【書評/要約】天才を殺す凡人(北野唯我 著)(★5) なぜ組織は腐り、衰退するのか。凡人・秀才が天才を殺すメカニズムを教えてくれるビジネス小説

北野唯我さんの本『天才を殺す凡人』は、なぜ、組織・企業は時間の経過とともに腐り、衰退してしまうのか、凡人や秀才が天才を殺してしまうメカニズムを、ストーリーでわかりやすく教えてくれるビジネス小説です。

本書がビジネス書ではなく、あえてビジネス小説として描かれているのは、「ノウハウ」や「結論」を述べただけでは、その問題が自分事として感じられずに終わってしまうから。本書は、苦悩する主人公に寄り添いながら読み進めることで、読者が組織が持つ問題の本質を深く理解し、また、その気づきを自己改革・組織改革につなげられるように設計されています。

非常に学びの多い小説です。

今回は、北野唯我さんの小説天才を殺す凡人』からの学びを紹介します。

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天才を殺す凡人:ストーリー

天才を殺す凡人:ストーリー

主人公の凡人 横田は、創業時から 天才女社長を尊敬してきた広報担当。会社規模も大きくなる中、「社長の時代は終わった」と尊敬する社長が殺されかけていることに苦しさを感じている。

そんな彼のもとに突然、関西弁で微妙に東北弁をしゃべる大阪育ちの秋田犬 ケンが現れる。そして、自称「全生物の頂点に立つ男(犬)だ」と自らを称するケンが、横田に様々な教えを諭していく…

といったストーリー。ストーリーはくだけた話し言葉でサラサラ読み進められますが、なるほど納得な、犬・ケンの教えが続々登場します。

以下では、ストーリーには触れず、「凡人・秀才ががどのように天才を殺してしまうのか」、そのメカニズムについての学びを私なりにまとめます。

なぜ天才は殺されるのか

【書評/要約】天才を殺す凡人(北野唯我 著)

組織を大胆に3つのタイプに分類

組織はいろんな人がいて成り立つものですが、本書では組織に所属する人を、その特徴・性質(才能)から、「大胆」に天才・秀才・凡人の3つに分類します。

タイプ特徴性質
評価軸
天才独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人創造性
秀才論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人再現性
≒論理性
凡人感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人共感性

本来、創造性、再現性、共感性という能力に優劣はありません。

しかし、該当者数は、共感性>>>>>>創造性です。また、創造性はそして、世界/時代を変える力を持っています。だから、「天才」の希少性は高くなります。

経営には、アート・サイエンス・クラフトの3つが必要

経営には、アート・サイエンス・クラフトの3つが必要です。3つがあって、はじめて事業が成り立ちます。

項目内容メイン
プレーヤー
ビジネスの
バリューチェーン
アート事業を生み出すクリエイティブ天才創造し
サイエンス経営を科学し、改善する秀才拡大させ
クラフト物を作る(+作ったモノを世に広める)凡人金をつくる

天才の革新的なアートをビジネス化するには、サイエンスとクラフトが必須です。ただし、これだけでは、ビジネスは世に受け入れられません。なぜなら、革新的なアートは、最初は世の中に受け入れられないからです(人は変化を拒み、避ける)。ここを突破するために必要なのが「理屈」と「共感」です。

つまり、「アート思考を持つ天才から生み出されたアイデア」は、「サイエンスを正しい方向で扱える高い教養を持った秀才」と「共感性を持った凡人」が揃ってはじめて、『創造して→拡大させ→金にする』ことができます。これが、「一つの創造が、世界が進化するメカニズム」です。

天才・秀才・凡人の関係

天才・秀才・凡人の関係:【書評/要約】天才を殺す凡人(北野唯我 著)

天才・秀才・凡人は、それぞれ、他者に対して上図のような「プラスの感情」「マイナスの感情」を持っています。

事業が伸び悩んだり、組織に問題が起こり始めると「マイナスの感情」が強くなり、コミュニケーションの断絶、他者排斥が起こり、あっという間に3者が殺し合う関係へと変化します。

