たとえば、日本人は、イギリスは欧州の一部という感覚が強いですよね。しかし、世界では「欧州は~」というとき、イギリスは含まれていないことが多いのです。
このような感覚は自分たちに当てはめてみるとよくわかります。韓国も中国も日本もアジアで同じ欧米人が思っているとしたら、我々は抵抗を感じますよね。エリアのみで十把一絡げにしてはいけないのです。
このようなグローバル感覚の違いは、ヒーロー映画にも端的に表れています。
ハリウッド映画の場合、ヒーローは何を守りますか?
一方、日本映画の場合、ヒーローは何を守りますか?
前者が守るものは「世界」「地球」であるのに対し、後者が守るのは「日本」。気付いていましたか?
変革の壁
様々な国を渡り歩く著者は、日本に比べて海外では企業の変革も速く、大胆に変わっていると感じると言います。
例えばアメリカ。
ビデオレンタルのBlockbusterが破綻し、Netflixが台頭、BordersやBarnes&Nobleがなくなり、Amazonで本を買うようになる。従来のタクシーはあまり使わなくなり、配車サービスのUberを使い、ホテルに泊まらずにAirbnbを利用する。高級自動車の人気車種ランキングもフェラーリからテスラへと、目に見えるような変化が生活の実感としてあります。
明らかに目に見える変化の大きい国では変革をより鮮明に感じます。それを変革の速さを実感しているかの差は、ビジネススピードの差にも直結しますね。
交渉の壁
日本人と米国人の交渉には明らかなる差があります。
米国人との交渉の違いは、米国人は交渉のテーブルに着く前に、交渉のポイントをしっかりまとめていることです。妥協点を事前に決めていて、交渉の際にはその妥協点を崩しません。実際に妥協できる条件はもっと低くても、あえて高く設定した妥協点を交渉中ではなるべく崩しません。故、結果的にその高い妥協点で着地することが多いのです。
一方、日本人は多くの場合、相手の妥協点を知りたがります。自分たちの交渉ポイント、妥協点をまとめておくというよりは、相手の出方を待ってしまいがちです。そして、そのちょっと下ぐらいで着地しようとしてしまいます。
平素な言葉でまとめられており、サクサク読めますが、広い気付きを与えてくれます。オススメです。