会社のフェーズと共に変わるメインプレーヤー

時代は天才→秀才へ:【書評/要約】天才を殺す凡人(北野唯我 著)

さて、ここで、天才のアートから生まれた事業がうまく回りはじめ、会社が創業期から成長期に移り変わったとしましょう。この時、力を持ってくるプレーヤーが「秀才」です。上図のように、組織を天才が率いる時代から、秀才が率いる時代に移行します。

組織の行方を握る秀才

凡人が天才に対して抱くのは『好きか、嫌いか』というシンプルな感情です。対して、秀才は天才に対して『憧れと嫉妬』の両方を持っています。秀才は天才の強力な「右腕」にもなれば、天才を葬り去る「サイレントキラー」にもなります。

ここで、天才が秀才に引きずり降ろされてしまうと、企業はどうなるか。秀才には創造性に欠けるため、組織はノベーションを起こせなくなり、衰退していきます。

例として極めて分かりやすいのが、故スティーブ・ジョブズのアップル退任・復活で評価が大変化したアップルです。このようなことは、様々な企業で起こっています。

おすすめ参考図書

ビジネスにおけるアートとサイエンス、そして、なぜ、天才が秀才(もしくはそれ以下)に牛耳られてしまうのかは、以下の山口周さんの2冊の本を読むと、より理解が深まります。

凡人も天才を殺す

天才を殺すのは秀才だけではありません。凡人も天才を殺します。凡人の持つ「共感性」は、圧倒的に強いパワーを持ちます。

なぜ流行るか分からない(理屈が成り立たない)ないものがいきなりブレークすることがありますが、これは何かをきっかけに、「共感」が破壊的なパワーで「世の空気」を一変させるからです。逆に、飽きれば手のひら返しでそっぽを向き、人気はあっという間になくなります。

さらに、共感の影響がマイナスに働いた時、この力は、国すら殺す力となります。共感を軸にした判断は、ある意味気分なので、「愚民政治」を招きやすくなります。だから、経営の意思決定に共感性を軸にしてはいけないのです。

イノベーションを生み出せないとどうなるか

人間は、変化が嫌いなのに、一方で、とても飽きっぽい生き物です。イノベーションを生み出せなくなれば、その先に待っているのは、消滅か、コモディティ化です。真新しさだけで勝負していたものは、完全に飽きられ、消えていく。一方で、実用性もあるものは、必需品、コモディティとして薄利な商品となる。どちらも企業にとって望ましい状況ではありません。

企業を存続させるにはどうしたらいいのか

【書評/要約】天才を殺す凡人(北野唯我 著)

ここまで、コミュニケーション不和が原因で衰退する企業のメカニズムを解説してきましたが、では、どうしたら企業を存続できるのでしょうか。

組織の崩壊を防ぐ人たち

良い企業では、お互いの才能を殺し合うことなく支え合いながら進化します。ここでキーとなるのが「3人のアンバサダー」の存在です。

エリートスーパーマン天才と秀才の橋渡し『高い創造性と論理性』を兼ね備える。常に研究者であり、挑戦者でもある。ビジネスが大好き
最強の実行者秀才と凡人の橋渡しロジックをただ押し付けることなく、人の気持ちも理解。要領もいい。会社ではエース。モテる
悩める天才天才と凡人の橋渡し創造性と、共感性を武器に持つ。クリエイティブなだけではなく、マーケットインの考えもできる

天才・秀才・凡人の関係:【書評/要約】天才を殺す凡人(北野唯我 著):3人のアンバサダー

相手の関心・判断の軸を理解する

自分にない能力を持つアンバサダーに協力者になってもらうには、まず、相手に興味を持ってもらう必要があります。

協力を得るコツは、相手の判断や関心軸を大切にして相手と対峙することです。相手の判断・関心の軸は、相手の主語でわかります。

天才・秀才・凡人の関係:【書評/要約】天才を殺す凡人(北野唯我 著):3人のアンバサダー

凡人「人」、秀才は「知識・集団のルール」、天才は「世界・真理」に関心の軸があるということです。

凡人は、つまるところ「自分/あなた/私たち」の立場から『好きか嫌いか』が関心の軸です。これに対して、厳しいルールや、競争の中で生きてい秀才は、好き嫌いに加えて、社会的な生き物として『良いか悪いか』を判断します。秀才が『利益という絶対善』で意思決定するのもこのためです。対して、天才は、もっと大きな「万物の法則」「物理法則」で物事を考えるので、話のスケールは壮大になります。

アンバサダーに協力してもらうコツ

さて、相手の関心・判断の軸を理解したうえで、どう協力を得るか?

例えば、凡人が「最強の実行者」からの協力を得るには、「組織・ルール」軸で対話することです。秀才要素を持つ彼らには、「人軸」で語ると、ただ感想・意見を述べているように聞こえて、関心が高まらず対話になりません。見下されて終了です。

この点に注意して、『あなたならどうしますか?是非、ご意見を頂きたい』と尊敬を仰ぎつつ、協力を願いでるのです。同様の方法は、天才に対しても有効です。ただし、天才と対峙する場合は、これにプラスして、天才の好奇心を刺激するような「魅力的な問いを用意すること」もお忘れなく。

誰の中にも天才はいる。才能の活かし方

【書評/要約】天才を殺す凡人(北野唯我 著)

多くの凡人は、「なぜ、自分は天才・秀才に生まれなかったんだ」と自分を嘆きます。ある意味、才能は残酷です。しかし、嘆いてみても何も始まりません。時間の無駄です。大事なのは、自分に配られたカード(才能)が何かを知ること、その使い方を知ることです。

なぜ、自分の中に眠る才能は芽がでないのか

どんな人も、自分の中に「天才(の芽)」を持っています。しかし、同時に、その眠れる天才を殺す「凡人」も飼っています。

ここで言う「凡人」とは、「私にはできない」というストッパーです。多くの人が幼少期から、自分の中に「限界」を設けて天才を殺しています。

ストッパーをはずせ

誰もが、創造的な考えを思いつくことがあります。しかし、表現する前に社会的な基準やロジックで『良いか悪いか』を判断し、さらに、『恥ずかしい。バカにされるかも』といった感情で、折角のアイデアを握りつぶします。つまり、創造性⇒再現性⇒共感性という過程を経て、表現する前にアイデアが駆逐されてしまうのです。

幼少期から、これを繰り返した結果、才能はしぼんでしまっています。しかし、今からでも、「自分には才能がない」と嘆くのではなく、自分の中にも才能が眠っていると認識し、ストーパーを取り除こうと努めることが求められます。

参考になる図書

事故のストッパーの外し方を学ぶには、「鋼の自己肯定感」が非常に参考になります。

才能を活かす武器を使い分けろ

人はそれぞれ、割合こそ違えど、創造性、再現性、共感性を持っています。これらの才能を活かすには、相性のいい表現方法(=武器)を知っておくことが大事です。そして、場面に応じて、武器を使い分けると、才能を活かしやすくなります。

創造性と相性のいい武器:アート、起業、エンジニアリング、文学、音楽、エンターテイメント
再現性と相性のいい武器:サイエンス、組織、ルール、マネジメント、数字、編集、書面、法律
共感性と相性のいい武器:言葉、マーケティング、SNS、写真、対話、地域

ただし、これらの武器は、訓練なしに磨かれることはありません。どんなに身体能力があっても、訓練なしにプロのスポーツ選手になれないのと同じです。最初は、レベルが低くとも、訓練し、勇気を出して才能を活かすべく勝負し続けることです。すると、いつか、見たことない最高の自分に出会えます。

最後に

今回は、北野唯我さんの小説『天才を殺す凡人』からの学びを紹介しました。

冒頭でも述べましたが、サラサラ読めるのに、学びの多い本です。多くの人に高く評価されている理由は、本書を読めば絶対に理解できます。ここで紹介した学びは一部に過ぎません。是非、本書を手に取り、多くの学びを手に入れてください!

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